12 辺境伯の悪魔
「問おう、貴様がグリードで男爵を討った人間か?」
「あぁ、それにしてもアレで男爵か」
残念でならないな~
あんな雑魚が男爵なんて、悪魔も大したことない。
「ふん、あんな一代限りの屑だが、一応男爵だ」
「敵討にでも来たのか?」
「いや、一代限りとはいえ男爵を討った人間を見てみたかっただけだ」
「へぇ~ じゃあアンタは強いのか?」
「あの男爵に比べたら、強いな」
さて、悪魔で爵位ったら"ソロモン72柱"だと思うんだけど、男爵なんていなかったはずだが……多少違うのか? それとも根本的に違うのか、まぁ異世界だから多少の違いは仕方ないか。
「そうか、では名前を教えてくれないか?」
「ほぉ、私を前に畏れを知らん人間か、面白い。いいだろう教えてやる。我が名はユリシアという」
「ゆ、ユリシアですって!?」
「なんだアリア、知ってんのか?」
「知ってるもの何も、ルシエ様に反逆した天使の名前よ」
ルシエ? あぁ、この世界の主神ね。
あ、って事はあの神様の仇敵って事コイツ。
いや、あの神様とこの世界の神様は別だった、あの神様の方が上位だったなそういえば。
「って事は堕天使か」
「ふん、今は魔神であり悪魔なんだがな」
「で、爵位を持ってんだろ?」
「そうだ。私が戴いたのは"辺境伯"の位だ」
結構お偉いさんだな、男爵なんてホント雑魚だわ。
でもここで殺り合うのはちょっと厳しいかな、巻き込まない自信がないから。
「で、見た感想はどうだ?」
「中々見どころのある人間だと思った。人間にしては"神秘"すぎるがな」
なんだよ。
お見通しですよ~ って言ってんのか?
「で、今日はもうお帰りに?」
「さて、どうしようか。ここで一戦交えてみるのも一興だと思うが……今回は大人しく帰るよ」
そう言って背を向け一歩踏み出すと、黒い霧となりユリシアの姿は消えた。
「んじゃ、帰るか……あれ?」
全員絶賛気絶中。
「なんで?」
『そりゃー ユリシアの覇気に耐えられなかったんじゃない?』
そんなの出てた?
『アナタは異常だから感じなかったのよ、普通の人間なら会った瞬間気絶か死ぬんだけど』
じゃあコイツらは特別って分けだ。
『そうね。間違いなく名のある騎士になれるわ』
俺も名のある騎士になれる?
『そうね。名のある騎士どころか、悪名高き王にだってなれるわよ?』
遠慮しときます。
『そう? でもまぁ。ユリシアと会えた事は良い事ね』
あー ユリシアで思い出した。 知識に関するチートが発動しなかったんだけど。
『それね。あまりにも面白みに欠けるからはく奪したのよ、身体能力に関するのも少し制限を加えてみました~』
戻しては、くれないんですよね?
『もち。でもいいでしょ? "ソウゾウ"の能力があるんだから』
まぁ、妥協点ってやつですかね。
『そうね。じゃきゃ本末転倒だもん』
楽しめない。って事ですか。
『ピンポ~ン、この先も楽しませてね♪ じゃ』
「ほんと、身勝手な神様だ。っていか三人担いで帰らないといけないのか?」
―予告―
第13話 再会の騎士
再び会う騎士は初めて出会った人、交えるは剣、その先に待つのは―――