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note 貴族社会(2100.5)

 人間の脳波を使うものだから、実はヴェールの利用は他世界人にも可能だ。ただし、生まれたときから当たり前のように皮膚で馴染んできた彼らと違って、俺らには一種の不可知な部分があるといって否めない。

 では――利用できる度合いを、分かり易くランク付けしてみよう。単位はm(メートル)とする。


・一般的他世界人 ランク1m

 1m以内でζ人と何とか念話ができる。

 他世界人同士では無理。

 念話以外できない。


・ζ人(一般) ランク100m

 これは念力、透視能力の及ぶ範囲である。

 近いほど力は大きくなる。


・ζ人(貴族) & 各世界の“要素” ランク1km

 同じく念力、透視能力の及ぶ範囲。

 近いほど力は大きくなる。

 個人の資質、また爵位によって、バラつきがある。


 貴族以外では、各世界がダンジョンにもたらした要素群が、このランク(以下)に相当する。各要素はこのヴェールによって、有機的融合を果たした。


※ここで注記を挟む。いきなり“貴族”なる言葉をだして面食らわせてしまったと思うが、ζ日本は、王制、貴族制の世界なのであった。地位のあるものほど権力と責任があるとされ、ヴェールの力もそれに比例している。

 これまでエマが同族に対するメンツを非常に気にしていたのは、この社会構造に理由がある。身分に相応しくない恥晒しなまねはできなかったからだ。

 そう――その通り。

 ランク付けの最後は、エマだ。


・エマニュエル・キンセイ公爵家令嬢 ランク100km

 近しい王位継承権を有する。

 ダンジョンにおいて、βグループのアキラを精鋭中の“オンリー1”と表現するならば――

 人口勢力第2位8万グループのζ・エマは、大数の中の“ナンバー1”とでも称すべき存在。

 神秘のヴェールに包まれているかぎり、無敵、全能。

 彼女は、将棋(チェス)の駒で例えると、全マスにいきなり一手で急襲を仕掛けることができる、最強のハイパークイーンなのである。

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