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夢 僕たちの休日 旅立ち 抱き合えばいい 記憶

「夢」 5・7・10                              46


そこへ行くと

意地悪な目をした女が

ヒステリックな声で俺に命令する

つまらないことを

役に立たないことを

ばかばかしいことを

やればやるほど仕事が増えることを


俺は目を閉じ

女の顔面に

矢のような右ストレートを叩き込んだ

小さな品のない鼻から

ミミズのような血が流れ

殺虫剤をかけられたゴキブリ」のように

意味もなく短い手足をバタつかせていた


俺は胃の中ほどから

笑いがこみ上げてきたが

唇をきつく閉じ

笑いを我慢する

すると背筋に快感が走り

全身が痙攣する


しばらくして

目を開けると

女が不思議そうな顔をして

俺を見ていた


「僕らの休日」 5・10・3                          47


今日は水曜日

僕らは3時限目の授業を抜け出して

どこか知らない街に行くことにした

初めてのデート

君はちょっとおしゃれをして

いつもよりセクシー

僕はボタンダウンにニットタイ

2人で並んで急行列車に座る

秋の陽射しは柔らかくて眩しくて

僕らは暖かくなる

「海」と君が小さく叫ぶ

「降りよう」と僕がきっぱり答える


誰もいない砂浜

名前も知らない海岸

夏の名残はひとつもなく

淋しさだけが漂っている

でも僕らはその淋しさが嬉しくて

まるで世界中で2人きりしか存在しないかのように感じる

そして、当然キスをする

君の柔らかくて素敵な香りのする体を抱きしめて

たくさんキスをする


今日のお弁当はスペシャルメニュー

君が夜明け前からつくり始めたスペシャルメニュー

潮の香りにミックスされて・・・

僕は口いっぱい頬張り、君は明るく笑う


「ねぇ、本当に今、死んでもいいよ」

変なたとえを君は言う

女の子はやっぱりロマンチスト?


白く薄い雲が流れる

僕らは語り合う

幼かった頃のことを

家族のことを

好きなミュージシャンのことを

学校の噂話のことを

恥ずかしそうに夢のことを

そして海と空のことを


気がつけばオレンジ色の光が君を照らし

僕らの休日は終わりつつある

列車を待つホームは無人で

僕らは無口だけど

手のぬくもりを感じている


紫色の車体が僕らを街まで運んでくれる

君は眠ったふりをして

頭を僕の肩にのせている


「旅立ち」 5・10・27                           48


旅に出よう

青い空の下

素晴らしい入道雲

緑のじゅうたんの先には

白い灯台

水平線はぼやけている

空よりも深い青が海


僕たちの旅は

果てしなく

行く先もわからない

でも君は

嬉しそうに笑っている


白い洗い立てのワンピース

日に焼けた顔に麦わら帽子

古ぼけた茶色のトランク

白いブレスレッド

少しおしゃれな靴も白


あたたかな南風に

君のやわらかな髪がなびく


強く激しい陽の光が

旅立ちの時を知らせている


「抱き合えばいい」 5・10・27                       49


抱き合えばいい

何かホッとするから

抱き合えばいい

何かわかりあえるから


あなたの肌のぬくもり

におい

吐息

あたたかい手のひら


何だか恥ずかしいけど

それでも

抱き合えばいい


好きなんだから


「記憶」 5・10・28                            50


時が刻まれて

僕たちが積み上げてきたものは何か

哀しみ

いとおしさ

あきらめ

祈り

にくしみ

微笑

愛?


僕たちがいる場所を確かめるために

封印された

記憶の箱を開けよう

忘れてはいけない

忘れてはいけない

そこに

確かにあるのだ


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