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海兵団へようこそ! 02


 世の中は十年あまりにわたる大不況の真っ只中である。

 慢性的に人員不足のうえに軍事予算の削減で水兵の給料はとにかく安い。どれぐらい安いかといえば、アルバイトをしながら生計を立てているよりも手取りの給料は安いのであるから、水兵のなり手はとにかく少ないのだ。


 けれども、衣食住については海軍が最低限を保証してくれる。


――だから、一見給料は安い様に感じられるけど、入隊中に計画的に貯金していれば、お金は貯まるよ。


 これがクラウディアをスカウトした金髪の青年将校が語った口説き文句だった。


 実際に新兵の間は外出許可もまともに出ないので、給料をもらったところで無駄遣いのしようがない。

 オシャレに気を使う余裕があるのならばお肌のために睡眠時間を確保した方が美容にはいいだろう。

 日々訓練に次ぐ訓練を送る生活なので部屋など寝床さえあればいいというのが現実ではある。


 確かに金は貯まるのだ。


――それに任期満了すれば、退職金だってもらえるよ。君が望めば、大学への推薦状も海軍が用意してくれる。海軍を出れば奨学金制度を適応されるから、クラウディアさんにとっても悪くない話だと思うんだ。


 イケメンのスカウトマンは夢を与えてくれた。いち度は大学の事を諦めていたけれど、退職金に奨学金制度、推薦状まで海軍が用意してくれるなら、栄養学を学ぶために大学に行きたいという夢をもういち度追いかけることが出来るのだ――


 そう思っていた時期がクラウディアにもありました。


 あくまでそれが夢物語でしかなかった事は、古びた庁舎にやって来た時から薄々は感じていたのだ。

 入営する前から逃亡を企んでいるカルラに、どういうわけか常にけんか腰のヴィルヘルミナ。

 集合場所に集まった水兵未満の少女たちは、大なり小なり問題を抱えていそうな顔つきをしていたから、クラウディアは不安で仕方がない。


 そしてこの言い知れぬ不安が決定的になったのは、勢いよく集合場所のドアが開け放たれた瞬間だった。


 ドカドカと詰襟軍服にスカート姿の女性がふたり連れで現れたかと思うと、部屋に集まっていた二〇数名あまりの水兵未満の少女たちを睥睨(へい げい)して言い放った。


「なんだぁ? 今年の新兵はイキが悪いやつしかいねえなおい! 気合が足りないんじゃねぇか!? 全員起立ッ」


 乱暴な物言いで、白詰襟を着た燃える様な赤髪の女性軍人が吠えた。

 背筋に鉄棒でも差し込まれた様に、居合わせた少女たちは跳ね起きると、赤髪軍人は満足したのか口元をニヤリとさせた。


「よしそれでいい。フランソワ、命令書を読んでくれ」

「了解、キルケちゃん」


 赤髪軍人に促されて、セミロングの白詰襟の女性が口を開く。

 これから三年間、任期満了まで海軍水兵として過ごす事。上官の命令は絶対であり、軍隊の規律を遵守する事。日々有事に備えて海軍魂を鍛えぬく事。


 最後に、これから新兵の担当はしばらくの間、目の前のふたりの女性が担当するらしい。

 部活のコーチや体育の顧問もこれほど迫力のある人間はいないだろうとクラウディアは思った。


「オレの名はキルケ兵曹だ。オレの名前を呼ぶ時は必ず兵曹殿と言う様に。こっちがフランソワ兵曹だ」


 これが軍人の迫力だ。クラウディアは、自分の事をオレと言う女性を生まれてはじめて目撃した。


「フランソワ兵曹よ~。みんなよろしくね~」


 垂れ目つり眉のフランソワ兵長は、口調はおっとりとしていて優しい頼れるお姉さんの様に見えなくは無い。けれど優しそうなのは外見だけで、その瞳は部屋にいる水兵未満の少女たちを観察し続けている。

 クラウディアはゴクリとつばを飲んだ。


「荷物は手引き書にあった通り最低限にしろ。私服は今着用しているものだけが持ち込むことを許される。本はひとり五冊まで、パソコンの持ち込みは許可されない。携帯電話等は入営後はオレに提出する様に。外出時のみ返却してやる。もしこれらを守らなかった場合、お前たちは外出許可を取り消されると同時に、このオレにぶちのめされる」

「何か質問はあるかしら~?」


 キルケ兵曹の言葉を引き取ってフランソワ兵曹が続けた。


「兵曹殿、コンドームは最低限の荷物に含まれますかっ!?」


 おちゃらけた様子で、あろうことかカルラが手をあげて質問を飛ばした。

 当然、キルケは射殺さんばかりの視線を向け、てカルラは縮こまった。


「手前ぇ海軍を舐めてるのか?」

「……べ、べつにちょっとした冗談じゃん」


 フランソワ兵曹が笑顔で説明をしてくれる。


「いい質問ねぇ。任期中に妊娠した女性水兵は不名誉除隊させられるわ~。そうなったら履歴書には必ずその事を記入されるし、就職が難しくなるから必ずスキンは着用する様に~」


 これにはクラウディアたち少女も顔を赤らめたが、まったく気にしない様子でキルケ兵曹たちが命令を下した。


「お前たちは本日は庁舎にて宿泊後、明日の入隊式をもって新兵二〇余名はキルン基地海兵団の指揮下に入る。明日からオレ様が生きている事を後悔するほどのシゴキを加えてやるから覚悟しろ!」




本日投稿分はここまでです!

今後ともよろしくお付き合いくださいー。

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