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章間(しょうあい)の二:いたらないみらい

砂漠の玉座にいた。

空も大地も灰色で、深い赤のドレスだけが鮮やかだった。

風は行き場をなくして惰性のように吹き、茫漠とした地面には、砂漠性の生き物特有の息遣いが感じられない。どうしてだろう。


(違う。砂じゃない。これ灰だ。生き物が、かわった姿だ)


そうだ。死者を燃やしたんだった、と、セリアは唐突に閃いた。

白かったドレスは、すっかり赤くなってしまった。


(彼らがパパを殺したから)


空には一片の雲もない。ただ縹緲(ひょうびょう)として、果てがない。終わりがない。際限がない。まるでセリアに巣食う、巣食って、すくめて、救わない、この哀しみみたいだ。


(雲は。涙に溶けてしまったんだ。涙。誰の。私の? それとも)


では、頭上に広がるこれは、空なのだろうか。


(空は死んだ。青い、晴れた南の空を閉じ込めたような瞳は)


それとも空に見えているそれは。


(見える? 見えている? 見えてるわけない。だって。ここには太陽がない。光がなければ、ひとはいつもそこにあると思ってる(もの)ですら、認識できない)


価値観の中で空と教え込まれただけで。頭上にあるそれは本当に空なのか。例えばそれが水面という事はないのだろうか。陸であると思っているだけで、そう見えているだけで。実際は水底にいるのではないの?

空に(きわ)がなく広がって見えるのは、海の底だからだったりはしないのだろうか。凪が訪れて、水がじっとしているだけで。

嗚咽だけが喉を揺らす。


(太陽がない。太陽がいない。いつも私の隣であたたかく、私のよるべでいてくれた、味方をしてくれていた、レンと、ユリと。リュウと。みんなは。私の太陽が)


天体がなければ、ひとは進むべき方向も自分が今どこにいるかもわからないのに。


(私達は、ばらばらになってしまった。あいつらがパパを殺したから)


涙が止まらない。何も見えない。太陽がないから。光がないから。


(ちがう。見える。見えている。灰が見えている。灰、これは。みんな生きているものだった)


死だけが見える。視覚ではなく、電気信号になって、意識に語りかける。

神話の世界でひとり、死を見続けて発狂した蛇の神のように。

思考が溶けていく。


(永遠にも等しい時間、蛇の神が流し続けた涙の)


ここは正しく、涙の海の底だ。

ふるえる声で名前を呼ぶ。

(呼んだら来てくれるはずのあなたの、流し続けた、血の)

「パパ。

パパ・きみひ……」

しゃくりあげる。


パパを殺したあいつらを根絶やしにしてやる。


つよく思えば、刺激された交感神経が五感を先鋭化する。


先鋭化した五感、その嗅覚を、食べられるものの匂いが刺激して、セリアは現在に目を覚ます。


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