2話(再会)
あの猫はどうしているだろうか。ふと思い出したのは初めて出会ってから4か月ほどたった頃のことだ。
その間、猫とはまったく行き合うこともなく、私も深く気に留めることはなかった。そんなある日、私はとある神社の帰り道、寺へ立ち寄ってみることにした。
会えるだろうか。それとももうどこかへ行ってしまっただろうかと、逸る気持ちを抑えきれずに春の日差しが近づいていた寺へ急ぐ。
先に参拝を済ませ、あの猫を探す。暖かな日差しが気持ち良く、猫もきっとどこかにいるかもしれない。そう思いあちこち探し回る。
だが、どこを探してみても猫はいない。代わりに別の猫が足元へやってくる。「ごめん、あの子を探しているから」そう言って、その猫の頭をひと撫でして、またあの猫を探す。
どのくらい探し回っただろうか。疲れた体をベンチで休ませていると、どこからか「ニャーン」という声が聞こえる。
ふと茂みを見ると、草むらからあの猫がひょっこりと顔を出す。「そこにいたの!」私は喜び勇んで声をもらす。
猫は天気の良さと遊び相手が見つかった嬉しさからか、ゴロンゴロンと地べたで寝がえりを打っている。
「会えて良かった、本当に良かった……」と、私は安堵した気持ちで猫を撫でてやる。まるで恋人に再会でもしたかのように私の心は浮き立っていた。猫って、やっぱりいいなあ。そんな幸福感に包まれた。
その猫はとても人懐っこく、参道を通りかかる人々も足を止め、猫の写真を撮影していく。まるでアイドルのようだった。
私は時のたつのも忘れ、猫のそばでゆったり、まったりと時間を過ごした。ちょうど桜の花びらがほころび始めていた。
「そろそろ桜の花が咲くねえ」そう言って私は猫に話しかける。そうだ、今度来る時は一緒に花見でもしよう。そう思い立つとワクワクした気持ちが湧きあがる。
また会える。そんな確信がどこかにあった。首輪もしていない野良のようだったが『また会える』そんな予感が芽生えていた。
つづく