2100.5.18 一日の終わり
さすがはトノ、というべきだろう。開口一番、こう言ってのけたのだから。
「率直に申し上げて、詩、なのでしょうか」
とたん、爆笑の渦が沸き起こったのだった。俺ですら笑っちまったんだから、もう仕様がない。
「――だから、ショウの作品はどれも、こんなだったんだねぇ」とは、これもまったく遠慮がないエマのお言葉。
「原点がこれだったし、好きっつうだけで、もともと作者に詩心がないんだから、もう仕方ねぇでないか」
「でも、夢とロマンがあって、これはこれでとても魅力的と思います!」これは優等生、ミラの言葉だ。うれしいこと言ってくれる!
「だろ? おかげで幼かった頃は、冒険物語『B先生とKくん』シリーズにのめり込んだからな。その結果が今の俺だ」
「興奮するでござる! もしも幻の超大陸・ムーが、その形のままで今も地球に沈んでいたら!」とヨコヅナ。
「だろ、だろ?! 俺はな、よく、ムー大陸の部分を掘り進められたら、本来の、地球の高熱と超高圧に晒されることなく、中心にたどり着けれるんじゃないかと、よく夢想するんだよ!」
「なにしろ超文明を誇ったそうだから、不思議な力学、頑丈な作りに守られて、渦巻く灼熱のマントルの中に原形をとどめているカモ。うーん、あり得そうな気がしてきた!」夢見るように言葉にしたのはアキラだった。
「今の地上から掘り進んだら、ムーの地下街に、横から到達することになるンすよね? うっひょー! そりゃ一体どんなだよ!」とマーチ。目が輝いています。もう俺はうれしくてだらしなく笑顔をこぼすのだ。「うんうん」さすがは俺のメンバーだ。
「世界中の国々は、地球という本棚に収められた本の背表紙なんだと考えると、面白いですね」
「言い得て妙! 本の内容が、その国の歴史、文化文明を表してるの!」
「“大きな手”というのも、意味が気になるところだわねェ」
「今じゃ、フツーにあり得そうで困るでござる!」「うんう――」
「それよりやっぱり、なんたってムーの“お宝”じゃん! 気になんの!」皆がいっせいに吹き出した。「オリハルコンでござるな?!」「それはアトランティスの方であろうに!」笑い声、笑い声――
というわけで。
俺は心の師匠に、大仰に感謝の念を送らせてもらったのだった。
時計もだいぶ回り、場の空気も落ち着いたところでお開きにした。皆でざっと片したあと、俺は本日さいごの指揮を執った。
「見張りを立てます。まず俺、ミコ。2時間後am1:00からマーチ、ミラ。am3:00からヨコヅナ、エマ。そして最後am5:00からトノと俺、とします。am7:00起床ね。いつもは3時間だけど、今回だけこれで付き合ってください。じゃ、pm11:00、就寝宣言です」
はーいはーいという声がそれぞれあがり、歓迎の宴は無事に終了したのであった。




