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僕は吸血鬼  作者: 毬森藻
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 僕が小学生になってしばらくたち、梅雨の時期になった。今までにも雨は何度か降っていたが、1日以上降り続けるのは入学して以来初めての事だ。

 その日も当然学校はある。テルテルの中がじっとりとすることは幼い僕にも簡単に予想する事ができた。夏の暑さも冬の寒さも嫌いじゃない。でもじとじとは嫌だ。

 僕は雨が嫌いになった。


 諦めて学校に行こうとしたところで、父さんが言った。

「今日は一日中雲がかかってるだろうからマントはきていかなくてもいいんじゃないか?なぁ、母さん」

「そうね、でも念のため頭巾くらいは持っていきなさい」

 その言葉を聞いた時、僕の心は外の天気とは対照的に晴れ渡っていった。

「わかったー!いってくるねー!」

「「いってらっしゃい」」

 マントを脱ぎ捨てた僕はまだ小ぶりな雨のなかを傘を片手に駆けていった。

 僕は雨が好きになった。


「おっはよー!」

 教室に到着して、気分良く挨拶をしてランドセルを自分の置き場に置いた僕はいつも通り友達の輪に入っていった。

「……」

 しかし僕のまわりの子、いやクラス全体が口を開けて呆然としていた。

「どうしたの?」

 僕はわけもわからず聞いてみると。

「きみ、だぁれ?」

 と、普段から仲のいい女の子が聞いてきた。訳の分からないまま僕は自分の名前を伝えた。すると彼女は困った顔をして、

「そのこは、もっと、くろいよ?」

 そこまで言われて、自分が普段と違う格好をしていることを自覚した。

「きょうはぼく、テルテルぼうずじゃないんだよ!あめだから!」

 テルテル坊主という言葉が出たからか、ただ単に信じてくれたのか、そう言ってからは、「なぁんだー」「びっくりしたぁ」などといつもの教室に戻っていた。

 そんな中、

「かっこいい、ね」

 唐突に、先ほどの女の子からそっとささやかれて少し顔が熱くなった。

 僕は雨が大好きになった。


 そのあと授業中に先生にあてられたとき、先生も少し言葉に詰まっていた。

 僕は先生にごめんねと思った。

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