note 旅人の標準装備
・パムホ
超小型携帯端末。旅人というか、現代人必須のアイテムだ。
今現在最高の、神クラスのテクノロジーの集合体だ。絶えず自己更新・構築を実行している。
基本の通信機能から記録、解析、報告、警告、処置、ライフマネジメント等々、およそ人が考えつくあらゆることを何でもこなしてくれる究極のインテリジェントギアである。
ケイビング届の自動提出もこれに任せっきり。(登山届みたいなもの。スタート地点と予想ゴール地点を自動的に強制登録する。ゾーンアウトの保険だ)
容積はほぼ無限。しかも使い勝手に応じて形・サイズはある程度変形できるし、一脚にもなるタッチペンも内蔵している。もちろん防水防蝕、発熱なし。自動汲電機能も標準装備。羽のように軽い傑作工芸品だ。
ζ以外の世界に広く浸透し、もう世界標準規格品となっている。(ζの事情については別ページにて)
俺の場合はズボンの左ポケットに収納。紛失防止のストラップ常用。
・イヤホンマイク
パムホの補助アイテム。当たり前のようにエーアイ搭載。通話と会話を判別するし、私的、公的、秘匿通話など、特に指示ワードを入れなくとも状況を判断して自動対応する。
俺の場合は左耳に装着。小型軽量。フィット感よく外れることはない。
・ショルダーハーネス&ヒップハーネス
体を吊ってくれる大切な用具。ベースギア。
装着パターンは二つあり、俺は着脱のしやすさから着衣の上から取り付けている。逆に、ファッションを気にする人(あるいは元からハダカのヒトとかは)、体に直付けし、金具のみ露出させている。比率で言えばこちらが多数派。現に、チームでは俺とミラだけが外付け派である。
・超小型軽量ケーブル
アンカー付きの、極細・絶縁ケーブル。ケイバーには必需品。これがないと事実上旅は無理だ。
ケーブル長は200m。耐荷重9.8kN(1ton)/1本。リールモーターの揚力9.8kN(1ton)/1個。ケーブル自体に安全センサーが内蔵されており、おかげで“もつれ”なし。今まで人体を巻き込んでの事故もない。
アンカーはリール部でON、OFF操作できる。
装着場所は腰部だが、アタッチメントの切り替えでケーブル取り出し方向を腹部側に変える事が可能。
・指ぬきグローブ
手のひら中央部に射出器があり、アンカーをセットして地面にタッチすれば、オートで打ち込み・固着ができた。
指ぬきの理由は、チームメンバー認定のための、素肌の接触にある。
・靴
底面に自動収納式の駆動ローラーが仕込まれていて、自走可能である。
エアノズルもあり、空気をジェット噴出させることにより体を浮かし、斜面たる路面を滑るように移動することができた。
エアジェットは空中での方向転換、着地時の衝撃緩和にも。
コントロールはエーアイによるオート。または半自動(パムホによる)。
種類、デザインは、好みに応じていろいろある。
・極薄パラグライダー
背中に装着。見た目はソレとわからないほど薄い。
使用時は、背中から脇の下に回された腕で抱きかかえられたような、そんな感じになる。窮屈感はそれほどない。(全然ないとは言ってない)
手動時のほか、緊急時にも(パムホと連動して)自動展開する。自動操縦もできた。
着地後は自動収納する親切設計。旅人御用達。超軽量コンパクト。耐荷重9.8kN(1ton)。
現代のメイン移動装置である。風に乗れば一気に長距離を航行できた。が、姿勢が少々キツイので、実際はそれほど飛べない。あくまで旅人向けの簡易飛行器である。
(モチロン全身ハーネス仕様の本格的な品物もあるが、嵩張り、行動の自由が束縛されるので旅人には人気がない)
キャノピーのチームデザインは、紅白の縦縞もように、黒字で『TEAM NIKORI』。残念ながら評判はかんばしくない(笑)。アイデア求む。
・エナジーブリット射出器
通称エナジーガン。エナガンとも。ベルトの右腰に装着。ブリットは各種ある。護身用であるが、ほとんどの場合、アンカーを遠くの的に射出するために使用する。
・振動ナイフ
これはもうハッキリ、護身専用だ。青白く光るブレードをかざすと、本気で汗が引っ込む。
でも、たまに料理にも使うか?(笑) 切れ味ばつぐん。研ぎ不要。
左腰に。
チームによっては、代わりに日本刀をぶっ込んだりしている。
人、信念、それぞれだな。
――というわけで。
以上の装備は、義務であります。装備の操作・整備検定に合格しなかったらスクールも卒業できません。
不十分なままケイビングしたら法律違反だし、万が一のときの保険支払いは拒否されます。注意ですね。
で、装備の続きですが、人によっては以下が追加されます。
・ロボットキャリアー
ドラム缶型の運搬装置。底部にエンジンがあり、浮いて自動で持ち主の後を追尾する。通常はタテ型だが緊急時は二つ連結してヨコ型として、人を運搬できた。
個人で通常1~3個所有。
大型火器を入れたり、食料、医療品、キャンプ用具を搭載したりしている。これにより旅人本人が身軽になれるのでたいへん便利。
・(番外参考として)自転車
マジだがほんの1.5年前までは、パラグライダーを差し置いて、これがメインの移動ギアだった。
さすがに今では出番がない……。
・ついでに衣服について。
例えば俺。姿カタチは昔とそんなに変化はないように見えるだろうが、細かいところにちょっとした技術が隠されている。
まず生地。素材がなにげに凄い。外傷に強く、かつ素肌に優しい。動作にフィット。しかも汚れは勝手に化学分解、排斥してくれる。望めば形状記憶もしてくれる。おかげでいつも小奇麗ってわけだ。
だから、δ世界人、ウチで言えばミラだけが着用している、“下着”という概念もない。
服飾の機能の中で一番ハデなのは、シャツのボタンだろう。“前立て”の部分を強く引くと、ボタンがひとりでにボタンホールを潜り抜けてくれるのだ。千切れることはない。ちょっとした便利機能だな。逆に、自動でボタンを嵌める機能はまだない。これが実現できたらノーベル賞ものだ、とはよく言われる冗談である。(笑)




