おやすみ 夜の闇に 生還 街 歌
「おやすみ」 6・11・14 81
陽が沈む頃
思い荷物を背負い
とぼとぼと歩く
顔は青白く
うつろな視線は灰色の地面をさまよっている
ずーっとずーっと
疲れていたのだね
君の小さな肩には
その荷物は重すぎて
でも
毎日毎日運ばなければならない
口は半ば開いて
吐く息も少ない
身体はどこもかしこもこわばって
今にもバラバラになりそうなんだろう
ねえ
休んでいいよ
眠っていいよ
もうギリギリまで頑張ってきたのだから
あったかい毛布にくるまって
おやすみ
怖がることはないんだ
君を守ってくれる人はここにもいるし、あそこにもいる
ゆっくり休んでいいんだ
眠るのに飽きるほど眠ってもいいし
何かやりたくなるまで何もしなくていい
頭の中のもやもやを少しずつ引っ張り出すために
おしゃべりをするのもいい
夜中の3時になっても聞くことはできるし
朝ごはんのあとだって大丈夫
このお休みはいつまでかって?
それは君が決めていいんだよ
それにそんな思い荷物は
どこかに置いてきていいよ
本当だよ
ともかく
僕たちがここにいるから
休もうよ
「夜の闇に」 6・11・17 82
星が銀の光を落とす夜は
君にとって
救いになるのか
静かに迫る闇は君の友だち?
ラジオから流れる
古いジャズピアノ
さらに夜は深まる
時は確実に刻んでいる
恐れることはない
確かに時は進む
どれは正しいこと
闇があることで
ときに
僕らは語り始めることができる
歩くこともできる
胸の奥にためていた哀しみを
涙に変えることもできる
そして空を見上げることも
僕は一人ではないのだろう
おそらく
「生還」 6・12・9 83
君は
崖っぷちで踏ん張り続け
疲れ果ててしまったけれど
無事生還した
もうおびえることもないし
緊張することもないんだ
身体を癒すには眠ればいい
死の淵はそこらじゅうにあるし
破壊の弾丸はびゅんびゅん飛んでくる
タフでなければ生き延びることができないからといって
身体を鍛えればいいということでもない
嘘をつき続けることもできないし
笑って目をそらすことも危険だ
大人たちに知恵というものがあるのなら
死を見つめなければならない
醜く歪んだ世界を
ひとつひとつ解きほぐし
美しい世界へとつくりなおさなければならない
冷酷な氷の刃を溶かす
あたたかい風は
必ず吹くはずだ
君は今
おだやかな微笑を浮かべ
まっすぐに僕を見つめ
やわらかな心を届けている
「街」 6・12・12 84
いなくなる
1人ずつ
3人ずつ
5人ずつ
いなくなる
家々はずっと静かなままで
公園では風が落ち葉を舞い上げる
食堂はのれんを上げている
旅館は玄関を閉めている
酒屋にはビールがなく
役場はどこかへいってしまった
子どもたちは家に閉じこもり
女たちはつまらなそうにおしゃべりをしている
老人たちは息をひそめる
男たちはよその町で働いている
昔はお日様が照っていたそうだ
今は
いつもいつも
曇り空で・・・・・・
ときどき
大通りを風が吹きぬける
「歌」 6・12・16 85
愛することは無駄なのだろうか
信じることは幻?
許すことは不可能か
夜の帳が下りて
人は何をすればいい
僕らは何を記憶として持ち続け生きていくのだろう
星はめぐり
光は去り
僕らは何を胸に抱いて生き続けるのだろう
心は優しさを求めてはいけないのだろうか
心はぬくもりを求めてはいけないのだろうか
冷たい空気に息がつまる
血の涙は見えることはない
硬直した身体はどこへも行けない
それでも僕らは
歌を唄いたい
海を見たい
空を飛びたい
自由は真実だろう?
君を想うと悲しいし
あらゆるものに対し叫びたくなる
そして僕は自分の手を呪うのだ
この何もできない両手を
それでも君は
恥ずかしそうに
小さく笑ってくれるね