ラブレター 四季 終わりのとき 戦場 君の顔
「ラブレター」 6・10・10 76
真夜中
君は古ぼけたスタンドライトの明かりの中で
誰に手紙を書いているのだろう
木の机の上には一輪挿し
名も知らぬ野の花
赤と黄色のふかふかのセーターを着て
瞳にかかる前髪を気にもせず
ほおを赤くして
君は誰に手紙を書いているのだろう
「四季」 6・10・10 77
雪解けの風は冷たいけど
春を告げるにおいがすると君は言った
僕の左腕に右腕を絡ませ、はしゃいでいた
夏の夕暮れ
海はすでに静まり、流れ星が糸を引く
君は何も言わず、空を見上げていた
銀杏並木を歩く
青いブーツで落ち葉を蹴散らし気取っている
僕のためにマフラーを編んだよと言って
自分の首を暖めて笑っていた
凍える光を放ちながら星々が降り注ぐ夜
抱き合っても暖まることはないし
キスをしても唇は冷たい
君は冷え切った右手を僕のコートのポケットに入れて泣いていた
そう
僕はいつも君といた
「終わりのとき」 6・10・23 78
白い大地は地平線まで続いている
空を流れる雲は
時折、白い月を隠す
世界は
空と大地しかなく
僕らは、ただ見上げている
時はすでに止まってしまったかのように
世界は動かない
月の白い光は
悲しげに降り注ぎ
終末を予感させる
僕らは世界に
二人ぼっちで
どこにも行けず、たたずんでいる
白く黒い雲が
現れては去っていく
僕らは涙を流すこともできず
たたずんでいる
「戦場」 6・10・27 79
君と会う
とたんに胃がキリキリと痛み出し
頭が重くなる
すでに疲れてしまっている
僕は君を傷つけるつもりはないし
君も僕を傷つけるつもりはないだろう
しかし
すでに
お互い
心に鎧をつけ
恐れおののいている
ああ
会う人会う人
敵ばかりだ
僕のまわりにも
君のまわりにも
ナイフを持った奴ばかりだ
僕らは毎日
胸の内から血を流し続けて
のたうちながら生きている
こんなにもたくさんの血を流しているのに
よく死なないものだ
家でも
学校でも
会社でも
公園でも
この世のありとあらゆる場所は
戦場だろう?
ああ、肩の力を抜きたいなあ
何も考えず、君と話ができたらなあ
「君の顔」 6・11・14 80
僕の瞳は黒くて、何だかつまらない
君の瞳は茶色くて、いいなあ
僕の鼻は高いけど、いばっている
君の鼻は少しだけ低いけど、可愛い
僕の唇は食べるため話すためにあるみたい
君の唇はおいしそうな気がする
僕は頬がこけて神経質
君の頬は急に赤くなったりする
君の髪は・・・・・・