表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/49

20.再会後

「フフ、あなた大胆な事をするのね」


 ソフィーはバーグマン伯爵家へ足を運んでいた。

 二人きりのお茶会という名の、セリーヌへの報告会だ。

 王太子殿下から婚約破棄を言い渡された後、護衛にと側近を紹介された時の衝撃は、今も鮮明に思い出す事が出来た。


 あの夜、王宮から用意された白い馬車で帰路についた。

 小窓から外を見ると馬車と並走する黒い馬に、カミーユは跨っていた。横顔が月明かりに照らされ、その凛々しい表情にソフィーが釘付けになっていると、視線に気付いたのかカミーユは、はにかんで見せた。

 恋焦がれたカミーユを目の前にして、ソフィーの胸は―――高鳴る事はなかった。

 記憶にあるシルバーブロンド、ハドリー王国では珍しいエメラルドグリーンの瞳、そして名はカミーユ。


(王太子殿下によく似た人・・・)


 カミーユとの婚約を願い出た時、ソフィーはその場で何らかの進展があると考えていたが、ウィリアムは一貫していた。


『後日、話の場を設ける』


 その言葉にソフィーは焦ったが、帰りの馬車に揺られながら安堵した自分に嫌気がさした。


 ニコル伯爵家へ到着すると、使用人が数名出迎えた。内一人が伯爵夫妻を呼びに慌てて邸の中へ入って行ったが、カミーユは待つ事なく、

「おやすみなさい。良い夢を」

と、笑顔でソフィーに伝えると帰って行った。その後ろ姿にウィリアムが重なり、後悔の念が押し寄せる―――。


「心ここにあらず、ね。―――ところで、先日あなたから届いた手紙は、何か訊きたい事があるような内容だったけど?」

 セリーヌの言葉にソフィーは膝の上に置いた手に力を込めた。

「赤い木の実のタルトの事なんだけど・・・」

「なぁに?赤い木の実って」

(―――え?)

 王太子殿下との顔合わせ前、セリーヌから聞いた話の中に赤い木の実の話題が無かった事がソフィーは少し気になっていた。2回目の食事会、自室でのお茶―――。

「私は顔合わせの日に婚約破棄を言い渡されたわ。オーツー公爵家のルーカス様への想いもその場でお伝えしたの。だから2回目の食事会も無いし、王太子殿下の自室にも招かれていないわ」

「では、どちらでドレスの中をお見せになったの?」

「応接間よ。会食後のお話は全てそちらで。―――ねぇソフィー嬢、王太子殿下はあなたを初恋の人だと思ったのではないかしら?」

「私を・・・?」

「結果は違ったけれど・・・。次はその赤い木の実で王太子殿下の初恋の人を探せそうね」

(王太子殿下の初恋の―――)

 ソフィーは胸の奥でジリジリする感覚をセリーヌに気付かれぬよう、話題を変えた。

「父から、来月オーツー公爵家との婚姻式が行われると聞いているわ。忙しい時期だと分かっていたけれど、直接お祝いを伝えたくて。セリーヌ嬢、おめでとうございます」

「ありがとう・・・ソフィー」

 セリーヌは目に涙を溜め満面の笑顔をソフィーに見せた。

「本当におめでとう、セリーヌ」

 ソフィーの瞳にも涙が溢れる。

「王太子殿下の計らいで王城で行うの。大司教様がお越しになるわ」

(王族でもないのに王城で、しかも大司教様?)

 ソフィーは驚いた。

「婚約破棄という汚名を雪ぐ、と殿下はおっしゃっていたけど・・・あの方にこそ幸せになっていただきたいわ」

 セリーヌの言葉に、ソフィーは胸の奥が再びジリジリとした。

「落ち着いたら公爵邸でパーティーを開く予定なの。ぜひ皆さんでいらして」

「ありがとう、楽しみだわ」



 太陽が天高く昇る季節、セリーヌはオーツー公爵家令息、ルーカスの元へと嫁いで行った。

 同じ頃、ニコル伯爵家に王家から登城に関しての報せが届いた。


“フット公爵家令息、カミーユ・フットとの婚約について”


(フット公爵家!!だから二人は似ているんだわ!)

 王妃陛下とフット公爵夫人が姉妹だという事は、貴族社会では周知の事実だった。しかしカミーユの話題は聞いたことがなかった。

(確かデビュタントを終えた双子のご令嬢が―――)

「ソフィー、気が進まないか?」

 ニコル伯爵の問い掛けにソフィーはハッとする。顔を上げると父、母、弟のエリックが目の前にいた。伯爵家のリビングで書状の確認をしていた事を思い出す。

「いいえ、そんな事は―――」

「あるわけないですよ、カミーユですから。まさか、あのフット公爵家とは・・・」

「ご令息がいたなんて初耳だけど・・・エリックはソフィーのお相手の方を知っているの?」

 夫人の問いにソフィーが慌てて割って入る。

「エリック!」

「はいはい」

 全てを話してしまえばフット公爵家の評判を落としかねない。ソフィーはエリックへ11年前の出来事を口外しないよう目で訴えた。

「ふむ。城で顔合わせを行うようだな。日程も直近だ。急いで登城の準備をしなければ」

 顎に手をやり唸るニコル伯爵が見ていた書状―――。

 要件のみの文面の最後には、ウィリアム王太子殿下のサインが印されていた。


誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ