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3話 流生の怒り

 「どうするの……この状況……」    

  

「そうだね……僕はリビングのソファで寝るから、幽香がここで寝なよ」


僕がそう言うと、幽香は困った顔をして、こう呟いた。


「それだとお兄ちゃん背中痛めちゃうよ……」


「大丈夫さ。僕体強いし」 


「……そうだ……。私の魔法を使えばベッド動かせるよ……。それなら別々の部屋で寝れるでしょ……?」


「ああ、いいねその案。早速頼むよ」


 僕がそう返すと、幽香はドアに近い方のベッドを分解し、近くの空き部屋に運んで行く。


 ……よく考えてみると、家があるのもおかしいんだよね。元々攫う気満々だったのが透けて見えてくるよ。まあ、ないと困るのこっちだからいいけど。


 そうしてしばらくすると、幽香が戻ってきた。


「移動させたよ……」


「お、ありがとう、幽香。それじゃ、おやすみ」


「待って……、お風呂入らないの……?」


 ……そうだ、風呂のことすっかり忘れてた。どうしよ。


「それじゃ……シャワーだけ浴びようかな。どっち先に入る?」


「お兄ちゃん先でいいよ……。私長引くし……」


「それじゃ、お言葉に甘えて」


そうして僕はシャワーを浴びて、その辺にあった服を着ると、ベッドに入った。


 さて、これからどうするかよく考えないとな。


 早く行動しないと、その分帰ってこれるのが遅くなる。かと言って、急いで失敗すれば、一生帰れなくなるかもしれない。


 幽香のことを考えると、遅くても一年間までにはどうにかしたい。


 だが、そう簡単に島なんて乗っ取れるわけがない。


 でも、やるしかない。幽香や両親のためにも。そのためにも僕が頑張らなければ。


 まずは、仲間の早急な確保。これが最優先だ。二人じゃ乗っ取りなんて千年かかっ

てもできない。


 そんなことを考えながら眠気が来るのを待っていると、突然風呂場から幽香の叫び声が聞こえた。


「幽香、大丈夫か!?」


「だ……大丈夫……。また発作(トラウマを思い出した)が起きちゃっただけ……。起こしちゃってごめん……」


 脱衣所のドア越しから、僕達はそう会話する。


「いや、まだ寝てなかったからいいよ。辛いなら後でなにか飲み物取ってこようか?」


「いや……いいよ……。それより一緒に寝て……。やっぱり一人で寝るの怖い……」

 

 幽香は声を震わせながらそう言う。よっぽど怖いのだろう。


 「……分かった。とりあえず風呂出たらまたベッド動かして」


「うん……」


 そうしてしばらく待つと、幽香が風呂から出てきた。


 恐らくさっきより重症だったのだろう。幽香の顔は青ざめ、目は赤くなっている。


 そして、再び幽香は僕のベッドを移動させると、今度は二人でベッドに潜る。


「お母さんとお父さん、今頃心配してるよね……」


 ベッドに入った直後、幽香が不安そうな声でそう聞いてくる。


「うん。今クロを家に戻して五感共有してみたけど、大騒ぎになってるよ。僕はともかく幽香がいないのはおかしいって」


「やっぱりそうだよね……。はあ……、なんで私達、こんなことに……なっちゃったんだろうね……」


 幽香は腕で目を隠しながら涙声でそう言う。

 

 僕はそんな幽香の声を聞いて、思わずもらい泣きをしてしまった。


「……ほんとにね。昨日までの日常が恋しいよ」


「…………!」


 僕がそう言った瞬間、幽香は部屋の壁を蹴り始めた。どうしようもない怒りを壁にぶつけているのだろう。


 そして幽香はしばらくすると、蹴り疲れたのか動かなくなった。


 ちなみに僕は、引き続き両親の様子をクロを通じて見ていた。

 

 父さんは警察に電話し、母さんは食卓で達の帰りを祈っていた。


 正直、僕はそんな両親を目にして、激怒していた。もちろん両親にではなく、僕達をここに連れてきた連中にだ。別れの言葉すらできないなんて、狂ってる。


 それに、さっきから気になっていたけど、幽香の口調が昔に戻ってる。あの、臆病で、内気だった頃の幽香に。


 今怯えていて、そういう口調になってるだけならいい。だが、違うなら容赦しない。幽香の成長を止めたのだから。



 うん、駄目だな。結局僕も人間だったな。怒りが溢れて止められそうにもない。


 いいや、もう。乗っ取るついでに復讐でもするか。


 後悔させてやる。両親を幽香を傷つけたことを。


 そして……この僕を怒らせたことを。

 

 僕はそんなことを考えながら、ゆっくりと目を閉じた。




 それから、僕は何度か幽香の叫び声で起こされながら、一夜を過ごした。


「もう朝か。今日はとりあえず島の探索でもしようかな。って幽香!?」


 僕はふと隣を見ると、いつの間にか幽香が僕のベッドで寝ている。しかもなぜか制服姿で。


「あ、お兄ちゃんおはよう……」


 幽香は眠そうに目を擦りながらこちらの方を向く。


「幽香、なんで僕のベッドに入ってるんだい?」


「あ……ごめん……、怖かったから……」


 幽香はそう言って体を震わせ、そっぽを向く。

 そして、僕が詳しい理由を聞くと、幽香はこう答えた。


「その……結局怖くて寝れなかったから……、自分が見慣れてる物をかき集めて寝ようとしたの……」


「だから制服なんか着て寝てたのか……」


「うん……。その方が落ち着けたから……」


 幽香はそう言うと、立ち上がって僕のベッドに落ちている物を片付ける。


 その中には、僕達の家にあったのと同じコップや、ハンガーなどがあった。


 同じ物ならなんでもいいのか?と僕は考えながら一緒に片付ける。


「……なんかハムスターみたいだな」


 僕はその光景を見ながらそう呟く。


 ハムスターは自分の匂いがするものが無くなると、パニックになるらしい。

 

 そんなハムスターと幽香の姿が重なり、僕は思わず笑ってしまった。


 「……なんで笑ってるの……?もしかして馬鹿にしてる……?」


「うん。してる」


「…………!」


 僕がそう挑発すると、幽香は頬を膨らませながらこちらをポカポカと殴ってくる。


 僕はそれを無視して話を続ける。


「今回は大目に見るけど、勝手に僕のベッドで寝ないでね。心臓に悪いから」


「うん……ごめんなさい……」


  幽香はしおらしくそう謝ると、着替えたいからと言って僕を追い出す。


 追い出された僕は、暇なので動物達の報告を聞くことにした。


 その報告によると、この島には、謎の障壁(バリア)で覆われていて、勝手に島の外に出れないようになっているらしい。


  他にも色々報告はあったが、近くのカラスが美人だったとか、この島にもゴキブリはいたとか、凄くどうでもいい情報だった。


 ……いや、ゴキブリがいたのはいい情報かもな。


 そうして報告を聞いているうちに、幽香はこの家にあったジャージを着て出てきた。


「どうだったの、情報……?」


「ろくなのがなかったよ。もっとたくさん色んな場所に動物ばらまかないとだめだね」


 僕はそう言いながら風呂場に行き、適当に着替えると、幽香のところに戻る。


「さて、朝ごはん食べて調査に行くとしようか」


「うん……」


 そうして僕達は、朝食を食べると外に出た。 


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