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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
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密航 (トリッキー・サーカス前日譚2)


現在、火星移住船は月から火星に向けて航行中

途中の宇宙ステーションに補給のために寄港している。


その寄港中・・カーンの連絡端末が鳴り出す


『あ、カーンさん。ちょっと来てくれませんか。

 カーンさんを捜している人がいるんです』


連絡相手は船内喫茶店『ムーンウィンド』店主リリー。


『わかった』


そしてカーンは『ムーンウィンド』へ


「誰だよ、いったい」


文句を言いながらカーンは入ってきた。


「あ、カーンさんが来ましたよ」


リリーがカウンターにいる客に声をかける。


「!」


カーンはその客を見て絶句した。

肩まであった髪はバッサリと切られていたが、ミンファ=ツァンだった。


「…カーンさん」


「おい」


何か無茶をして密航した張り詰めた心の糸が切れたのか

寝不足だったのか、安心して気を失ったミンファをカーンは背負う


「大丈夫ですか?」


「さあ? とりあえず看護科に連れて行く」


リリーの問いかけにカーンはそう答える。


医務室に入り叫ぶカーン


「ちょっと、ごめんよぉ! 急患だぁ!」


応対に出て診察するインフィニティ

カーンの方を向き直り状況を説明する。


「特に異状は見られませんね

 おそらく過労でしょう、休めば回復します」


「わかった、じゃあ起きるまで待つ」


カーンはインフィニティの診断を聞き椅子に座る

背負って疲れたのか、そのまま眠ってしまった


『火星移住船、出港準備完了。五分後に出港します』


その艦内放送でカーンは目を覚ます


(出港? 部外者が乗ったままなのにか? ってことは…)


「ホントかよ。おいおい」


思わず声が出た。ミンファも艦内放送で気付いたのか、目を開ける。


「おい性別不明、空いている個室があったら使わせてくれ」


「5番が空いてますよ」


「ありがとよ」


そう言ってカーンはミンファを起こすと、インフィニティの方を向き


「一応まだ病人だから同席してくれ」


「いいんですか?」


「どうせ盗聴する気だろ。なら堂々と聞いてろ」


「はいはい」



個室


「紹介しておく、こっちはミンファ=ツァン。俺の昔の知り合いだ

オカルトが趣味で薬剤師の資格を持ってるからお前と趣味が合うかもな


で、こっちがインフィニティ。

 性別不明で取り扱いには注意が必要の艦内一の危険物

悪い奴ではないが良い奴とは言えないが腕は確かだ」


「なんか説明が多いですね」


「気のせいだ」


インフィニティの問いに断言するカーン。そして


「で、なんであんたここにいるんだ?

 たしか昨日、結婚式だったんじゃないのか?」


ミンファの方に向き直りそう聞いた。


「…結婚式は、出ていません抜け出しました

あのまま父の言いなりな操り人形では、

 生きているとは、いえないような気がして」


「式を抜け出したってか、密航までして何がしたいんだ?」


「…密航なんて、していません

 搭乗口に誰も、いなかったから入っただけです

この船に来たのは、カーンさんと会いたかったからです」


(そーいや、今日のジャディンの暴走は搭乗口近くだったな。

 そのドサクサで誰もいなかったのか、なんて偶然だ)


そんなことを考えつつカーンが連絡を取ろうとすると


「何をするつもりです?」


横からインフィニティが連絡端末を取り上げた。


「管理官に連絡を取ろうと思ってな」


「そんなことをすれば」


「まあ監視つきの軟禁生活ってとこか。

 遅かれ早かれバレるなら隠さず言えば取り調べも軽くすむだろ」


とインフィニティの言葉を引き継いで

カーンは平然と言い返すと、ドアが勢いよく開いて


「「「「「管理官に引き渡すなんて何を考えている?」」」」」


と口調、語尾はそれぞれ違うが医務室にいた人の大半が駆け込んできた。


「んだよ、御前等、全員そろって盗み聞きかよ。」


呆れるカーンにかまわず口々にカーンを責める看護科の面々。


「みんな聞いていたなら話は早いですね。みんなで共犯になりましょう」


と、楽しそうに言うインフィニティの提案に


「好きにしろよ」


投げやりに答えるカーン

そして全員での会議となっていた。


「ここで匿う気なら助手として使いな。役に立つはずだ」


「そんな事したら見つかるぞ」


「いいんだよ。結局のところ管理官にバレなきゃ。

 人間見慣れたものには注意を払わないしな。

イザとなったら性別不明に『説得』してもらって、

 そいつも共犯にすればいいんだし。そういうの得意だろ」


「「「「「なるほど」」」」」


全員がうなずいた。


「人間一人、誰にも見つからずに匿うのは結構難しいんだよ。

 特に野次馬根性旺盛な暇人が集まっている状況じゃ」


「なんだかんだ言って協力的ですね」


「御前等は恐いからな、じゃあそういうことで」


「どちらへ?」


「状況監視システム室、艦内監視データ改ざんに」


それを聞いてミンファは頭を下げた。


「カーンさん、ありがとう、ございます」


「こいつらに喧嘩売って殺されるより、

 管理官を騙して免職か減俸の方がマシだからな。

礼ならそこにいる連中に言いな」


「カーンさん、ありがとう、ございます」


「はいはい」


振り返りもせずにカーンは答えて出て行った。


・・・・


ミンファが火星移住船に来てから三日が過ぎ

医務室での仕事を覚えていった

インフィニティなどの変人に圧倒されながらも特に問題の無い三日間

ただしアリ・カーンが医務室に来る事は無かった


そして四日目

その時、看護科にはインフィニティなども いなかった

そんな時を狙ったかのように管理官が訪れ、ミンファの存在に気が付いた

ミンファの目の前で身分照会用端末を操作した後、こう言った


「乗員記録に未登録ですね? あなたは誰ですか?」


その後、ミンファ=ツァンは取調室へ連れて行かれた。


・・・・


取調室


ミンファは黙秘を通していた

全てを話せば自分を匿ってくれた人達に迷惑がかかる

また家に連れ戻される可能性もある

そう考えたミンファは自分の名前を言うだけで黙っていた。


一時間後、ドアが開きアリ・カーンが入ってきた

管理官は驚きつつも部屋から出るように言うと、カーンは


「身元保証人なんでね、手違いで登録が遅れていただけだ」


言うと同時に一枚の書類を付きつけた

その書類は、ミンファの火星移住船搭乗と滞在許可書

それを見て驚く管理官


「少し待ってやるから確認しろよ」


カーンがそう促すと、管理官は部屋から出ていった

五分後、確認が取れたため二人は取調室から解放された


「…カーンさん、色々すみませんでした」


「言ったろ、奴らに呪いの言葉を聴かされるより

 免職や減俸の方がマシだって

 マシなだけで望んだ訳じゃねえからな

そうならないようにやっただけ

 別に、礼を言われるほどのことはしてねえよ」


「…でも」


「それに、あの書類取るのは簡単だったしな


 使命感ある管理職の上役に

 派閥争いをしている敵に知れると大変な事を

 公表されるのは嫌ですよね


 ってな事を言ったら書類くれたんだよ」


「…脅迫」


「交渉術」


「…悪人、ですね」


「良い響きだな、ともかく俺に話があったんだろ、今なら聞くぜ」


それを聞くとミンファは首を振って


「…いえ、もういいんです

 これからのこと、少し相談しようと思ってましたが

でも、カーンさんには答えようが無いでしょうから」



「そりゃそうだ、自分で自分なりに考えるために

 家から、父親から離れたんだろ?


 なのに俺みたいな人間に聞いて

 自分で考えないで、これからを決めちゃ意味ねえからな


 ああ、そうだ、ほらこれ」


カーンは、いくつかの書類をミンファに手渡した。


「もしこのまま火星移住船に乗る気なら、それにサインしな

上としては船が動いている分には文句はねえし

 それにサインすりゃクルーになれるだろうからな」


それを聞くとミンファは


「ありがとうございます」


そう答えて嬉しそうに微笑んだ。


「まあ、頑張りな、ミンファ医務官」


「はい、頑張ります」

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