はじめてのハナビ
お祭りとかリアルで行く機会ないなぁ・・・・・・
こんな娘と行けたら良いなぁ(泣)
余談ですが、この短編は実は結構前に書いた短編ものの続き的なものです!
良ければそちらも読んでいただけたらと(宣伝)
「なぁ、タマ」
「な~に~?」
「今度の休み、どっか出掛けるか?」
「ほんと!?」
「ようやく変化も安定してきたみたいだしな。その頑張りに対するごほうびというわけだ」
「わーい♪」
梅雨も終わり晴れの日が続く夏のとある日。
俺は狐娘のタマと外出しようと提案すると、彼女は思いの外嬉しかったらしくベッドの上をピョンピョン跳び跳ねた。
ついでに狐耳はピコピコ、尻尾もわっさわっさと喜びを全面に表している。
「そこまで嬉しいか?」
「もちろんだよっ!! 久しぶりの一緒のおでかけだもん」
「あー、だったか?」
「そうだよ。キミはおしごと忙しそうだったし、帰ってもつかれてすぐ寝ちゃうもん」
だから嬉しいんだ、と満面の笑みをこちらに向ける。
タマはまだ人化が不安定なこともあり、外にはなかなか出られない。
出ても人がいなくなってくる夜とかで基本日中は家の中だ。
「でもいいの? おしごとのお休みの日くらいはキミのために使ってもいいんだよ?」
そう言ってさっきとは一転して俺を気遣う不安そうな顔をする。
そんなタマを安心させるために、いつものように頭を優しく撫でてやる。
「いっちょ前に俺の心配なんざすんなって。この日のために数日分の休暇取ったんだからな」
「・・・・・・君がいいって言うんならいいや。それで? 何処につれていってくれるの?」
「そうだなぁ・・・・・・」
ポケットに入れていたスマホを取りだし、近場でなにかイベントがやっていないかと調べる。
今は夏。世間様では夏休みなるものに入っているのでことイベント系には事欠かないはずだ。
「おっ、あったあった」
「ほんと? どこどこ?」
「仕度しろ。こっからだとちょっと遠いからな」
俺はすっくと立ち上がりタマに外出用の服に着替えるように促した。
今の時間を調べると14時ほど。これなら丁度いいなと俺も外に出る準備を始めた。
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「ひとがいっぱいだねっ!!」
「だな。久々に来たけどなかなか盛況だな」
近場にある神社、そこで花火大会をやっているという情報を知った俺は早速会場に繰り出していた。
ちなみに俺は短パンにサンダルTシャツとかなりラフな格好。タマはフードつきのパーカーにロングスカート姿。
いくら人化が上手くなったとはいえ、いつ緩んで耳や尻尾が出るかわからないのでそのための用心というわけだ。
祭りは色々な屋台で賑わっており、タマはキョロキョロと忙しなく顔を左右に動かし目をキラキラと輝かせていた。
「凄いね。どれもオイシソ~♪」
「花火まで時間があるし、ちょっと寄っていくか。あと、全部は無理だが何個か買ってやるよ」
「わーい!」
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「君はもう少し自制心を覚えようね?」
「・・・・・・あい」
祭りから少し離れた林のなか、俺はしょんぼりとしょげているタマの手を取り登っていた。
花火会場は既に人混みが激しく、さすがにここは人目がつきすぎると思い違う場所から見ようと離れたのである。
「尻尾が出てきたときはどうするかと思ったよ」
「うぅ・・・・・・」
あのあと、祭りを見て回っていた俺たちだったのだが、今まで見たことがない光景にたまも興奮しっぱなしでついつい気が緩んでしまい、いつの間にか出ていた尻尾がわさわさとスカートのなかで動いていた。
幸い誰にも見られていなかったからよかったが(親子連れの子供がこっちを凝視していたのが気にかかるが)、そこで騒ぎにでもなったら面倒なことこの上なかっただろう。
「ま、終わったことはここまでだ。次こういうことがないようにな」
「うん。ところで、どこいくの? 花火、あっちだよ?」
「ん? もちょっと先だ」
はてなマークを浮かべるタマをよそに、俺は歩き続ける。
タマも不思議そうにはしているが、それ以降は黙って付いてきてくれる。
「着いたぞ。ここだ」
「うわぁ~♪ 良い景色だね!」
林の道を登り終えた俺たちは一部ぽっかり木々がない場所に出た。
そこは小高い丘のような場所であり、花火会場がよく見えた。
「知ってるやつしか知らないような場所でな。それも薄暗い林の中を歩かなきゃ行けないから近寄るやつも少ないんだ」
「そうなんだ~」
「ここからなら花火もよく見えるさ」
俺の言葉が終わると同時にドンッと響いた音が聞こえ、しばらくして花火が一発、大きく花開いた。
「うわぁ、うわぁ~♪」
宝石を散らばせたような色とりどりの花火を瞳に写し、タマは子供のようにはしゃいだ。
「ね、ね。綺麗だね! 音が大きいね!!」
「だな。久々に見たけどやっぱ花火は綺麗だな」
断続的に花開く夜光に俺も魅入った。
「ねぇ」
花火もフィナーレを迎えるのか、連続で打ち上げられているなか、不意にタマは俺の袖をクイクイと引っ張る。
「ん? なんだ?」
「えっとね。あの・・・・・・」
もじもじして言い淀んでいるタマ。そんな彼女を見て俺は頭に手をおき優しく撫でてやる。
タマはくすぐったそうに、気持ち良さそうに耳をピッコピッコと動かし、上目使いでこちらに顔を向ける。
「ありがとう。今日は外につれていってくれて」
「・・・・・・気にすんな。来年も一緒に見に行こうな」
「うんっ♪」
花火も終わり、静けさと風による草木の擦れる音が耳に触れる。
夏特有の生ぬるくも少しばかり心地よい場所で二人は手を繋ぎしばし空を、未だ二人には見えているであろう花火を眺めていた。
読んでいただけてありがとうございます。
コメント、評価していただけるとありがたいです✨
作者のこんな話が読みたい、みたいなリクがありましたらなるたけやってみようと思いますのでそちらもよろしくお願いしますm(__)m