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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
35/51

アニ女 Vol.1 熱病

兄が東京の私立大学に合格した


親は大学になんか合格なんてしないで

地元の授業料の安い専門学校にでも行って

就職するんだろうと考えていたようで

結構レベルの高い私立大学に兄が合格したのは想定外だったようだ


受験費用、入学金などに予想外の金が必要だったらしい

4月になると一人暮らしを支援する仕送りなどの金が

毎月必要になるので、それをどうするか

アレコレと電話で兄と話している


 新聞配達を毎日する事で貰える奨学金とかはどうだとか


 東京は大都会なんだから勉強に支障が出ない程度に

 効率よく金になるアルバイトを探せないかとか


アレコレと言っている。


ようするに中小企業のオーナー社長の坊っちゃん嬢ちゃんが

入学するような授業料の高さで

入学後の、人づきあいとかにも金がかかり

それを怠ると就職活動に響いてしまうとは想定していなかったのだろう



で、しわ寄せがコチラに降ってきた


地元の県立高校に入学したばかりの自分に言う


「御前には一人暮らしさせる余裕なんか無いからな

 自宅から通学できる国公立大学に進学するか

 公務員試験に受かって公務員になれ」


そんなセリフを高校一年生の自分に言ってきた


ようするに高校3年で公務員試験か国公立大学試験を受け

合格しろという事だ。


駄目だったら稼ぎのいい男を捕まえて結婚しろとでも言いたげだ


 アラブの石油王みたいな社長様が天から降りてきて

 自分みたいな平凡なのと結婚してくれるってな

 最近の漫画で見かけるスーパーダーリン獲得物語の登場人物に

 自分の娘がなれるとでも思っているのだろうか?


まあ、自分でも可能性はゼロじゃないとは思っているが

たぶん無理なのだろう



・・・・・



「小学校の時から集めている、そのアニメグッズ

 もう飽きてこない? 集めるの やめたら?

 そろそろ流行遅れってか 時代遅れでしょ?


 人気があった全盛期ってアンタが小学校3年頃だから

 もう6年前よ。高校生にもなって馬鹿みたいだと思わないの?」



「思わなーい。それに同じ小学校、同じ中学校だった友達とは

 いまだに共通の話題って言ったら、このアニメ関連話だもの」



「え? そんな アニメオタクなんて蔑まれるわよー

 高校に入ったんだからアニメなんて卒業して

 勉強とか他に色々やらないと

 後で後悔する事になるんじゃないのかしらねー」



「その内ね。

 地元、岩手県が産んだスーパーアイドルとか言って

 テレビに毎日のように映っている娘がアイドル卒業して

 テレビに映らなくなる頃には他の共通の話題になるかも

 でも、今は、まだ。なんていうかなー熱が冷めてないんだよねー」


というような会話の後


毎度のように、そのアニメの話だけをするグループラインで

ひっきりなしに、あるアニメの新作シリーズについての話を

いつも通り今まで通りにする。




・・・・



高校一年の秋、小学校高学年の頃から一緒にグループラインで

アニメの事を語っていた友人の一人が、ついに言いだす


 このラインから抜けていいかな


何? 彼氏でも出来たの?


 そう、でね。高校生にもなってアニオタは痛いよね

 って言われちゃって、嫌われたくないし・・


そう、じゃあ、しょうがないよね

まあ、友達なのは変わらないんだから

何か、あったらメールしてね


 そうだね。うん。じゃ


小学校高学年からのつきあいと言っても

共通の話題が最早アニメ話しか無かったのに

その共通の話題を語るラインから抜けられてしまったので

何を、どう話しかければいいのかすら思い浮かばない事に気づく


それは抜けた相手にとっても同じだったようで

それきり連絡は途絶えた



・・・



そして、一人減り二人減り、高校三年生になる頃には

最初に、このグループラインをやろうと言いだした娘が


 就職してからの一年目とか、大学進学してからの一年目とか

 人生が決まるほどの事があると思うんだよね

 現実逃避に近いアニメ話なんか話している場合じゃないよね


と言いだして抜けてグループラインの人数は二人だけになり

もう、どちらが、やめようと言い出すかだけになった



・・・



大学一年の秋、大学祭でグループラインで最後まで残ったのと再会した

同じ公立大学に入学していたのは知っていたが

学部が違うし、サークルも違っていたので交流は無かったのだが

本当に偶然に偶然が重なって再会した。


「グループライン、誰かが戻ってくるかもしれないからと

 閉鎖せずに残しているけど


 誰も戻ってくる気配無いし、どうする? 削除して消す?


 元メンバーの一人なんか小学校の元同級生に


 ”あんな黒歴史を言わないでー

  いやー、あんな馬鹿みたいなもののために

  時間とか金の無駄遣いしたんて 本当に馬鹿みたい”


 とか言うほどだったって・・・」



「そうだね、残骸のように残しているけど・・もう意味無いよね。消そう」



そして、じゃあ元気でねと言って別れた。


その小学校高学年から大学1年までの間

7年分の言葉が詰まったグループラインを消して

保存してあった過去ログも消し


そのグループラインから派生する形式で

高校の文芸部活動で誰かが二次創作で書いた


 アニメの、あの脇役がもしも主人公だったら

 あの悪役が主人公だったら


というような稚拙な自作ライトノベルの保存倉庫も消したら


何かスッキリしたような、何かから解放されたような感覚になった


その自作ライトノベルを書いていて最後までグループラインにいたのも


グループラインを消したら、それまで何かに憑かれたかのように

頭の中に浮かんでいた物語は全て消えて何も思い浮かばなくなったと言う




・・・




それから時は流れ


地元出身のスーパーアイドルは

アイドルグループを卒業して母親役とかでドラマに出ている役者になって


大学を卒業して普通に就職して、普通に結婚して

どこにでもいる住宅街の主婦のオバチャンになって


昼間はパートのオバチャンをやって

夜は旦那が語る会社員生活を聞く日常を過ごすようになって数年


今となっては、あの頃に感じた何かへの熱い想い


臭い言い方をすると、”情熱”というものが

馬鹿げた熱病に魘された病人のウワゴトか戯言のようにしか思えない


でも誰かが同じような熱病にかかって情熱的に語るのだろう

自分には、もう、そんな情熱とやらは残っていないけれど



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