note ダンジョン (5)ロビー
……のだったが、ここで一旦、引き返してみようか?(笑)
ゲートインせず、スタート方向に回れ右(180°回転)してみよう。いや期待させて悪いが、そこは通常の世界に見えているはずだ。
αをベースとした、一見いままでと何ら変わるところがない世界の光景だ。
だがワープインしたからにはしっかりと異空間の中なのだ。現世とは様相の異なる世界。注意して見ると、ふだんは絶対に見ることができない光景が、あちこちに転がっていることに気付くだろう。ここでは、全日本の融合の狂い度合いが薄いのだ。
そのまま道を引き返し、渚(海岸線から50mエリア)に戻れば、至極かんたんに“ワープアウト”。こんどこそ本当の現世に帰還することができる。異空間は後腐れなく消滅する。
この、ゲート以前の平坦なエリアを――
特に、“ロビー”と呼称するのだった。
このエリアはまさに特別だからだ。
二人以上の旅人が、同時期に、隣接するほどの近距離に存在してた場合。
各人のゾーンが部分的に重なっていたときだ。
互いの位相が合い、空間が共同化される。
このとき、ゲートまでの距離(海~ゲート間)、ゲートの直径は、互いに干渉しないよう平均化され、常識的な数字にされる。共通の霧壁に、それぞれの半円穴が並ぶということだ。(ゲートのサイズが変わるだけで、マージンは不変なまま)
各ゲートの向こう側に、各々広大な日本が同時存在するってことになるが、これはもう、ゲートから先は位相が異なっている。それぞれのステージが、交わることのない、言わば平行世界同士なのだ。――などと、無理にでも納得するしかない。
で、空間の共同化がなんでスペシャルなのかというと、自分のゾーンを越えて、他者のゾーンに行けるからだった。
交流可能ということ。ゆえに、この領域は、ロビーと称されることになったのだ。
お察しのとおり、“全日本会議”が開かれるのもこの場所である。
この最大の利点は、他者とチームを組むことができる、ということだろう。
あらかじめ日時と場所を決め、ロビーを利用して落ち合う。そしてメンバー同士手をつないで一つのゲートをくぐれば、そのステージを団体で攻略できるようになるのだ。
知ってると思うが、チームのメリットは計り知れない。
仮にゾーンアウトしても、メンバーの一人でも最後までセーフだったら、全員帰還が許される。これは真実、大変に心強いことだろう。




