魔物交流サングラス Vol. 9 縁聖霊
夜になってから歓楽街に行って酒場が並ぶ街並みを通って
朝まで飲んだくれる事のできる店を見つけて一晩を過ごす事にした
ためしに魔物交流サングラスをかけてみると、やっぱり、いる
『同じ血縁で同じ地縁を抱える人間だけで関わるのだ
しかも同族会社で働くのだから集団縁も同じなのだから
抱えている縁が違う人間とは関わるべきでは無い
どうせ 違う縁を抱える人間には理解されない
やれと言われる事も、やって欲しいと期待される事も違うのだから
理解できるはずもない
同じ同族会社の同じ部署で同じ職務に携わる人間とだけ関わるのだ』
(煽ってんねー、なんで? そんな事してんの?)
『ん? なんだ御前は? よそ者では ないか
この地域で名誉ある一族の結束というか絆というものを強めるのを邪魔するでないぞ。』
(てか、あなたは誰? 何の魔物ですか?)
『失敬な奴だな、魔物では無い。
人間は何かしらの縁を抱える。我は縁を司る聖霊ぞ
同じ親族が抱える血縁
同じ地域に住む人間同志が抱える地縁
同じ集団に所属する人々が抱える集団縁
この地域で発生する全ての縁を決めているのは我じゃ』
(凄いですねー、よく わけわかんなくならないですね?)
『当たり前じゃ、この地域の人間が抱える縁の全てが
このワシの頭の中に入っておる
まあ、普通の人間には理解できぬであろうな
貴様のような輩は、自分が抱えている縁すら
把握して理解していないであろうし
覚えていないし、忘れてしまうであろう?
ガキの頃に同じ学校にいたのとか
親戚づきあいしていて関わったのとかの縁すら忘れ
同じ会社の同じ部署で同じ仕事をしている人々との集団縁以外
意識する事すら無いのであろう?
それは貴様は、集団縁だけで良いと思い込まされておるからだ
同じ集団縁を抱える人間だけで
同じ仕事の勉強や訓練をするように生きるのが当たり前で
それこそが人生と教育されておるからだ
ワシと同じ聖霊が、いつも生活している場所にいて
そうなるようにしているからだ。
それを変える気にすら、ならないであろう? わかるか?』
(そう言われてみれば、そうですね。そんなもんでしょ
親元から離れて大都会のアパートで生活する
平凡な外見の独身生活をする30歳未満の会社員なんて)
『なんじゃ向上心というものが無いのか?
たとえば、あそこにいる金持ちのオボッチャマに言い寄っている
派手に着飾った女を見てみろ
自分より社会的地位が高いスーパーダーリンを見つけて
質の高い血縁を抱える人々の仲間になって
自分の子供が、もっと素晴らしい血縁を抱えられるように
日々、努力して生きておる。素晴らしい人生であろう?』
(そういう生き方も、あるんでしょうね。いいんじゃないですか
うん素晴らしい人生だし、美しい生き方なんじゃないですかねー)
『その内、貴様も理解できると想うが
自分の抱える縁の量や質は、一生、変わらないものぞ わかるか?』
(そうですかー、いいんじゃないですか変わると混乱するのが人間だし)
『いつもいる所に戻り、自分のいつも通り今まで通りの日常でも
そのサングラスをかけてみるといい。我と同じ聖霊がいるであろう
その縁を司る聖霊の言っている事を聞いてみるが良いぞ
言っている事が、今は理解できないかもしれぬがな?』
・・・・
土曜の真夜中が過ぎていき、日曜日の朝になって
昨日の朝と同じ店で朝飯を食べている頃には
何故か縁を司る聖霊の言っていた事を忘れた
自己防衛本能というヤツなのだろうか
言われた通りに本当に、
自分の抱えている縁について考えて
自分のいる地域にいる縁聖霊の言っている事を聴いて存在を意識しても
自分のような人間が何かを変えられるワケじゃないような気がしたからか
存在を意識した途端、今まで通り、いつも通りに同じ事の繰り返しの中で
平穏に過ごせている日常が壊れてしまうような気がしたからか
自分が会社とアパートを往復して、”職務中の我々”として過ごす平日に
魔物交流サングラス いや 人外存在との交流サングラスを
かけるて、ナニカと交流する気には、ならなかった。




