故郷
数十年ぶりに帰郷すると、俺はあまりの変わりぶりに目を見張った。
子供の頃、無料で新聞屋がくれたプロ野球の野球場は私立の中学校に。
商店街はシャッターが閉まった店の方が多くなり、外国人が店主の料理屋が増え。
毎日の様に通っていた玩具屋、ニシダヤの入っていたジャスコは取り壊されて、イオンのモール擬きに変わり果ていた。
スターバックスが入ってればオシャレだろうと言いたげな、薄っぺらい店内の中にはニシダヤの影もなく。
大型電気店の一部に、申し訳程度に置かれたエアガンを見て涙が出そうになる。
俺は外に出ると、昔の風景を探して街を彷徨った。
近鉄南大阪線、道明寺駅を降りて石川を目指す。
大和川と合流するこの川の土手を上がれば玉手山と繋がる奈良の山々が見える。
弥生時代の竪穴式住居跡などがある玉手山は、昔は遊園地が存在した。
玉手山遊園地、今は玉手山公園として解放されているが、昔は小さいながらもミラーハウスやメリーゴーランドなどもあり、近くの幼稚園の遠足の定番スポットでもあった。
子供の頃の記憶を思い出しながら、俺は石川の土手に座り込むと紙巻きタバコに火をつける。
昔と変わらない風景に落ち着きながら、俺は叔父夫婦の事を考える。
依頼を受けて帰国した時の条件の一つとして、俺は両親の事故の件と保険金の金の動きを洗ってもらった。
結果としてわかった事は、叔父には賭け事でノミ屋に借金があり暴力団から追い込みが掛かっていた事。
両親が死んでから追い込みが無くなった事。
事故を起こした車は前日に叔父に貸していた事。
何のことは無い、両親は叔父に嵌められて殺された、そして俺に入る予定の保険金は全部暴力団に吸い上げられた。
その腹いせに俺を虐待した。
奴隷として使い潰そうとした。
金はまあ良い、しかし俺にした事に対しては対価を払わせてやった。
消音器付きのコルトガバメントM1911A1。
黒い艶消しのミリタリー仕様のミリガバは照準器を取り外し、全体的にヤスリを掛けて丸みを付けている。
親指で操作する安全装置だけは大型化して、左右どちらからでも操作出来る用に改良し、リコイルスプリングにはガイドを付けて作動不良の不具合をほぼ無くした。
アフリカの戦場で傭兵として過ごした間、コイツと突撃銃に何度も助けられた。
砂漠の砂や湿地帯の泥に強く、世界中に出回っている為、弾や部品の交換に困らない。
その時、支給された携帯電話にショートメールが入った。
『荷物が届いた』
短いその文面を確認すると、俺は道明寺駅に向かいながら、吸い殻を携帯灰皿に仕舞う。
今回の仕事の道具を受け取りに。




