荷物
AR15と300BLACK OUT、マグライトやホロスコープはTwitterのフォロワー様に協力していただいております。
今後ともよろしくお願いします。
南大阪線の上りの終着駅、阿部野橋。
あべのハルカスや近鉄百貨店など、人通りの絶えないこの駅は大阪の心臓部とも言われる。
JR、地下鉄、阪堺電車や空港へのシャトルバスなど、大阪各地への大動脈となるこの地はまた。
大小を問わず貿易会社などがひしめき合う集中地帯でもある、とくにパスポートセンターのある近くは、裏路地にまで小さな貿易会社が密集している。
その中でも最近出来た、従業員数名の貿易会社、泉商事。
中国などを太客に、漢方薬や朝鮮人参を仕入れる貿易会社は、裏では別の仕事も請け負っていた。
地下鉄の連絡通路沿いの階段を上がった側の雑居ビル、その一階にある泉商事のドアのインターフォンを、2回押してからまた一回押す。
そのまま待つとドアが細めに開いた。
背の低い若い男が俺を確認すると中に招き入れた。
「相変わらず用心深いな」
俺は背の低い男ヤンにそう声を掛けた。
ヤンは背中のベルトに挟んだグロックから手を離しながら。
「太客からの依頼中だからな」
そう言うとカウンターの上からA4サイズのマニラ封筒をつかみ上げると。
「この中に地図と貸し倉庫の鍵が入ってる」
俺に封筒を渡しながらスマホを取り出すと。
「マーには連絡しておくから向かってくれ、場所は…」
東大阪市の倉庫地帯、阪神高速に国道170号線など中小の貸し倉庫が並ぶこの場所は、奈良へ行く阪南道路など他府県を繋ぐパイプになっている。
その一つの平家の貸し倉庫に着くと、表のシャッター横のドアに鍵を差し込んだ。
安物のシリンダー錠をひねると中を覗き込む、その頭に消音器が突きつけられた。
「マーか?」
頭を動かさずにそう言うと、ドアの影から大きな姿が現れた。
身長は180センチを軽く超える大男、マーが俺を確認すると消音器付きのグロックをショルダーホルスターに仕舞いながら。
「荷物は届いてる、仮組みもしてある」
そう言うと、倉庫の中にあるプレハブの小屋の中に入った。
銃を向けた事の詫びなどは無いが、逆の立場なら俺もそうするし、用心し無い馬鹿と組む気も無い。
俺も続けて中に入ると、たぶん貸し倉庫の備品なのだろう、スチール製の安物の机の上にそれはあった。
AR15、米国では人気の高い突撃銃でチューンナップする部品も多い。
特に今回は太客から銃器から足が付かない様に、西側の物を使う事と念を押されている。
銃身は10インチのカービンタイプで、折り畳みストックとの組み合わせはコンパクトに纏まり、デイパックに入れても目立た無い。
ハンドガードにもハンドルとマグライトを付けて左手と親指でスイッチのオンオフが出来る位置に調整してある。
暗闇でフラッシュライト並みの光量を浴びせるだけで人は動けなくなる、頭の中がパニックに襲われる為だ。
光学機はホロスコープを付けてあり、覗き込まなくても着弾点に緑の点が浮かび上がる。
複数の敵に対しても、覗き込まずに射撃が出来る点は、近距離から中距離迄の乱戦に強く、今回の仕事には打ってつけだ。
防弾チョッキを着た複数の護衛を無力化するには、拳銃弾ではパワー不足になる。
その為、今回はAR15も弾と銃身を5・56ミリから300BLACK OUTに変えてあった。
火薬量こそ減るが弾の大きい300BLACK OUTの方がストッピングパワーが強く、防弾チョッキの上からでも肋骨が折れる。
俺は弾倉に弾を込めながらマーに。
「弾道調整は何処で?」
そう言うとマーが倉庫の一角を指し示し。
「空気コンプレッサーと釘打ちを用意した」
一定の間隔で音を出すから合わせてくれ、そう言うマーに頷きながら、俺はAR15のチャージングハンドルを引いた。




