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秋の夜長のこんな日は

作者: ナチュラル9

体調が良いときに、人の額の辺りに映像が見える。



その映像は映画みたいに話がある。


子どもの頃から見えていたので、周りの人も皆見えると思っていたが、その話をすると奇妙な顔をされる。


成長するにつれ、おおよそ、それは自分にしか見えないものなのだと理解した。そして、それがその人の未来を映し出すものだということも。



けれど、その未来は、その人に伝えてしまうと途端に変わってしまう。


例えば、今後、その人がある人物と出会い、人生がそれによって開けると見えた。

しかし、それを本人に伝えると何故だか、その人物との出会いがなくなる。


未来が変わるのだ。


何度かそんな体験をしたので、もうある時から、良い未来に関しては見えていることを人に伝えなくなった。


その方が、結果的にその人に良い未来が訪れるからだ。


自分は、ただ、見えるだけ。可能性として今の段階で一番強い未来が。




結婚して子どもを産んで、しばらくは体質の変化のように映像がさっぱり見えなくなった。


子どもが大きくなると、また見え始めた。けれど、妊娠前のようにもうハッキリとは見えなかった。




そんなある日、一人の女性が悩み相談にきた。


そんなに人は見ないけれど、時々アドバイスをした人からの噂を聞きつけて頼ってくる人はいる。


そんな人は、大抵どん底にいるので、少しだけ見えたことを言うようにしている。今を生きる力を持って貰いたいからだ。


その女性の表情は暗かった。20代半ばと若いのに、ずいぶん老けて見える。話をする時も、どこか自分に自信がなく卑屈な感じがする。


ふと、手を振り上げる中年の男性の姿が脳裏に浮かぶ。


ああ、これはマズいやつだ。


けれど、アドバイスに失敗するとまたその男性に戻ってしまう。どうしたら。


考えて、その人の幸せな結婚相手の像を伝えることにした。


結婚、と思ってその女性を見た時に、先ほどの中年の男の映像は見えない。見えた男性もかなりの変わり者だが、この男よりは良いだろう。


なるべく柔らかく伝える。


女性は今の人と縁がないことに微妙な顔をしていたが、そうですか、と言い帰っていった。


何年かのち、その女性は、中年男性とも、変わり者の男性とも違う、とても穏やかで優しい人と結婚したと風の噂で聞いた。



幸せであって欲しいと願った。

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