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かっこいい悪役を探して  作者: 中山恵一
12/51

ノマドワーカー (ハウスレス・ジプシーズ)


平成7年2月、ついに前職で貯めた貯金が無くなった

アパートの家賃も払えない。


今更、昭和バブル頃から数年前まで働いていたのと同じ仕事をしようにも

年齢が30歳を超えているから、どこの会社にも相手にされない

同業者団体内での作業員平均年齢が25歳で

30歳を超えて仕事しているのは経営者か営業くらいなのに

現場に出る作業仕事しかできなんだから、当然と言えば当然だ


かといって、今やっている歩合制セールス掛け持ち生活も無理っぽい

だが一緒にセールスをやっている人々は言う


「3月までの直前6ヶ月の営業成績が最低ノルマしかクリアできなくて

 月額基本販売報酬が6万円くらいしか貰えなくても


 9月までに毎月12万とか20万とか30万とか貰えるくらい

 営業成績を挙げれば いいんだから


 それまでは、自動車に布団と最低限の荷物を載せて

 残りの荷物は実家に送っておいて

 営業活動すれば いいんじゃないの?


 どうせ、家なんか荷物置き場なんでしょ?

 あたし達みたいに物売りのオバチャンで

 旦那や子供と一緒に生活しているワケじゃないんだし


 大丈夫、大丈夫、9月までに、なんとかすればいいんだからぁ


 ほら、同じ営業所の基本販売年棒が4千万いっている人とかも

 若い頃は苦労してたって言うから、いつか、なんとかなるからぁ」


半年間、ハウスレス車上生活をしながら営業活動をしろと言う


実家に荷物を送る時に、親には大反対され文句を言われたが

なんとか言いくるめ、営業管理職やセールス・マネージャーの

言う事を聞いてハウスレス車上生活セールスを始めた




平日の朝、9時半から毎朝の営業所での朝礼、今まで通りだ


10時から担当営業地区に行っての訪問販売活動、今まで通りだ


15時に担当営業地区から戻って訪問販売活動を営業日誌に書いて

営業所長に報告、今まで通りだ


夕方16時に営業所を出てからが今までとは変わった


今までは同じ営業所の主婦セールスの皆様に右へ倣えして

アパートに戻ってTVを見て眠るまで暇つぶしをしていたが

変えざるを得なかった


なにしろ金が無い。何もしなければガソリン代や銭湯に入る金

コインランドリーで洗濯する金も無くなってしまう


コンビニの店員バイトを見つけてシフトを入れてもらい

それだけじゃ足りないので居酒屋の店員バイトも見つけて

コンビニ店員していない時にシフトを入れてもらい


同じ店で店員をしている人の中で客になってくれそうな人探し


無料で車を停められる場所を数ヶ所、探しておいて

バイトの合間に仮眠




”9月までに人間扱いされる営業扱い者に戻れるんだろうか?”


営業ノルマ未達成で罰金のように払わされている

営業ノルマ未達成分を穴埋めするために買った

自社商品の支払い月賦の金額や営業経費を考えると

毎月20万は貰えるくらいの営業ノルマを

9月までにクリアしないと、やっていけない


誰もいない車の中で一人になると

先の見通しがつかない不安感が心に湧き


 これから、どうすれば、いいんだろうか?


というような言葉が浮かび


自分が嵌った堂々巡りの悲惨さが身に染みて

嘆きの感情が心を支配して

怒りとも嘆きとも言えない言葉を叫び出したくなる。




4月以降、実際には訪問販売活動どころじゃなくなった


自宅浪人しながら、バイトして大学への入学金などを貯めて

勉強して大学進学しようとして、勉強どころじゃなくなって

客商売バイトをしていた店に就職して正社員になった後


売り上げが挙げられなくて、店を転々とするフリーターになってしまった

19歳くらいの頃に見かけた元同級生と変わらない心理状態だ


セールスとして結果を出すための営業活動ってものが

目先の生活費のためのバイトで、全くできない


結局、8月になっても営業扱い者契約を切られない最低ノルマすら

クリアできる見込みは立たず。

もう営業ノルマ未達成分を穴埋めする自社商品買いをする金も無い


何もしなければ、自動的に9月25日の翌銀行営業日に契約を切られて

完全無職の車上ホームレスに片足を突っ込んだ

コンビニや居酒屋でバイトをするフリーターだ。




どうにも、こうにも、ならなくなって

契約解除される一ヶ月前に営業職員カードを返却して

高校を卒業してから、たまに帰っていただけな親の住む地元に戻った


そして高校の元同級生でフリーター生活に嵌っていたのと

同じようなアルバイトを見つけた

全国展開しているパチンコ屋の店員アルバイトだ


同僚は地元のガラの悪い女子高を出たチャライ姉ちゃんや

地元の名前を書ければ入れる高校卒や、その高校すら中退したのとかだ


一応、バイトじゃなくて社員さんという名目の店員さんもいる


全国各地の店舗を転々としている生活をしているらしい

ずいぶんと、いいかげんな感じの人が多い


よく聞いてみると社員と言っても

住み込みでの日雇い労働者契約らしい


破門になった元ヤクザ、夜逃げした元会社経営者


セールスやったり店員やったりを繰り返す

商業高校の内輪もめをイイ歳をして抱えた人


いつかオーナー店長になる事を夢見る水商売ウォーカー


博打に嵌り、水商売毒婦との火遊びも抱え

有名メーカーをクビになって社会人になってからグレた

昔は真面目だった元技術職



いる人の身の上話を聞けば聞くほど

はぐれ者というか流れ者の吹き溜まりだった



なんとかセールスになる前の同業者団体関連に復帰しようと

職安で、その同業者団体に所属する会社を探して

自分の職務経歴で使ってくれそうな中小企業を探すが

中々、働かせてくれそうな会社は見つからない


最初、地元に戻った時は、


「仕事が見つかったら

 また、すぐにアパートを見つけて他の場所へ行くから」


と親には言っていたのだが、仕事が無い金が無いで

敷金礼金すら貯まらない




携帯電話の販売会社、インターネット回線契約プロバイダなどで

販売員をしている内に、あっという間に5年ほどが経過して

西暦も2000年を超えた


少しは仕事があって金が入ってきていたのが

再び、仕事が無くなって金が無くなった


1990年代前半の昭和バブル崩壊に続く

ITバブル崩壊とかで不景気になって


自分のような、好景気の時に人海戦術で

大量に人手が必要な時期だけ仕事が回ってくる

作業労働者に仕事が回ってこなくなったようだ


その上、不景気で一般消費者向け販売も低調な上

汚いオッサンに店にいられても困るらしい

なので店員バイトすら無くなった


・・・少なくとも、この地方都市では




しょうがなく、販売員の内輪で成功して

会社経営者になった知り合いに相談してみる


「東京や大阪、名古屋とかの大都市での出稼ぎ仕事なら、あるよ

 御前の職務経歴で、学校を出てから最初に入社した会社が

 所属する同業者団体での出稼ぎ仕事。


 気合いと根性で働いてみるか?」


仕事も金も無いので、ぜひにと言って出稼ぎ生活をする事となった


後は毎年、同じ事の繰り返しだ



同業者団体ピラミッドの頂点にいる大企業が

毎年2月15日頃に、ナントカ投資案件とかいうものを企画して


3月4月頃に、今年度もしくは9月までの半期まで

こんな作業が必要なんで、こんな一時的な人手が必要ですねとなって


GW明けから、俺らのような出稼ぎを集めて

9月末頃までの作業指示をして作業消化


毎週、月曜の早朝に電車に乗って作業現場に行って

夜、寝泊りする安サウナ、カプセルホテル、ネットカフェを探し

金曜の夕方まで作業


10月から翌2月までは今年度の反省とか翌年度のための検討会とか

とにかく出稼ぎ作業員は必要なくなるらしく作業が無くなるので

地元でブラブラ



毎年、そんな事を繰り返していたが

2009年になって、出稼ぎ仕事を回してきてくれていた人と

連絡がとれなくなった。


 同業者団体ピラミッドで、

 今まで自分達より少し上のレベルの仕事をしていた人々が、

 流浪の出稼ぎ労働者世界に流れ込んだので


 そいつらの方が、リーマンショック後の安い単価で作業してくれるし

 作業効率とか作業レベルとかも御前等より上なので、御前等イラネ


という言い分らしい。



40歳を過ぎて50歳近くなり、同居の親も70歳を超えている

この年齢で新しくゼロから仕事を探さないと、いけないようだ。



・・・・



数年、何も見つからずに過ぎた頃、アメリカのドキュメンタリーを見た

リーマンショックで、アメリカ地方都市の地域密着型同業者団体が破綻


今まで、その同業者団体で働いていて

今更、他の同業者団体に行く事も出来ないし

どこにも受け入れてもらえない高齢労働者が


地域密着型同業者団体で運営していた年金基金も破綻して

今まで払ってきて積み上げた年金原資が半分以下に減り

それに平行して年金も減額されたので

一生、働かないとならない事を通知され


同じ同業者団体での仕事を求めて、トレーラーハウスで移動しながら

全米各地を季節労働者として転々とする生活をせざるを得なくなった

今まで地域密着型同業者団体で多数派だった人々


と同時に、同じ同業者でも全米規模で活躍する

有能で仕事のできる成功した有名人

俗に言う同業者団体内で誰もが、こうありたいと言われるほどの

勝者というか成功者というか、ウイナーが

スマホで電話をかけて、モバイル端末を少し操作するだけで

巨額の金を生み出している光景。


といった2種類のノマド・ワーカーを題材とした映像だった。


多数派だった人々が、なんとかなるだろうと

楽観的に仕事を探しているのにインタビュアーが訊ねる


「客観的に見たら車上ホームレスなんじゃないのか?」


という問いかけにも


「俺らは、ハウスレス・ジプシーかもしれない。


 だが地域密着型 同業者団体に在籍していた時のような

 しょうもない内輪もめも無ければ

 同じ事の繰り返しでの歪みに苦しむ事も無く自由だ。


 こういう生き方しか出来ないが

 誰かに差別されたりするような言われは無い」


と言い返す。



それを見て、日本にも、高齢ノマド・ワーカーの存在を

許す同業者団体があるんじゃないかと探してみる。


あるには、あるが、2種類の内、成功者な人々

特殊な才能がある人が寄せ集まった世界だったり

プロ野球選手のように、ある種のアスリート集団だったり


と特別な才能があるワケじゃない人間が

入り口を見つけられるような世界では無かった。



だが、凄い偶然とかが重なり入口というか案内役の人が見つかり


50歳になる直前の高齢者で、ノマドワーカーというか

ハウスレス・ジプシーの世界に入る事になった。

作業的にはセールスをやる前の会社でやっていた作業や

出稼ぎ仕事をしていた時と同じ


ただ、今までと違っていたのは、


本社所在地が東京では無く外国の大都市で

社内共通言語が英語で


今までのように日本国内の各地で仕事というワケではなく


場合によっては交通宿泊費は自己負担で

外国で作業しないとならないかもしれない事だった。


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