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8 異変


「俺の犬、かっこいいだろ?三年前魔力検査の結果が良かったから、紅龍さまにいただいたんだ。シバだ。」

「ガエタン様、紅犬をもらったんですか?すごいなぁ。」

「パトリスは来年か?俺が検査した時はみんなまだ小さかったからな。早いな。」

「ボクも黒狼もらいたいです。」

見知らぬ子どもたちが中庭に入って来た。リリアンもいた。


「ソフィー様は二年前でしたわね。」

「ええ。リリアン様、ご覧になって。私が碧龍さまからいただいたルリですわ。」

「あ!シバ、待て!」

紅い犬はニーナの方へ走り出した。


「ジャンー!久しぶりー!会えて嬉しいよー!」

「ちょっ、シバ来るな!隠伏してるんだから察しろよ!」

「えぇ〜、いいじゃん。ガエタンはいい奴だよ?会話はできないけど。」


「シバ!どうした?何かいるのか?なんでそんなに吠えるんだ!シバ!戻れ!」

「うわあぁぁぁ!!」

「どうした?パトリス?」

「あそこに何かいる!」

「何も見えないわよ?」

「怖い!あの犬が吠えてる方!何かいる!」

「どういうことだ?」


 リリアンが嘲るように笑って、炎玉を撃った。

「何をしているんだ!」

ガエタンは驚いた。立て続けに炎玉を撃つリリアン。炎玉はシバの背中を掠めた。炎に気づいたシバはガエタンの方を向いた。次々と放たれた炎玉はシバの前で消える。まるでシバの前に見えない壁があるかのようだった。


「ガエタンやめさせてよ!危ないでしょ!ニーナが怪我したら大変なんだよ!」

「シバ、やめろ!あいつらにはワンワン吠えてるようにしか聞こえてない!逃げろ!」

「大丈夫!ボクに炎は効かない!炎を炎で制す!」

シバは次々と炎を消しながら言った。焦ったジャンはニーナとアンナを背中に隠す。ジャンの体は二人を隠せるほどの大きさに変化していた。


「あそこ絶対何かいるわ!シバだってあんなに吠えて。ガエタン様は引っ込んでいて。パトリスみたいに震えて隠れていたらいいじゃない。私一人で充分ですわ!」

「なんだと!俺の方が強い!シバ!そこをどけ!」

熱り立ったガエタンは炎玉を手元で大きくして、今できる精一杯の炎玉を撃った。リリアンのものより大きく温度が高い。さすがガネリア公爵家の嫡子、と言われるほど魔力量は多く、魔法の威力も強かった。


「シバ、ダメ!逃げて!」

炎の大きさを見てニーナは叫んだ。無意識にニーナは魔力を放出した。何の魔法にも変換されていない純粋な魔力。ニーナを護ろうとした龍玉の力も混ざっていた。


「ドーン!!!」

爆炎があがった。大きな炎と目に見えない魔力の衝突。衝撃波で木が揺れた。シバは爆発の中心になった。倒れたシバは血塗れだった。

「クソッ。」

ジャンはシバを浮かせ、ニーナとアンナに駆け寄ると魔方陣を発動して転移した。


「うわっ。」

衝撃波でガエタンは後ろに飛んだ。リリアンとパトリスは高魔力を浴びて気絶。ルリは咄嗟に獣人型に姿を戻し、ソフィーを護った。

「ルリ!?」

ルリは鳥の姿に戻っていた。地面に落ちたルリは意識を失っているようだった。


 騒ぎを聞きつけ、聖堂の侍従と四家の公爵夫妻が集まった。すぐさまガエタン、リリアン、パトリスは診察室へ運ばれていった。ルリが心配で堪らないソフィーは、引き止められ、何があったのか説明を求められた。


「突然ガエタンの犬が走り出したの。木に向かって吠え初めて、パトリスがそこに何かいる!って。キオニアは魔力に敏感だと聞いていたから、見えない何かがいるんだと思ったの。気づいた時にはもうリリアンが炎玉を撃ち始めていたわ。リリアンに煽られたガエタンが大きな炎玉を放って木の近くで爆発したの。大きくなったルリが私の前に立ちはだかって。」

「この鳥が?」

「それしか考えられないわ。ねえ!ルリを助けて!私を守ってくれたの!」

ソフィーの必死な様子にルリも診察室に運ばれた。


 ジャンが転移先に選んだのはゾーイの家のキッチンだった。気絶したニーナはアンナに抱き抱えられていた。

「シバ!しっかりしろ!」

シバは切り傷と火傷が全身にあった。血が止まらない。

「ジャン・・・」

「もう何も言うな。アンナ、ここでニーナと待っていてくれ。絶対に部屋から出るな!」


 ジャンがシバを抱えてキッチンから出ると、買い物袋を持ったドニがいた。

「ドニ!良いところに!」

「あら、ジャン様?珍しいで」

「ドニ!シバを白の泉へ!怪我がひどいんだ。」

「シバ様!分かりました。最速で参ります。」

買い物袋を床に置いたドニは、シバを抱えてあっという間に走り去った。

「シバ・・・」


 シバを見送ったジャンはふうっと息を吐いて買い物袋を持ってアンナのところへ戻った。

「アンナ、大丈夫だ。ドニがいてくれて助かったよ。ニーナも大丈夫だ。安心しろ。初めての外出だった上に、大きな魔力を一気に放出したんだ。疲れが出たんだろう。」


 ジャンは保管庫に買ってきたものを無造作に入れた。眠っているニーナの側に来て頭を撫でた。

「部屋に戻って隠伏しよう。またリリアンが来るかもしれない。今日は擬装もしておいた方がいいかな。ひと暴れするかもな。」


 ジャンたちはニーナの部屋に戻った。ベッドにニーナを寝かせて隠伏魔法と偽装魔法をかけて見えないようにした。ジャンとアンナは部屋の片付けをしていた。


「ジャン様、ルリ様は大丈夫でしょうか?衝撃波を浴びてしまわれましたよね。転移する前、人型のルリ様が見えたような。眷族の方々は人の治療法で治るんでしょうか?」

ジャンは顔色を変えた。そしてそのままルリのところへ転移した。




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