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白と黒 発作 時

「白と黒」


この世には白と黒しか存在しない

灰色は消えてしまった

君の好きな青もなくなった

赤なんて、とんでもない

白と黒しかありはしないんだ


曖昧なことは許されない

すべては規則で決まっているし

「適当だ」とか、「いい加減だ」なんて言葉を言ってはいけないよ


いいかい

物事をきっちりと区切ってしまうんだよ

マニュアルがあるだろう

それからコンピューターにまかせろ

もうどこにも、空き地はないんだ

月だって火星だって木星だって、所有者はいる


こんなことが分からない君は、おかしいよ

時間の外で暮らしているのかい

それとも、まだ、人間ってやつをやっているのかい

やれやれ

君は本当にわかちゃいないねぇ

君の好きな青なんて

何の役にも立たないじゃないか


「発作」


わざとビールを床に、こぼしてみる

それを

犬のようにはいつくばって舐める

舌は床のザラザラした感触を楽しみ

血を滴らせる

ほこりと砂と血と混ざったビールを飲む

ああ! まずい!


ステレオのスピーカーからは

ベートーヴェンのピアノトリオ

俺は今

そんな気分じゃないのに

ベートーヴェンは囁くように

耳から脳へ入ってくる


いったいいつまで生き続けるのだろう

今と過去は

プツンプツンと分断され

思い出なんかひとつもない

記憶なんか脳が勝手にでっちあげたもので

汚れた爪で頭をかきむしっても

何ひとつ出てこないじゃあないか!

スタンドの光は白々しく

部屋の蛍光灯は薄暗く

落ち着かないけど座っている


夜の闇の中、駆け出して

めくらめっぽう走ってしまえば

おそらく

長距離トラックにはねられて

血の糸を引きながら、宙を舞い

十数秒ほど痙攣して

死んでしまうに違いない

そのほうがキレイさっぱりするし

あしたのことを悩まなくてすむ


でも嫌々眠って朝おきれば

もちろん、そんなことは忘れている

俺はやっぱり、どうしようもなく

惰性で生きている生き物だ



「時」 8.1.20


星が流れると悲しみが生まれるのだろうか

日が昇ると喜びが湧くのだろうか

風が吹くと恋をするのだろうか


僕らは悲しみの子だ

傷つけあい、蔑みあい、罵りあい、憎みあい、殺しあう・・・・・・

誇りという言葉を失い

希望という言葉も失い

愛という言葉も失った


自然の美しさを感じることもなく

命の神秘にひれ伏すこともなく

僕らは生かされている・・・・・・


昨日が今日であってもなんの違和感もなく

明日を今日と取り替えても、僕らは気付きもしない


時の始めと終わりがあるとしても

僕らは恐れないのだろう


生と死がともにあることも忘れ

無機物に囲まれた世界で永遠に生きるのだろうか・・・・・・



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