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僕は吸血鬼  作者: 毬森藻
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「おーい、みんなでかげふみしよーよー!!」

 クラスの元気な子が影踏みを誘ってきた。でも僕は、その非常に困った。なぜなら僕は吸血鬼。吸血鬼には影ができないのだから。

 僕が吸血鬼だと言う事はもう周知の事実で、みんなもそんなことは気にしない。問題は、みんなが吸血鬼の特性についてはあまり知らない事だ。特に、影がないなんてことは十字架に弱いとかの弱点に比べたら周知度の方も低いのではないだろうか。小学生ならばなおさらだっただろう。

「なー、かげふみしよーぜー」

 困っている僕に彼が直接誘ってきた。

「ごめん、ぼく、かげがないんだ。きゅうけつきだから」

「へー、キューケツキってかげないんだ。じゃあしかたないな」

 仕方ないという言葉にちょっと悲しくなる。

「じゃああしたにしようか」

「えっ?」

 そういう問題じゃないんだけど。

 その日はかくれんぼをした。


 次の日。

 先生を含めたクラスのみんなが体育館に集まった。でも電気は付けずに薄暗い。先生は段ボール箱いっぱいに何かを持っている。

「じゃあ始めましょう」

 先生が笑顔で言う。でも何を始めるのだろうか。ほかのみんなも分かっていないようだ。ただ、昨日影踏みを誘ってきた彼だけが他の子たちとは違う顔をしていた。僕を見つめながら。

 先生が段ボール箱から何かを取り出した。

「これはこのスイッチを押すと光ります」

 そう言ってスイッチを押すとそれは、先生の周囲を照らした。あまり範囲は広くない。

「今日はこれを使ってみんなで”光踏み”をしましょう」

 なるほど、影がない僕でも、光に照らされることはできる。

 影踏み少年が僕に話しかけてきた。

「なー、かげふみしよーぜー」

 きっと彼がこの遊びを考えてくれたのだろう。僕はちょっと泣きそうになりながら答えた。

「ありがとう、ぼく、かげがないからね」

 そのあと僕たちは新しい遊びを夢中になって楽しんだ。


 吸血鬼だから影踏みができないと思い込んでいた僕に新しい考え方を披露してみせた彼は、今も同じクラスの親友だ。

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