四、反出生主義無明バイアス:セリアの巻
生まれてなんてこなければよかった。
そう言われて初めて、セリアは自分が生まれたものなんだと意識した。
いつも、誰にも、なんだか挨拶みたいにそう言われた時期があって、セリアは素直に解決方法を考えたが、時間は巻き戻せないという答えしか出なかった。
幼かったセリアには、自ら死ぬという発想が、なかった。
いきることがあたりまえだとおもっていた。
(それは地獄だな、とパパは)
わらった。
と思うのと、蓮李が喧しい声で「できたできたできたできた!!」と鳴くのと、どこかが開く音と、セリアの微睡が吹っ飛ぶのは同時だった。
(蓮李、の言葉が、今、う??)
夢かな? と思った時、真っ暗な天蓋に、すっと細く、ケーキを切り分けるナイフみたいに、光が入る。
かみさま、ではないきみ仁が、天蓋を少し開けて、セリアとばっつら目が合う。
「ごめん。起こした?」
なんできみ仁が謝るんだろう、と思いながら、頷く。
「寝てていいから」
天蓋内はまた真っ暗になった。
遮光性の高いカーテンの向こうで、きみ仁が蓮李に何か言う音がする。
きみ仁が何を言ってるかはわからないのに、「朝に起きるのは、健康の始まりじゃない?」
機嫌のいい蓮李の音声の意味が、わかる。




