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不定期更新ですが頑張ります。よろしくお願い致します。
どうも、悪役令嬢エリザベータ・スコロホドフです。あ、悪役令嬢といっても設定です、設定。別に私は悪役令嬢になるつもりはありませんし。コイツ何言っているのって感じですよね。ちょっと長くなりますが、この世界のことについてお話します。
この世界は乙女ゲーム『誰にも渡さない』の中、だと考えてる。そのことについて気が付いたのは私が10歳の頃の話、ステファン・ジラーノフ様の婚約者候補に選ばれたと聞いた時に「何か聞いたことがある名前…」とうんうんと考えていたら、前世の記憶が流れ込んできた。そして鏡を見てみるとふわりと巻かれている銀髪、ややつり目の大きな目、そして10歳にも関わらず成長しているお胸…これはあのゲームの悪役令嬢だと確信した。前世の私はごく普通の女子高生。まぁ、オタクだったが。新作の乙女ゲームがでては気になるものをチェックしては買ってやり、イベントにも通い…という感じ。疑似恋愛を楽しむ、というより主人公と攻略対象の恋を応援する第三者目線でプレイしているというオタク。所謂、NL厨だ。
そんな私がプレイしたことがある『誰にも渡さない』という乙女ゲームだが、攻略対象は2人しかいない。1人目は王道の王子さまタイプの男子、ステファン・ジラーノフ公爵。ジラーノフ家の一男であり、金髪碧眼という見た目がなんとも王子様といった感じで、その性格もまさに王子様。そんな彼の婚約者は悪役令嬢であるエリザベータ・スコロホドフであるが、ステファン様は私のものといった態度のエリザベータにうんざりしている中、学園で主人公に出逢い一目惚れをする。関わる度に彼女の新しい一面を知り、更に惹かれあう。しかし、まぁそこに壁になってくる、というか邪魔をするのが悪役令嬢のエリザベータだ。婚約者であり、愛する人であるステファンがとられるのが嫌で嫌で仕方がない彼女は主人公に嫌がらせをする。まぁそれがきっかけで主人公を守るというイベントが色々発生して結果的に二人の仲は盛り上がってしまうのだけど。最終的には二人は結ばれてエリザベータは平民になるか、BADでは幽閉されるか。
もう1人はオリヴィエ・デルサルト。彼はエリザベータの従者であり、小さい頃にスコロホドフ家に拾われた経緯がある。黒髪に真っ黒な吸い込まれそうな瞳、どこか虚ろだがそんな所も魅力的に感じるぐらい顔が整っていた。そんな彼をエリザベータは気に入らなくいじめにいじめぬいた。彼がやることなすことの全てに文句をつけ、気づけば彼は誰も信用することがなくなっていたのだ。彼も学園で主人公と出逢う。最初は天真爛漫な彼女を見て恵まれた環境で育ったことを憎く思っていたのだが、ある日いつものことながらエリザベータにねちねち言われていたところを見られ、主人公はエリザベータに反論する。それをきっかけに少しずつお互いの距離が縮まっていき、結果的に結ばれる。その際エリザベータはやっぱり気に入らなく邪魔をするのだが、結局断罪されて平民になるか、BADではオリヴィエに殺されるか。
平民になるのは一向に構わない。前世では社会人ではないが、女子高生ながらアルバイトもしており働いてお金を稼ぐという経験はしている。しかし、幽閉と殺されるのはいけない。それに私はNL厨、邪魔をするなんて有り得ない!私はサポート役に回るのだ。主人公が攻略対象との関係に悩めば助言を囁き、二人を急接近させ私はいつの間にか陰に潜みその様子を少し楽しませてもらうだけだ。そのために私はまずステファンに断罪された時に幽閉されないようにと婚約者の座をお断りした。どうやったかというと簡単だ。お父様は私に甘い。結婚はお父様としか嫌!!という幼い私に言われたらもう即お断りをしていた。そのため接点は皆無だ。そしてオリヴィエ、彼には最初あまり近づかないようにしていたが家族が死んでしまったという経緯に私はそんな彼を放っておくことは出来なかった。まぁいじめにいじめぬいて人間不信になった彼なのだからいじめなければいいのだ。彼には何かあれば気遣い、彼の意思を尊重してきた。その結果あってか多分嫌われていないはずだ。まぁこんなことをせずともHAPPYENDに迎えばなんの問題もない話なのだけれども。
とにかく、これからの学園生活主人公とステファン、オリヴィエとのキャッキャウフフな学園生活を想像するだけで胸が踊る。
「…お嬢様、先程から何を百面相してらっしゃるんですか」
オリヴィエは私の制服のリボンを直しつつ、冷ややかな目で見る。
「百面相なんてしてません」
「浮かれているのが顔に出てます。…クラスが違うのですから私の知らないところでハメを外しすぎないで下さい」
そう、この学園は貴族と従者が同い年だとしてもクラスは必ず違うクラスに配属される。この学園の1番の目的は「自立」。今までお世話していた人と一緒ではそれが達成出来ないため絶対に離される。
「必ず休憩時間には参りますのでじっとしておいて下さいね」
「別に来る必要はないんですよ、オリヴィエもクラスで友人を作りたいでしょ?学園なんだし従者に徹しなくてもいいの」
「…私はお嬢様が他の方に迷惑をかけないのか心配なんです」
「失礼です!いくら社交界の経験がないからといって大丈夫だから!!」
「大丈夫ではありません」
「大丈夫!」
「…とにかく、こんな所で言い合って遅刻したら元も子もありません。行きましょう」
オリヴィエは私の反論をさらりと交わして私の手を握る。まぁ彼の言い分にも一理ある。早く学園に向かわなくては!!待ってて、薔薇色の学園生活!!