世界2 同胞 嘘1 イラク 少年たち
「世界2」 5・5・10 36
世界はごつごつしていなければならない
たとえば土
うっかりすると転んでしまうような地面
世界はたくさんの色がなければならない
たとえば初夏の山
燃え立つような幾千の緑
世界は街の中にもなければならない
たとえば人
美しい言葉と素敵な笑顔
世界は僕のまわりにもなければならない
たとえば
木の机と鉛筆と古いノート
世界は
現実として
ここにある
まぎれもなく
ここに
ある
「同胞」 5・5・14 37
世界とつながっているとしたら
僕は罪人だ
野蛮人だ
人殺しだ
罪のない子どもたちに
放射能を浴びせ
苦しみのうちに死なせている
汚れた大地は
半永久的に
よみがえることもない
どうして
黙っているのか
涙を流さずに
手を差し伸べずに
安穏と暮らしている
同じ惑星に住む
同胞たちの血と魂の叫びを
慟哭を
聞け!
「嘘1」 5・5・16 38
嘘をつく
平気で嘘をつく
君が傷つくことを知って
嘘をつく
テレビに映る人は
嘘がばれているのに
嘘をつく
何だか偉そうに話す人は
形式的に嘘をつく
新聞も嘘をつく
ラジオも嘘をつく
パソコンも嘘をつく
週刊誌も嘘をつく
教科書」も嘘をつく
子どもも嘘をつく
困ったような顔で嘘をつく
早口で嘘をつく
泣きながら嘘をつく
悪いと思いながら嘘をつく
大人も嘘をつく
ごまかそうとして嘘をつく
当たり前のように嘘をつく
そして
僕たちは
その嘘を
本当のことだと思い込む
「イラク」 5・5・20 39
世界はイラクにこそある
砂漠の国で
人は死ぬ
爆弾で人間は吹き飛ばされている
放射能で大地は
半永久的に汚され
子どもたちは遺伝子を狂わされている
そこでは
人は
殺されるのだ
西暦2005年
超大国の欲望の餌食となり、血は流される
僕らは
同じ空に向かって
祈りを捧げても
テロの黒煙は天に昇る
世界に住む一人として
僕は
罪を犯しているのだ
「少年たち」 5・5・23 40
少年たちよ
バスの停留所のベンチに座って
語り合っている
少年たちよ
何がそんなに楽しいのだろう?
少年たちよ
紫外線をもろともせずに
熱を持ったアスファルトの上を
黙々と走る
その眼差しはまっすぐ前を向いている
少年たちよ
薄暗いゲームセンターで
ハンドルを握り歓声を上げている
少年たちよ
赤く染まった頬は
興奮の証だ
少年たちよ
君たちは五月の若葉なのだ
暴力的なその青いオーラは
とどまることを知らない
それでいい
その青き光は
僕らの救いでもある