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4 五匹の龍


 セルジュが会いたいと願う白虹は、亜空間にある五つの泉の一つで眠っていた。


 亜空間は結界魔法や空間魔法が得意な白虹のシロが作った。草原が広がり、心地良い風に木々が揺れ、花が咲き誇っている。泉から少し離れたところには可愛らしい家があった。隣には野菜畑と果樹園。新鮮な野菜と果物がたわわに実っていた。シロの亜空間に入る事ができる者は限られていた。


 ユーエラニア王国の公爵家は四家。碧龍(へきりゅう)はラズニア公爵家、虹龍(こうりゅう)はパルニア公爵家、紅龍(べにりゅう)はガネリア公爵家、黒龍(こくりゅう)はキオニア公爵家。それぞれが龍の加護という名の監視を始めて数十年が経つ。


 魔力量が多い子どもが生まれると、四龍はそれぞれ眷族を送って監視を強めた。特に炎の魔法使いと魔力量が多い子どもは暴走する可能性があり、子を授かった者がいれば警戒を強めた。


 この日は久しぶりに四匹の龍が亜空間に居た。

「お!(へき)も休養か?ラズニアはどうだ?」

紅龍は五つの泉の一つ、(しろ)の泉で泳いでいたが、碧龍を見つけて寄ってきた。

「あら、(べに)お久しぶり。泉で癒されに来たわ。ラズニアは女の子が生まれたけどまだ分からないの。ルリに決めさせようと思って。」

「ルリ?碧鳥(へきちょう)の監視が必要なほどなのか?」

「魔力量が規定値を超えそうなの。念のため、魔力量検査の結果次第で決めるわ。」


「あ、碧と紅じゃん!紅、どう?俺が作った泉、気持ちいいだろ?」

虹龍のコウと黒龍のクロも来た。白虹のシロは隣にある一番大きな泉の底で眠っている。

「最高だよ。癒される。」

「そうだろ。そうだろ。あ、そうだ!聞いて聞いて!」


「なんだ?」

「今パルニアには女の子と男の子がいるんだけど、そろそろもう一人生まれるんだよ。でね!その子、シロの愛し子かも!シロの龍玉が体に入っちゃった人の子どもなの。」

三匹の龍はコウを見た。


「愛し子ってマリーの事か?」

「マリーは今王宮にいるみたいなんだよね。」

「マリーって誰?」

「ちょっと待ってちょうだい。龍玉って何かしら?それも体に入ったってどういう事かしら?」


「まあまあ、順に答えるよ。ジャンが俺の眷族になったのは知ってる?」

「知らないわ。いつ?」

「ついこの前。シロがまた龍玉を作ったんだよ。で、俺の魔力を浸透させた材料を持って飾り箱を頼みに行ったら、帰りに会ったんだよ!可愛らしい猫に。弱ってたから亜空間に連れて来たんだ。ジャンがもうダメかもってなって慌てて血をあげた。珍しくシロが起きてて、ジャンにシロの魔力も注いでくれたんだよ。あ、ジャンっていうのは俺の猫ね。もう眷族にしたから虹猫(にじねこ)だね。それでジャンがシロの龍玉を見つけて、猫型に変わってちょいちょいと戯れて、可愛かった。龍玉が急に転移したから驚いたよ。ジャンの転移魔法だったんだよ。凄くない?俺の眷族。」


「話を整理しましょう。まず、龍玉がなにか知りたいわ。」

「紅と碧は見たことないと思うけど、龍玉は作り手から魔力を借りられる装置みたいなものだよ。」

「その龍玉が今王宮にあるってこと?」

「マリーの龍玉だから、マリーが王宮にいるんだと思うよ?」


「そんなはずないわ。人の寿命って長くないのよ。龍玉の力で生きているとするとなら純粋に会ってみたいわ。」

「龍玉を持ってると、全部は無理だけどシロの魔力が使えるから、人にしてみたら結構色々できるんじゃないかな。転移はできないけど、美しいまま長生きはできる、くらいな出力かな。」


 クロは思案気に提案した。

「王宮は面倒だからな。碧、ルリを飛ばして情報を集められるか?」

「そうね。目立たない色になれば大丈夫かしら。ルリ、よろしくね。無事に帰ることを優先してね。」

「分かりました。」


「なあなあ、龍玉ってオレたちも作れるのか?」

紅は期待に満ちている。

「鱗をこねると玉になるんだよ。紅も鱗があれば作れると思うよ。俺は作った事ないけど。」

「とりあえずやってみるか。」


「そうそう、前作った龍玉はシロがマリーに贈るって言うから、街で飾り箱を作ってもらったんだ。細かい細工は人の方が上手いから。」


「その方が愛し子なんですか?」

「愛し子って言い出したのは街の人ね。シロは言ってないよ。大事な龍玉を与えるくらい愛おしい子って意味なんじゃないかな。でさ、その愛し子の絵本が二種類あってさ、ゾーイが・・・」

急に言い淀んで少し俯いたコウは急に、

「出かけるんだった。忘れてた。」

と飛んで行ってしまった。


 クロは苦々しい表情で言った。

「いずれまた話すが、ゾーイはコウの元お世話猫だ。魔暴走があった時に、ルドルフを護って消えた。ちなみにあの家はゾーイが建てた。あの家の中に絵本があるのかもしれないな。」


「今は触れない方がいいのね。わかったわ。私と紅が生まれる前の話よね?時が来るまで待つわ。まずは龍玉が体に入った人のことよ。ジャンがその人を見つけた、と言ってたわね。」

「コウ、説明しないで行っちゃったな。」


「えぇっと、眷族に成り立てのジャンがシロの龍玉で遊んでたら転移魔法が発動して消えたって事かしら?」

「そうだな。一番の問題は体の中に龍玉が入った事だな。」

「そんな事あるんだな。」

「よくある事なの?。」

「恐らくだが、腹の中の子の魔力がシロ好みである可能性が高い。龍玉が飛んだ先で魔力を感じて、気に入って懐いたのかもな。」

「懐く?」

「龍玉は意志を持つ。共にあるものを選ぶんだよ。拘束されていたら無理矢理、自由に飛んでいたら自ら。」

「白虹の愛し子、じゃなくて、白虹の龍玉の愛し子?」

「龍玉はシロの一部だから、白虹の愛し子で合っている。」


「愛し子って私たちにも居るのかしら。」

「稀に龍にとって好ましい魔力を持つ人は居る。実はわしにも居た事がある。だが龍が人と添うのは難しい事だ。シロが二つ目の龍玉を作ったという事は何かの知らせなのかもしれない。我々も全てが分かっているわけではないしな。」


「これからどうなるのかしら。」

「碧は心配性だな。成るようにしかならないよ。」

「紅は楽天的ねぇ。」




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