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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
22/51

社内刑務所跡地の地縛霊(祓い屋 No.2)


祓い屋でアルバイトをする事になってから、2回目の現場

まずは依頼者から、どういった理由で、

この建物に生霊だか死霊だか、どちらだか不明な地縛霊が

建物利用者に霊障を与えているかの説明



「昔、ここには大企業の社内刑務所がありまして


 社内警察に逮捕された社内法違反者が狭い個室に押し込められて

 毎日、ずーっと反省文を書かされておりました


 ある人は部屋に隔離される寸前にやってしまった事についての反省


 また違う人は、今までやってきた仕事についての反省


 そして夕方4時、書いた事を読んで

 それについて説教や詰問したりする尋問官が来て

 反省文について1時間ほど指導していきまして


 毎日、毎日、自分から会社を辞めると言って

 この会社内で死刑にして下さいと希望するまで

 毎日、同じ事が繰り返されておりました。



 その当時は護送船団方式とか言われる

 社内管理方式が常識でございまして


 学校を卒業して大企業社員や公務員、

 はては中小企業の同業者団体の社員でも


 一旦、入社したら死ぬまでの一生を

 所属した会社や地方公共団体などのために過ごす


 というのが当たり前でした


 その所属団体を退職するというのは

 ハグレ者になるという事を意味しておりました


 また労働組合が従業員解雇を認めない方針でしたので

 経営者側も新聞沙汰事件を起こしでもしないかぎり

 懲戒解雇という事が、できなかったのです


 なので会社に不要な人材なのに

 会社に無駄な人件費を嵩ませるだけな社内犯罪者を

 社内警察が逮捕し、社内から消えたいと自分から言い出させるために

 このような、社内刑務所が必要であったワケです


 今では、全世界的に会社の業績管理が認められ

 一定の業績を挙げられない従業員は排除したり

 下請け会社ピラミッドへ出向させたりと

 会社の人件費削減がスムーズにいくようになったので

 数年前に社内刑務所は閉鎖されました。


 というワケで会社所有地として残っているわけなのですが


 売却しようにも何故か売れず

 試しに数人の社員や事業部に利用させようとしても駄目


 原因は施設内の人間が同じ白日夢というか悪夢を見て

 精神的に病んでしまうので、どこの事業部も

 それどころか関係会社すら利用したがらなくなり


 神頼みとでも、言いますか

 非現実的とは言え、なんとか、できるなら、なんとかして欲しいので

 今回、貴方方に依頼する事となったワケです


 でも、この現代に、そんなオカルトな事を依頼した事を

 同業他社などに言われたくないので内密に願います。」



そんな説明の後、どんな白日夢を見るのか

実際に体験してみようという事で建物の中で過ごす


尋問官が看守のように見張る席だった所にいると

尋問部屋に同じように隔離された人間が入ってくる


その内の一人が自分の反省を毎朝、毎夕、延々と叫ばされ、

何故、それでも会社を辞めないかの理由を最期に言わされ

薄い壁なので反省の叫びが他の個室にも響く


「自分は無能なので会社を辞めても転職先がありません」


「この会社で、この職務をするためだけの訓練を受けたので

 ほかの会社で、似たような職務をする訓練を受けるつもりはありません」


「元同級生、親戚などに素晴らしい我々の世界に所属している事を語り

 それが同居の家族にとっても栄誉なので退職しません」


「子供の学費に、まだまだ金がかかるので退職しません」



それが続いた後、尋問官が言う


「これが何年も続いたら、貴方の職務経歴に何もしないで

 反省だけする反省部屋にいた時期というものが出来上がりますねぇ?


 子供の学費を稼ぐと言いましたが、我が社でしていた仕事と同じではなく

 もっと底辺労働者に近い重労働や単純作業をする労働者であればぁ

 転職先は見つかるのではないですかぁ?


 今の時代、採用する時には前所属会社で

 何の仕事をしていたか問い合わせが来ます。


 今、やめれば、問い合わせが来た時

 この反省部屋に隔離されて反省演説を言わされていた不名誉を

 公表しないであげましょう。どうですかぁ? ぅん?」


尋問官が辞表を自分から書くように言う

言われても言われても挫けずに反省の叫びを続けている

反省の叫びをしている本人が続けると


他の部屋にいた他の人が辞表を出し出て行ったり

倒れて救急車で運ばれていったり

長年の無茶が祟ったからなのか倒れて死んだりして


最後に反省の叫びをしている人間だけが意地になって残るが

尋問官が一言、言う。



「人生の最期を、こんな世界の住人として迎えるなんて

 自分でも悲しくないですかぁ?


 職務遂行能力不足、職務把握能力不足で

 貴方は会社にとって必要無いと判断されたのに


 自分が給料を貰えるという自分の欲望を満足させるためだけに

 会社に居座ろうというのは、どうなんでしょうねぇ?


 自分では、どう思い込んでいるか知りませんがぁ


 我社にいる誰にとっても貴方の存在は意味が無いんですよ


 諦めてくれませんかねぇ?」


その言葉を聞いた男が言葉にならない言葉を

獣の唸り声のような響きの声で叫ぶ

ほとんど怒りの言葉だという事だけは、わかるが

何を言っているのか理解できない。


怒り、憎悪、悪意、敵意

それらの感情を投げつけられているような感覚だ


その全てのマイナス感情に囚われて

自分が、それらの黒い濁った感情を抱えたかのような

錯覚に陥って叫び出しそうになった



そういった幻覚、いや白日夢を見た後、眼が覚める

一緒にいた祓い屋の女も同じ幻覚を見た事を確認する



「いやー、こりゃ凄い。普通の人だと

 この生霊の地縛霊の悪意に捕らわれて

 心を病んじゃうよねー、急いで祓わないと」


「え? これ? 生霊? じゃ生きている人間の残留思念って事?」


「そ、たぶん、結局、諦めて社内刑務所から出所したんだろうけど

 ここを出た後、生きているんだか死んでいるんだか

 わからないような抜け殻のような人生を送っているんだろね

 だから、肉体が滅んで成仏でもしない限り

 ずーっと、残ってんだろうなー」


「じゃ、どうするの?」


「どうするって、無理やり、この場所から剥がして

 肉体に戻ってもらうしか無いでしょ。さ、やるよ」



いつものように作業開始って感じに淡々と

剥がすために、こうするから、ああするから、と指示をしてくるので

言われた通りに剥がし、窓の外へ、”黒い濁った何か”を放り投げると

たぶん、肉体のあるらしき方角へと、それは飛んでいった。


「いやー、終わった終わった。さ、報酬を貰って帰ろ」


いい汗、かいたねーといった感じで

ジョギングでもしてきたかのように女が言う


翌日、新聞の朝刊に、生霊だった男によく似た人間が

起こした事件と逮捕された事についての記事が出ていたが

そのまた翌日には、その事件の内容すら忘れた。


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