夕暮れ 死ぬ 果実 砂の国 降臨
「夕暮れ」 4・5・25 16
坂道を下りていくと
君が待っている
暮れなずむ街は
全てオレンジ色で
僕は
ここで生まれ
ここへ還っていくのだと
全て知っていた
この街を
君と歩けたら
それだけで
僕は
生まれてきた意味がある
「死ぬ」 4・5・27 17
人が死ぬ
がんで
心筋梗塞で
脳卒中で
人が死ぬ
自動車にはねられ
飛行機が墜落し
船が沈み
人が死ぬ
放射能で
原爆で
水爆で
人が死ぬ
闇の中で
家の中で
学校で
人が死ぬ
戦争で
侵略で
弾圧で
人が死ぬ
病院で
街の中で
職場で
人が死ぬ
僕の心の中で
「果実」 4・10・31 18
土に毒がしみ込み
水に毒がまざり
空から毒が降り注ぎ
虫さえ食わぬ
果実は
美しく
僕はそれを食べ
長生きしている
「砂の国」 4・11・2 19
首が切り落とされ
心臓を打ち抜かれ
腹を切り裂かれ
炎に焼かれ
大地は枯れ
風は止まる
僕は
テレビを観ながら
美味しいごはんを食べ
あたたかい毛布にくるまれ
ぐっすり眠る
「降臨」 4・11・10 20
空から光が降りてきて
僕は自分のちっぽけさを思い
空の
高さが
拡がりが
深さが
僕を消し去る
そして
僕は
僕が存在していることに
涙するのだ