おっぱいホームズの事件簿03~チチよさらば~
えーと?ツンデレ回なのか?
「無秩愛大のヤツは、もうすぐ退院だって。よかったな、ワトソン」
「内臓破裂&殺人未遂にならなくて助かったわホームズ」
通称おっぱいホームズと呼ばれている犬養 柴五郎が、グッドニュースを私に届けてくれた。
有名探偵小説ではないが、この男にワトソンと呼ばれてしまっている私が、内臓破裂&殺人未遂の犯人になってしまうのはゾっとする話だ。
「愛大尊師は、大切なヒンヌー教のナンバー2だからな」
「はいはい、そうですか、アホ教皇」
この学校のおっぱい星人達は、ヒンヌー教皇勢力とボイン帝王勢力で2分されており、やたらめったら、おっぱいワショイをするため、女子には迷惑な存在だったりする。
ちなみに、この、おっぱいホームズは、ヒンヌー教のナンバー1であり、ヒンヌー教皇などと呼ばれ、私は御本尊などと言われて拝まれたりしている始末。
そんなに、このペッタンコの胸がよろしいんですかね?学校ナンバーワンですか?そうですか……
と、そんなことを考えていると。
ガラガラガラ…… 扉が開いた。
「貴方達、コレ見た?」
「篠田葵さん」
「……おっぱい女帝」
「誰が、おっぱい女帝よ。いっぺん死ぬ?」
現れたのは、ボイン帝王の彼女で、学園一のボインと言われる篠田さんだった。ちなみに、科学部部長の凛古風がボイン帝王だったりするワケで、他の女子にちょっかいを出して篠田さんに爆殺された後、お父さんが経営する篠田技研の特注クローンで生き返ったりしたため『不死身のボイン帝』などと言われている。
「とーにーかーく。コレっ!」
篠田さんが動くたびに、ふたつのたわわが揺れる揺れる。何か手に持っていることに気づいた。コッチが主題なのだろう。存在感がありすぎる、胸も大変ね。私の胸は存在感皆無だけどね。
「薄い本?がどうしたの」
「開いてみなさいよ」
ペラリ と 私とホームズは薄い本のページをめくった。
「なっ、なに、コレ……変態っ!」
とりあえず、私はホームズを、ぶん殴る。
「いてぇ、事実無根だ」
「本当でしょうね……穴塞ぐわよ」
女帝篠田が、瞬間接着剤をホームズのお尻に注入する仕草を見せた。
「人口肛門なら、凛古風も使えないわね」
ヤバイよ。この人、爆殺とか平気でするから。
「ひぃぃぃ」
怯えるホームズ。
「私のホームズは、違うわよ」
ピタリと篠田さんの動きが止まった。
「そう、『私のホームズ』ね。なら違うわね」
……しまった。失言だ。
「え?『私のホームズ』?」
「うるさい、うるさい、うるさい」
とりあえず、ドコボコバキっゲシゲシっとホームズを蹴る殴る。
「いてぇ、いてぇ、いてぇ。何かに目覚めたらどうする」
は、話をかえないと。
「それにしても、酷い内容の本ね。ところで凛古風部長は?」
「何かムカついかたら問答無用でスタンガン喰らわせて、凛古風は気絶してるわ」
「……ひでぇ。でっち上げの薄い本のせいで。俺もリンコフもボコられ損じゃねーか」
本のタイトルは『チチよさらば』。ホームズと一緒に一通り目を通してみると、理系鬼畜メガネの凛古風が、全受け総受けのホームズに、あんなことや、こんなことをする、R指定すらもヌルイようなBL本だった。
ホームズはショックが大きかったのか、うなだれている。
どよ~んとした空気が、3人に漂いはじめた時……
「え?それって『りん×ほむ』の新刊?」
机の上の本に気づいた女子に聞かれる。
「……他にもあるの?『りん×ほむ』?『チチよさらば』ってタイトルだけど」
さっぱりワカラナイ。
「え?知らないの?本人関係なのに?巨乳派首魁リンコフ(攻め)、貧乳派首魁ホームズ(受け)で、おっぱい無しで愛し合うロマンスBLだよ」
通りすがりの腐女子は、その新刊とやらを手にとりペラペラと目を通す。
「す……凄い。濃厚。ふひ、ふひひひひひ」
かえってこーい。っていうか、総受けのホームズさん、ここにいるからね。遠慮しようね。私もいるんだし。とか、思っていると。
「さて、お楽しみのところ悪いのだけれど。製造元はどこかしら」
「え……エンプレス篠田」
ふひふひしていた腐女子の顔色が変わる。私とホームズと違って、篠田さんはリンコフとくっついているのは有名だ。
「えーと、あの、その、良く知らないんだけど、BL同好会とかホモゲ部の人達なら、何か知ってるかも」
「そう……BL同好会とホモゲ部ね。わかったわ」
凍てつく視線、氷のような微笑。こわい、エンプレスこわい。
「だめよ、篠田さん、皆殺しにしちゃ」
「しないわよ別に。同性愛者と思わせておけば、他の女が寄り付かなくて、都合が良いでしょう。御礼でもしてこようかと思っていたのよ。いい気はしないけどフィクションならね」
「……あーなるほど、ノンフィクションなら。瞬間接着剤をホームのお尻に突っ込んでいたのね」
「そうよ。使えないようにね」
……本気だったようだ。この人、躊躇いが一切ない。
「いや、俺、ノンケだし。ちょ……おっぱい」
「ほらほらリンコフ部長、先っちょだけでもホームズに突っ込んでくださいよ。え?男相手だと、大きくならない?大丈夫、私達がカッチカチにしてあげるから」
BL同好会とホモゲ部の巨乳女子達が、おっぱいで凛古風部長を無力化して連れ歩いてきた。
「ちょっと、貴方達、私のリンコフに何をしているの」
「「やっば、篠田だ。逃げるわっ。プランBに移行よ」」
電撃でまだ足がしびれている凛古風は、ドサリと倒れた。
「ひでぇ、捨てていくなんて」
凛古風は、くたばっている。
「まったく、油断も隙もない。運ぶわよ」
篠田さんは、私とホームズに指示を出して、凛古風を教室にまで運んだ。
「しびれて動けないからって、他の巨乳女子に連れ去られてるんじゃないわよ。もう」
「……ごめん」
動けないから連れ去られそうになったんだろうけどなぁ。その原因は篠田さんのスタンガンだったりするんだけどなぁ。凛古風部長は、篠田さんに謝りながら、大きな二つのたわわに挟まれて、いい子、いい子されていた。普段の印象から受ける理系鬼畜メガネとは、随分違うキャラだった。巨乳パワー恐るべし。
引き続き、篠田さんと凜古風部長は、イチャコラいちゃこら……
「あーはいはい、御馳走さまです。もう自分の教室に帰ったら」
「人目なんて気にせず、貴方達も、こうすればいいのに……」
「「ね~♪」」
なにが『ね~♪』だ、バカップルめ。
私とホームズは、そんな関係じゃ……ホームズ?
「あれ?ホームズ君、どこに行ったんだろ?」
視界を覆っていた乳房から離れて、凛古風部長がメガネをかけた。
「さっき、一緒に運んでくれたよね?」
篠田さんもキョロキョロ。
「おかしいわね?」
バカップルに気を取られていた私も周囲を見渡す。
なんだろう?このメモ?
「おっぱいホームズは、私達がいただいた」
ワトソンからホームズを盗むなんて。
味なマネをしてくれる。
「私のホームズを攫うなんて、いい度胸してるじゃない」
さすがの私も怒り心頭だ。
「「んふふ♪『私のホームズ』♪」」
篠田&凛古風のバカップルが反応する。
「うるさい、うるさい、うるさい」
「本人もいないし、素直になったらいいさ」
「そうよそうよ」
イチャコラしながら、私の反応を楽しむ二人。
「もう、わかったわよ。それじゃ、BL同好会とホモゲ部にカチコミかけるから。手伝ってくれる?」
「……カチコミなんてかける前に。凛凛トーカー、使ってる?」
「ええ、もちろん」
凛凛トーカーとは、学校のwifiで生徒同士が会話できるように科学部部長の凛古風が開発した独自アプリだ。使い勝手が良いため、ほとんどの生徒がインストールしている。
「君のアプリから、フレンドの位置特定をすればいいんだよ。そうすれば、BL同好会かホモゲ部か、場所が特定できるだろ」
凛古風部長のアドバイスはもっともだった。さすが開発者。
「そうね、じゃぁ、私のスマホで……」
私はスマホを取り出し、凛凛トーカーを起動させる。
「ちょっと待って、通知関係が動かないように、裏コマンドを使うわ」
篠田さんが、私のスマホを取り上げた。
物凄い勢いで操作している。
「あの?裏コマンドって?」
「……アプリを開発した俺も知らないぞ?」
私と部長の話を無視して、篠田さんは操作を終えた。
「ほらっ、ホームズ君のスマホのマイクが拾った音声を聞くことができるわ」
「そんな機能、いつ実装したんだ?」
「あ~、こないだのバージョンUPの時ね。貴方用にしか考えてなかったけど、役に立ったわ」
凛古風部長にはプライバシーが無いみたいだった。まぁいいけど。
そうして、スマホからの音声に衝撃を受けた。
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「ほら、ホームズ君。ぺったんこの胸が好きなんでしょう?」
「フトモモも触っていいわよ」
「う……うぅ……」
ホームズの呻く声が聞こえる。
「ただし、手を出したら、そのお尻、解放してもらうわ」
「こんな風にホラ」
「アァーーーーッ」
何か紙のめくれる音がする。おそらく例の薄い本だろう。
そうして、R18な音が聞こえてきた。
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「た、助けにいかなきゃ。ホームズの貞操が」
あせる私。
「「……そうだね」」
このバカップルは、やる気が無さそうだ。
ええい、自分本位な連中め。
「リンコフさん?突入したら、BL愛好会とホモゲ部の女子達のあられもない姿が見れますよ」
私は耳元で囁いてやった。
「よし、ホームズを助けよう」
「……何か企んでるわね。監視しないと」
私は、凛古風&篠田さんの協力を得た。
「とりあえず、場所ね」
篠田さんが私のスマホを操作する。
「居場所は、ホモゲ部の部室ね」
速攻で確認する。さすが。
「よし、突入するわよ。手伝ってくれる」
「「わかった」」
私は、ホームズを助けに、凛古風&篠田を引き連れて、ホモゲ部の部室に突入した。
ガラガラガラ!
ノックもせずに、部室に立ち入る。
「……なっ、ホームズ」
ホームズのあられもない姿に私は絶句する。
「「「「「捕まえた」」」」」
「「きゃ」」
私と篠田さんは、それぞれ5人くらの女子に取り押さえられて、何かを嗅がされる。
「ちょ……なにを、ホーム…ズ……」
私は意識が遠くなった。
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意識を取り戻すと、窓の外は、日が沈みきっていた。
隣では、篠田さんが寝ていた。
まだ、頭が少しクラクラする。
「篠田さん、篠田さん」
「う、う~ん」
「大丈夫?」
「……私、何かを嗅がされて……」
「私もよ」
そうして私達は、起き上がって電気のスイッチを入れた。
ホモゲ部の部室中央には、学習机が隙間なく並べられ、その上にマットが載せられている。
その、マットの上には、ホームズと凛古風が寝かされていた。
ご丁寧に、右手と左手を恋人繋ぎで、指を絡めあっている。
「ふたりを起こさなきゃ」
「う、うん。何があったんだろうね」
「ね、予想はつくけど」
繋いでいる手を離してあげて、私はホームズを、篠田さんは凛古風部長を揺さぶる。
「うーん」
と、声を上げて、ホームズは目を覚ました。
向こう側では、凛古風部長も目をさましたようだ。
「……はははは。うん、ナニモナカッタヨ。ね?凛古風部長」
「そうだな、ナニモナカッタナ?おっぱいホームズ」
しらじらしいやり取りを、二人はしている。
「そう、二人とも、何もなかったのね」
篠田さんの声が優しい。コレは便乗すべきだ。
「なら、帰ろっか」
全ては、何もなかったのだ。そういうことにしておこう。
篠田さんと凛古風部長、ホームズと私は、それぞれ、帰路についた。
その数日後、厳格な管理の元、『チチよさらば( りん×ほむ )実写版』が、一部の女子の間で共有されたということを、私達は知る由もなかった。
(つづく?)
アァーーーーーーッ
何を推理するのか?
それは、「りん×ほむ 実写版」
イヤァアアーーーッ
っていうか、男同士で仲良かったら、腐女子の妄想の餌食になることってありましたよねぇ。同窓会で怖くて聞けないwww。あの頃、テキトーに盛り上がっていたみたいだけれども、あれは、攻めだったのか、受けだったのか。
「げんしけん」を読んで、マダラメさんの偉大さにため息が出ました。
っていうか、AIの作画のバラつきにため息。
同じキャラクターは二度と描けないんですよね~www