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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
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南の島の精霊


とある太平洋上の南の島で隠遁生活を送る暇な金持ちの所へ

行商人の男がやってきて商品を売り込んだ。


金持ちは並んだ派手なアクセサリーや道具やらの商品の中に

なんの変哲もない水槽があるのを見つけ行商人に尋ねた。


「なんだ?これは?こんな物を買う奴がいるのか?」


その質問を待ってましたと言わんばかりに行商人が応える


「これは妖精水槽と申しまして

 このメガネで妖精を探知して、この網で捕まえて

 妖精や精霊を格納しておいて鑑賞できるという商品です。」


それを聞いた金持ち あっけにとられたような顔をすると


「何を馬鹿げた事を言っておるのだ?御前は?

 妖精や精霊なんぞ、いるわけが、なかろう」


すかさず行商人が応える 


「では、論より証拠、精霊を捕まえてみせましょう」


「ああ、できるもんなら、やってみろ」


行商人は眼鏡をかけ網を構えると 

未来への夢を語るような呪文を唱えながら網を振り下ろし

水槽の蓋を開けて網から何かを入れて蓋を閉じると

水槽の中に薄く淡い水色のような光を放つ

小さな人間に蝶の羽が生えたような精霊が浮かび上がった


「どうですか?こんなに簡単です。

 後は水槽の魔力で妖精は逃げ出そうとすらしません。


 この妖精は未来への夢をエネルギーにしている精霊なので

 毎日、将来の夢を語りかけるだけで懐いてくれます


 この島には、たくさんいる捕まえるのが簡単な妖精です

 暇な時に捕まえてみて鑑賞してみては、いかがですか?」


「ふむ、少しは暇つぶしになりそうだな、買ってやる」


「お買い上げ有難うございます。

 もし何か使用法について疑問が御座いましたら

 こちらの電話番号に御連絡いただければ

 我が社の御客様サポート部門の者が回答しますので」


行商人は妖精採取セットを置いて島を去っていった

何ヶ月か経過して、暇な金持ちが思いついた

未来への夢では無くて、他の事を語ると

全く違う種類の精霊が捕まえられるんじゃないのだろうかと


一生、遊んで暮らせる金を手に入れるかわりに

人間嫌いになってしまう前に関わった

心の底から、もう一度、会えるものなら会いたい人間

その人々を心に思い描きながら

出会った時の感動と再会したい願望を語ると

今までとは全く違った姿形をした精霊が現れた


その妖精を捕まえ、妖精水槽の中に入れると

今までに無かった事が妖精水槽の中で起こった

新しく捕獲した妖精が音頭をとってダンスを踊りだしたのだ


最初、面白がって見ていたのだが

数分後、妖精水槽は全ての妖精を吐きだし

妖精水槽が空っぽになった。茫然とする金持ち。


しばらくしてから御客様サポートに電話して

経緯を説明すると電話口から事務的な回答が返ってくる


「おや、御客様、販売員が説明いたしませんでしたか?

 呼び出す時の言霊を変えれば現れる妖精は違います

 同じ妖精水槽の中で一緒にしてはいけない精霊の組み合わせ

 というものがあるという事を?


 言霊と精霊の組み合わせなどの説明書


 同じ水槽内に入れてはいけない組み合わせ等、禁忌説明書


 捕獲精霊が増えた場合の追加妖精水槽購入の手続き説明書


 連絡先が書かれたマニュアル


 御受取りに なりませんでしたかあ?」


「いいや 何も受け取っていない」暇な金持ちが応えると


「そうですか、中古品をマニュアル無しで買われたのですね

 で? どうされます? 説明書一式を購入されますか?

 それとも今までのように

 未来への夢を食べて生きる精霊だけを観察されますかあ?

 お値段は妖精水槽セット一式の半額ほどですがあ」


出した金が無駄銭に思える事が嫌だったからか

言いくるめられ買わされた事が間違いと認めたくなかったからか

まだ、このオモチャで遊びたかったからか

金持ちの口から出たセリフは「買う! 送ってくれ!」だった。



それから何年かが何事も無く平穏に過ぎていった

島の住人の色んな夢を食べ、現状に満足させる妖精が水槽に増えた


今まで通りに同じ事の繰り返しを続けたい願望を言うと現れる妖精


新しく何かを始めてみたいという冒険心を言うと現れる妖精


違う妖精も捕まえてみたとはいえ

島で捕獲きる妖精は、そんなに種類があるワケでもなく

金持ちは飽きて新しい暇つぶしを探したくなってきた。


ある日、ふと思った。

言霊と精霊の組み合わせなどの説明書には載っていないが

昔、金持ちに成りたがっていた若い時に抱えていた

欲望や悪意などのマイナス言霊を唱えると

どんな精霊が捕獲できるのだろうか? と。 


その思いつきを実行に移すと 

今までに見たこともないような不気味な物体が現れた

見た者、全てが嫌悪感か 不快感を感じるのではないか

というような その物体は自ら妖精水槽の中へと入っていった

数分後、水槽の中の全ての精霊が同じ形の不気味な物体になり

水槽を粉々に破壊して飛び去っていった。


デタラメな思いつきで実行してしまい

とんでもない結果を招いてしまった事を自覚した金持ちは

再び、御客様サポートに電話して経緯を説明

そうすると事務的なマニュアル通りな回答が返ってきた。


「御客様以外にも年に何人か、そういう事をやって

 面白半分に精霊まで悪霊にしてしまう御客様がいるんですよ

 購入された水槽が無駄になってしまいましたね


 今、お住まいになっている地域、大丈夫ですかあ?

 同じような悪霊が増殖すると同じ地域に居住されている方の

 精神状態に悪影響を与える事もあるのですがあ

 もし御困りでしたら悪霊駆除サービスも請負ってますが?


 ちょっと状況次第ですが、たった水槽値段の10倍ほどです

 お金持ちの御客様にとっては大した金額では無いでしょう?」


「別に同じ島に住んでいるだけだからな

 別に奴等の精神状態が、どうなろうと関係無い

 気に食わなくなったら、島を売り飛ばして

 他の島を買えばいいだけだから、駆除サービスは、いらんよ」


流石に、露骨に、もっと払え、もっと払えと言われているのが

気にくわなくなったのか電話を切って

増殖して野に放たれた悪霊や元精霊を放置する事にした。


それから数ヵ月後、金持ちは昔の知人で

自分と同じような暇な金持ちに島の購入を勧めていた。


「貴様等、まだ腹黒ナンバーワン決定戦やってるんだろ?


 今年とか? どう? 勝てそうか? ん?


 大会で勝つための攻撃用戦闘員? 足りとるのか?


 競争相手への嫌がらせ用とか、やる気の破壊用とか?


 こないだFAXで資料を送った島なんだが

 好戦的で戦うために生まれてきたような住人が

 たくさん住んでいてなあ


 大会で勝つための兵隊が


 い く ら で も 調 達 で き る ぞ


 ワシは一回、優勝して色んな物を手に入れたから

 奴等を統括して戦うより、のんびり楽しく過ごしたいから

 この攻撃用戦闘員の養殖島を破格の値段で売ってやるぞ


 この島の住人の中で強いのを使うだけで

 腹黒ナンバーワン決定戦で勝てるぞ? どうだ!」


と、自分が勝つための戦闘員を欲しがっている金持ちと交渉

そして島を売り飛ばし他の島へと移っていった。

最期に一言だけ新しく島の所有者になった金持ちに言った。


「そういえば、面白い道具を売りにくる行商人が来るんだ

 面白い物を売っているから、来たら何か買ってみてはどうかな

 勝つための道具とかも色々と売っていたぞ?


 激戦地で戦いたがっている島の若い者を

 願望通りに激戦地で戦わせてあげて

 君は、この島の要塞街から指揮をするワケだし。」


・・・


ある日、新しく島の御主人様になった金持ちの所へ

行商人の男が商品を売り込みに、やってきた。


金持ちは並んだ派手なアクセサリーや道具やらの商品の中に

なんの変哲もない水槽があるのを見つけ行商人に尋ねた。


「なんだ?これは?こんな物を買う奴がいるのか?」


そして行商人が金持ちに言った


「これですか、好戦的な兵隊を教育するのに最適な


 ”心の中の悪魔養成水槽”です


 悪魔を呼ぶ呪文を唱え

 寄ってきた悪魔を、このメガネで見つけ

 この網で捕まえて水槽内に悪魔を飼育できます


 住民全員へのプレゼントという名目で

 何かに悪魔を乗り移らせて渡して


 御客様が敵に勝つための命令すれば

 どんな事でもする人間に変えられる悪魔を

 飼育する事も出来ますよ。どうですか?」


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