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モヤモヤ

 六月の半ば。文化祭を二週間前に控えた俺達はここでもまた問題を抱えていた。


「いやぁ、困ったねぇ……」


「そうだな。全く足りないな」


「本当にどうしようか……」


 足りない。それも圧倒的に足りないのだ。学校側から与えられた予算内でのコスプレ喫茶で出すメニューの費用とコスプレの衣装のレンタル費は何とかなりそうなのだが、それを実現するための時間が圧倒的に足りなかった。


 余談だがコスプレの衣装のレンタル費は想定していたよりかなり安かった。想定した予算よりもかなり安かったため、メニューを一つ増やせたのはクラスにとっては朗報だった。


「あと二週間で教室の飾り付けの装飾品に出すメニューを実際に作ってみたり、価格設定だったり考える事と、しないといけない事が多すぎるよ!」


「価格設定は大丈夫だろ。多少高くてもどうにでもなる」


「どうして?」


「詩音がいるからだ。詩音がメイド服でも着れば客は勝手に集まってくるだろ」


 詩音は学校内でも有名人だ。もちろん、学校一可愛いという評判によるものだ。その詩音がメイド服を着るとなれば多少……いや、かなり高くても客は勝手に集まってくるだろう。


 ちなみにだが、俺の通う高校では現金ではなく予め学校側が用意する金券を現金で買っておいて文化祭が終わったあと、余った金券を現金に変えてもらう方法が採用されている。金券の裏にボールペンで自分の名前を書いておくので取られる心配もないということだ。


「……龍斗くんはいいの?」


「なにがだ?」


「その……私が男の子達から色々な視線が集まることがだよ」


「別に構わないが」


「むぅ……龍斗くんの馬鹿!」


 どうしてだろうか? 詩音がかなり不機嫌そうになっている。詩音の立場からすると他の男子からは変な目で見られたくない気持ちは分かるが、そこに俺が関係してくる理由が分からない。詩音が変な目で見られると俺に不都合があるとすれば……何故だろうか? 理由は分からないが胸の当たりが少しモヤモヤする。


「私は龍斗くんが他の女の子に見られるのは嫌だな……」


「そうなのか?」


「そりゃ、嫌だよ。だから、私も龍斗くんは私のものだってずっと周りにアピールしてるんだから」


 なるほど。付き合うようになった翌日から詩音は学校内でも少し大きめな声で俺に声をかけてきたり、手を引っ張って食堂まで連れていかれたりと色々なことがあったがこれが理由だったのか。詩音には俺がどんな人間に見えているのだろうか? いささか心配が過ぎるように思う。


「そうだったのか。けど、それは無駄な心配じゃないか?」


「そんなことないから!」


「食い気味だな」


「今は大丈夫でも、龍斗くんは近いうちに人気者になるんだから!」


 いつも思うのだが、詩音のこの期待と信頼は何を根拠にしているのだろうか? 俺が人気者になる未来なんて全く想像できない。だが、最近一つ気になっていることもある。本当に俺はこのままでいいのかということだ。現時点での俺はハッキリ言って詩音に見合う彼氏ではない。それは今回の文化祭実行委員になってかなり実感していた。


「俺が人気者になるのは嫌なのか?」


「うーん……嬉しいような嫌なような……」


「分かった。現状維持だな」


「今はそれが一番かな。人気者になったら他の子に取られちゃいそうで怖いからね」


「俺が他の子と? ありえないな。俺は詩音がいい」


「!? ……ありがと」


「はーい。二人とも! イチャつくのは学校を出てからにしてね! ここ教室だから! 目に毒だけど、素晴らしいものを見せてくれてありがとうございます!」


 俺と詩音が話しているとクラスメイトの女子が会話に割り込んでくる。周りを見てみると全員が手を止めてこちらを見ていた。そのことに気づいた詩音が気まずそうに頬を染めている。だが、俺はそんなことよりも聞かなければならないことがある。


「……誰だ?」


「!? 寄川成美(よりかわなるみ)だよ! 同じクラスメイトだよね!?」


「そうか」


「反応が淡白!?」


「ごめんね成美ちゃん……龍斗くんだから仕方ないんだよ」

 

 俺だから仕方というも言いも仕方の無いことだ。自分でも驚くほど周りのことを知らないということは最近気づいたことだ。人の名前を覚えようと思っても、急に覚えるなんて当然できないわけで一言でも会話した人の名前を覚えていくことにしたのだ。


「それで? 何か用か?」


「あっ、うん! 一回試しでメニューを作るって話だったんだけど場所はあるのかが気になって」


「学校じゃダメなのか?」


「うん。ダメなんだって」


「それは確かに困ったな」


「ねぇ、龍斗くんの家じゃダメかな?」


 俺の家か。確かにそれなりの広さもあるしキッチンには調理に必要なものは全て揃っている。材料さえ買ってくれば問題はない。俺も別に家に誰か入れたくないとかは思っていないので、それが一番いいのかもしれない。


「分かった。俺の家でやるか」


「ありがとね龍斗くん!」


 こうして、今週の休みの日に詩音を含めて三人が俺の家へと来ることになったのだった。

昨日は更新できなくてすいませんでした! いや、ほんともう昨日は忙しすぎて……本当に申し訳ないです。


ストックとかないのかって? もちろんございません! そんなもの投稿して2日で消えました! なので、毎日書いて更新しているので忙しいと本当に更新ができないんです……今後はストックをしっかり作ってから作品を投稿し始めるようにしようと思います……。

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