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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
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永遠と滅亡 Vol.3 貴人


平安時代、帝が住む都に貴族がいた



その男の前に、長い時を生きるモノが現れ語りかけた



「天上人と呼ばれる人生は楽しいものなのかの?」


『誰じゃ? そなたは?』


「そなたの祖先とも遭った事がある

 (あやかし)とでも言うておきましょうかの」


『さようであるか祖先は、どのような事を仰せであった?』



「己と同じように都で生き

 帝や取り巻きとして生きる人々を嫌っておったの・・・


 まるで人外の物の怪を忌み恐れるかのように


 そして恐れると同時に一緒になって

 ”下々の者”と呼んでおる者どもを

 己の想いのままに操っておった」



『ほう? 操るとな、どのようにじゃ?』



「人が心に抱える不安

 突然に日々の日常が壊れてしまう不安

 その不安から逃れるために、なんとかしたい

 そういう心を利用して意のままにしておった


 ”偉いワシの言う事を聞けば

  その不安から逃れる事が出来るぞ”


 というような事を言っての


 人の心の不安というものを解消する方法にも

 色々あるものよ



 群れの中で、いやさ帝の取り巻きの中から

 自分や、その一族が排除されないようにするために

 邪魔な存在を消したいという思惑を抱え


 その邪魔な存在に自分達が滅ぼされるやもしれんという

 不安に囚われ、その不安から逆に滅ぼしてやる

 という考えを抱き


 更に同じような不安を抱えた人間の

 疑心暗鬼というヤツを利用して

 己の手を汚さずに己以外の者を排除しておった


 客観的に見たら貴人では無く鬼人よの

 だがの滅ぼされる側になるより滅ぼす側に成りたい

 そういう想いというものは、其方にも理解できるのではないか?」



『ふむ? わかるには、わかるぞ。権力争いに明け暮れ

 謀事(はかりごと)に埋もれる日常を過ごしておるとな

 嫌でも目にするからの』



「ほう? どんな謀事(はかりごと)があったのだ?」



『権力とは何か? 我は大勢の人間を己の意のままにできる力と思うておる


 意のままに操る方法というのもな、色々ある


 素晴らしい人徳により、それを得られる人もいれば


 利害関係を創って損得勘定で得られる場合もある


 我は基本的に、関わった人間に暗示を刷り込む事で

 己の意のままに操るようにする事が多い』



「暗示? ほう、どのような暗示を、どのようにして


 関わった相手の心に刷り込んできたのですかな?」



『たとえばじゃの


 この帝都に来た事の無い者だけが住む地から

 初めて来た者と関わる事があった


 その者には、ここでは、こういった話し方をするのが

 当たり前じゃという暗示をかけた


 ここでは威厳と重みがあり風格のある

 言葉を選び、そういった言葉を語るにふさわしい語り口

 でなければ成らぬという暗示をな


 そやつ、そして孫子にいたるまで

 我が話すように暗示をかけた帝都言葉を

 話して日常を送る事であろう


 更に言えば、これらの言葉、用いられる単語自体に


 関わった人間に語って己に言い聞かせる

 そういった言葉および単語となっておる


 どんな事のための言葉であるか、わかるか?』



「わかりませんな。なにしろ帝都の住人では無いゆえ

 ただ、ここにいる間は、ここの言葉を使い

 貴殿のような方と同じような語り口をしますがな


 誰しも慣れ親しんだ言葉と語り口を

 聴きたがるものでしょうからな」



『そう、誰しも己が使う語り口と同じ語り口に馴染み

 関わった相手も同じ語り口を望む


 そして権力という物を手に入れるとな

 その権力を維持するために言葉を使うようになる


 そうなった時に使っている言葉が

 権力を持つ何かの内輪で偉大な存在となった人の言葉となり

 従う事が当然という語り口になっていく


 すなわち我等に永遠に従属する事が当然と

 聴いた人間が思うようにするための言葉ぞ、わかるか?』



「ふむ、わかると言えば わかりますな

 ただ、そういった情念を込めた言葉だったとは

 今の今まで思っておりませんなだな


 我等と同じ言葉を語りし者に敬意をはらい

 同じ衣装を着る者に威厳と風格を感じ

 その語りし事に従うようにするが当然


 と、言う事を語るに特化した言葉というワケですか

 語っていて面白いでしょうな


 という事は相手に服従と身の程をわきまえた態度を推奨する


 そして己も帝に近い偉大なる存在に対し

 そういった態度と話し方で過ごし


 帝都の秩序というものを維持するというワケですか

 素晴らしい単語の並ぶ素晴らしい言葉ですな


 少なくとも貴殿や、貴殿が関わった者達は

 未来永劫、一族が途絶えるまで

 この言葉、語り口で語るのでしょうな」

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