note ダンジョン (8)メリット。(あと、ウラシマ効果)
旅人による異空間行によって初めてもたらされる、良いと評価される効果が二つある。
一つは、現世に影響を与えるもの。
あと一つは、その旅人本人に影響を与えるものだ。
一つ目。
旅人がダンジョン内にて無断使用した設備の、“現世のコピー元”に、代価として希少金属が付与される。
お店で食料を調達すれば現世のその店に。宿に宿泊すれば現世のその宿に、相当の代価が支払われるのだ。
これは底に近づくにつれて価値が高いものとなる。
具体的に宿に泊まったとしよう。出発始めの頃は、現世のその宿の帳場に、いつの間にか“ブロンズコイン”が数枚おかれることになる。
コンビニで食料を漁ったら、現世のその店のレジに、いつの間にかコインが置かれることになる。
それが底に近づくにつれ、つまり旅の距離が長くなるにつれ、ご褒美のように枚数が増え、材質も銀、金、プラチナへと、価格が高いものに変じていくのであった。
なんとなく、落体のエネルギーを放出してるみたいではある。
これを理解した現世のホテル協会がこぞって旅人を応援、直線を是非わが方へと喧伝し始めたのは、まさに現金なことであったと言えよう。(非難できない。我が実家はこれのお陰で経営を持ち直すことができたのだから)
二つ目。
ずばり――
ダンジョンでは、老化が止まる。
別の言い方をすれば、肉体の成長が停止する。
ただし、怪我はするし病気にもかかる。腹もへる。特徴としては怪我のその治療に少し時間がかかるということか。異空間産の薬草や、治癒魔法の出番ということだろう。
参考までに言うと、受精はできる。が、成長は停止されているので、妊娠出産したければ速やかに現世に戻らねばならない。
ダンジョンに長く留まればその分、現世基準で相対的に若返るということで、ロビーはそれを目的としたセレブな方々で、絶えず賑わっていたのであった。
少し思い出話をしよう。
昔、マーチとミラが仲良くゾーンアウトしてたところを救助したときだ。俺の姿カタチを見て、マーチが、(そしてミラもだな、)気安い口をきいてきたんだ。(笑)
こっちもそんなの気にしなかったから、ずっとそのまま応対してたんだけど、ひょんなことで俺が“チーム・ニコリの俺”だと知って、目ェまん丸にしやがった。早く言ってくださいよと、軽く逆ギレされちまったよ。
ま、これから自分たちが関わろうという世界がどんな所か、一発で理解できただろうさ。
あらためて俺の顔と全身を見つめなおして、各々似合わない太い息はいてたな。
俺も人のこと言えん。て言うか、俺のケースの方がヒドい。そう、アネゴ、エマだよ(笑)。完全に逆転だもんな。
初対面のとき、実年齢は俺よっか上で、アダルトといっていいお年頃。なのに肉体は下で、当時13~4才だったもん。そのうえであのファッション!
しぐさ、表情、目線、声音の、一つひとつが心に刺激する。美女と美少女、桃と青林檎、そのダブルのエロスの芳香にくらくらにされて、もうね、犯罪を犯してしまうかと思った。
で、この話には続きがある。
マーチとミラのこと気に入ってさ、二人を仲間にしたいとエマに引き合わせたんさ。さぁ、その時の二人ったら――(笑)
だから、めでたくチームとなって、そのあとに二人の身分を知らされたとき、仕返しされたかと大いに驚かされた。これはまた別の話。




