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14 シロ



「ニーナ様、ワタシ亜空間のゾーイ様の家に行きます。今日はジャン様もいらっしゃらないので家で過ごしていただきたいのですが。」

「亜空間ってゾーイの家があるところよね。私も行ってみたい。ダメかな?」

「ワタシと一緒で、ゾーイ様の家の中だけなら大丈夫だと思いますけど、龍の皆さんにお会いしたらとにかくご挨拶しましょう。」

「お願いします!」


 ドニはジャンに作ってもらった転移陣がある部屋に行った。掃除道具を持っている。

「では行きますよ。ワタシにつかまっていてくださいね。」

ニーナがくっつくと、ドニは片手でニーナを支えて転移した。


「家の中?」

「ゾーイ様の家の転移用のお部屋ですよ。窓を開けるのを手伝ってもらえますか?」

「もちろん!全部開けていいの?」

「何か飛びそうなものがあったら何か乗せて押さえてくださいね。ネオコルムの家と違って、開けてダメな部屋はありませんよ。」

「はーい。」


 部屋の窓が開いて心地よい風が入ってくる。

「ドニ、いるの?」

玄関が開いて誰かの声がした。

「シロさま、お久しぶりです。ドニです。」

ドニは慌てて玄関に来た。

「ご挨拶もなくすみません。」

「問題ないよ。許可してるから入れるんだし。」


「ドニ、お客さま?」

ニーナが二階から階段を降りて来た。

「マリー!」

シロは驚いた。

「ん?違う。びっくりした。」

「シロさま、初めまして。ニーナです。ドニにお願いして一緒に来ました。ご挨拶が遅れてすみません。」

「なぜ僕がシロだと知っているの?」

「ネオコルムの」

ドニはニーナの口を手で塞いだ。


「シロさま、ニーナ様とマリー様似ていらっしゃるのですか?」

「いや、最初マリーかと思ったけど、全然似てなかった。驚かせてごめん。」

無理に笑おうとしたシロの目から涙がこぼれた。


 ニーナは咄嗟にハンカチでシロの涙を拭いた。

「ドニの胸で泣くと癒されますよ。私も何度も慰めてもらいました。」

シロはニーナにドニの胸に押しつけられた。

「私掃除して来ますから、ごゆっくり。」

ニーナは二階へ駆け上がった。


「ドニ、もふもふだね。」

「ありがとうございます。ニーナ様お可愛らしい方でございましょう?」

「そうだね。僕の龍玉が心臓の辺りにあるね。よほど気に入っているのかな。僕がいるのに出てこなかったね。」

「ニーナ様の魔力がですか?ニーナ様がですか?」


「おかげで涙が引っ込んだよ。気のせいかニーナが近くにいると身体が楽だな。あ、あのジャンが泉に入れた魔力玉の力か。」

「魔力相性が良いんでしょうね。」

「そうなのかな、僕はもう一度眠るよ。ドニ、また今度ね。ニーナには自由に亜空間に出入りしていいって伝えて。あと、ここにドニの家を建ててもいいよ。」

「分かりました。ありがとうございます。光栄です。」

「ゾーイは勝手に建ててたけどね。」

「さすがはゾーイ様です。」

くすくすとドニは笑った。シロは片手を上げて家から出て行った。ニーナは階段の上で話を聞いていた。胸の真ん中に力が満ちたような気がした。


 ネオコルムの家でニーナたちがお茶をしていると、扉が開いた。

「遊びに来たよ!」

シロがいた。

「街で僕が出てくる劇があるんだってね。」

ドニとニーナは笑顔で誤魔化そうとした。アンナは横で緊張していた。


「シロさま、申し訳ありません。今日はニーナ様と甘味屋へ行くことになっていまして。」

「甘味屋って?」

「シロさま、新作なのです!美味しいのです!」

ニーナはドニを援護しようとした。

「まずは食べに行こうか。」

「いってらっしゃいませ!」

アンナは白虹さまに出会えた喜びを隠しながら送り出して、ホッとひと息をついた。


 ほとんど眠って過ごしていたのが嘘のように、シロは毎日遊びに来た。今日は本屋、明日は食事処、市場の日もあれば、お花見にも行った。その間ドニはシロがいればニーナは安全、と亜空間にせっせと家を建てに通っていた。時々ジャンが護衛についたり、コウが遊びに来たりもした。コウはドニが居ない日を選んでいるようで、気にはなったが理由は聞けなかった。アンナは自分の料理を白虹さまと虹龍さまが気に入ってくれて感動していた。


「シロ、マリーさんてどんな人だったの?」

何度も遊びにいくうちに、呼び名が変わり、言葉遣いが変わった。随分仲良くなっていたが、初めてマリーの事を聞いた。


「マリーは僕の初めての友だちだよ。色んな遊びを教えてくれた。あと、僕に名をくれた。白虹。呼び名はシロだけど。長くなるけど聞く?」

「うん。聞きたい。」

「じゃあドニの家に行こう!そこで話すよ。」

「行きたい!どこまでできているかな?」

二人は亜空間へ転移した。


「ドニ!来たよ。」

「これはちょうどいい時にいらっしゃいました。」

「そんな気がしたんだ。」

「今できあがったところです。」

ドニは誇らしげだった。

「初めてのお客さま、どうぞ中に。」


「素敵!」

ニーナはもうそれ以外の言葉を言わなくなった。ニーナの部屋、キッチン、トイレ、お風呂。かわいいのに使いやすそうだった。

「ネオコルムの家と空間魔法で繋げようよ。」

シロの許可が出たのでニーナが挑戦した。うまく繋がったようだ。


 できたての談話室に座って、お茶を用意して、シロは話し始めた。

 


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