9話(再び、ネコおじさん)
ネコおじさんとの出会いは、とても興味深いものだった。
颯爽と古びた自転車を乗りこなし、お寺に現れたネコおじさん。あのネコおじさんにまた会えないかと思いつつ、私はトパーズに会いに行く。
この日、トパーズは境内の中で人気者となっていた。数人の参拝者がトパーズを囲んで楽しそうな雰囲気だ。小さな子供がトパーズの傍らにしゃがみ込み「キャッキャッ」と喜んでいる。
「やっぱり、トパーズは癒しネコだねえ……」
と、遠目でトパーズを眺めながらベンチに腰掛ける。
5分ほどたつと自由の身になったトパーズが私の元へ伸びをしながら歩いてくる。
「よっ、人気者だねえ」そう言って、私は静かな広場へと向かう。日差しを避けるように日蔭のベンチにトパーズと一緒に座る。気持ちの良い風が広場を駆け抜けていく。
「静かだねえ……」
まるで時間が止まってしまったかのように穏やかな時間を過ごす。新緑の枝を鳥たちが飛び交う。その様子が気になるのか、トパーズが目で追う。
そして昼過ぎ、ふと参道に目をやれば、ネコおじさんがやってくるのが見えた。
「こんにちは」私はトパーズを膝の上に乗せたまま挨拶をする。ネコおじさんは自転車からおりると、こちらへやって来る。
「おい元気にしていたか」
ネコおじさんがトパーズの頭をポンポンとたたいた。
「おじさんは、毎日来ているんですか?」
私は聞きたかった質問をぶつける。
「家が近くだから、毎日だね。家にも10匹以上ネコがいるよ」
「えっ、そんなに?」
筋金入りのネコおじさんに私は驚きの声をあげる。
「前はよくここにネコを捨てていく人がいて、ネコエイズにかかったかわいそうなネコもいたもんだ」
ネコおじさんは、ずいぶん前からネコたちの様子を見守っているようだ。
ネコおじさんの家にいるネコたちも、ほとんどは保護したネコで、どんどん増えてしまったのだとか。私はネコおじさんが、地域のネコたちを見守っていることに少し安心した。