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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
81/82

level.80 あくのさばき が くだります。


   ――【悪代官サマの間】――



 バババーン! 

 いよいよ本家本元にございます。

 これは実際に効果音が上から流れてまいります。




 バババーン・いよぉー!




 ポン、と、古風なドラムロール。

 それと同時にジャンジャカ降ってくるのは、

 それはそれは美しい大量の桜吹雪にございます。



 細っこい腰に手を当てて、ナイス人型長身バディに扮する――

 じゃなくて、これが“マジ”で“本物”のッ!



 我らが〈新悪代官サマ〉が、

 平身低頭の姿勢でひれ伏す【迷いのマの森】支店を任されます、

 おりんちゃ――モーリング殿を、あの『即席マ(がん)』――ではなくて、

 こちらも本物の冷酷『超』無慈悲な『マ(がん)』で、

 まるでゴミのように緊急招集された彼女を遥かな高みより見下します。



「支店の査察を行った、当方が派遣した専属コンサルタントによると【迷いのマの森】支店は、削減されるべきムダが“驚くほど少ない”とのこと。【アンゾルゴンのア大灯台】支店と比べ、こちらはコンパクト経営だそうな。改めて言うことはない。下がってよろしい、モーリング」



 床にピタリと頭を付けたまま、モーリング殿は申されますな。



「なんと、ありがたいお言葉……しかし、決して見過ごすことのできない“重大なムダ”がひとつ、明確に存在するので申告いたします。で、ですがあ! そちらの専属コンサルタント殿の能力を疑問視する、といったことではないことを、まずイチバンに申し上げておきますがッ!」

「それを気にする必要はない。――なんだ、モーリング。そなたが見過ごせない“明確なムダ”とは?」



 するとモーリング――

 いえ、やはり彼女は、おりんちゃんです。

 おりんちゃん、チラリと私を見た後で〈新悪代官サマ〉に報告を始めます。



「それでは申し上げます。もっとも削減されるべき“大いなるムダ”は、私自身にあります」

「ほう。その真意は」



「もっとも削減されるべき大いなるムダは“私の心の迷い”です。これが存在したばかりに私は【迷いのマの森】支店の存続が危ぶまれるほどの、深刻な危機的状況を招きました。この責任は取らなければなりません。支店長の職を辞することを勝手ながらお許しください」


 おりんちゃん……。


「なるほど。確かに、その責任は取らなければならない。しかし、お前は自らが招いた危機的状況を、その裁量で見事解決した――と、この報告書には記載しておる。ポチ」

「ははっ」

「我は、なにより正確な情報を求めておる。そこのモノが口走った“心の迷い”――なるモノは、お前の目にどう映っていたのだ?」

「ははっ。恐れながら申し上げます、我らが〈新悪代官サマ〉」





「モーリング支店長が深刻な危機を呼び寄せた、その“心の迷い”なる珍妙なパラメータは“なにより得難いモノ”にございます」





「ポチ殿、もう私は決めたのだ! これ以上、余計な情けは掛けてくれるな。特に……絶対に“あなた”にだけは。私は……私は……ずっと凛としたまま、あなたの記憶に永遠に留めてほしいのだから」


「これが『強さ』です〈新悪代官サマ〉。『迷い』は必要な項目なのです。“次なる大きな一歩”を踏み出すために。今、新たな道を歩み始めた、この得難い貴重な存在を絶対に手放すべきではありません」


「ポチ殿……」


「なるほど。確かに、手放すには惜しい存在ではある。コスト削減にも徹底して取り組み、部下も順調に育っていると報告書には挙げられておる。――ポチ、それほど優秀な部下が育っているのなら、このモーリング以上の資質を持った逸材もおるのではないか?」

「ははーっ。すべては報告書に記載した通りにございますーッ」



 すると我らが〈新悪代官サマ〉、

 私が『OTAKU』でパチパチした紙の束をパララララッと素早くめくり、

 恐るべき速さで目を通していきます。


「なるほど。大体分かった。モーリング、苦しゅうない(おもて)を上げよ」

「はッ」

「この報告書によれば《猫男(どらのすけ)》という男型社員の活躍が、やけに目立っておるが、お前の後任を任せられる逸材であるか?」

「ああ《猫男》ですか。あのモノならば私の後を……私の後を……? いえ、あのモノはムリです。細かな気配りができない無神経なヤツですので。他のモノがよろしいかと」

「そうか。ならば、このイケメン《鳥人(ウィメン)》はどうじゃ」

「イケメン《鳥人》……もしや、()(げん)と申す男型社員でしょうか? 確かに将来性は感じますが、まだその器ではありませんね。危なっかしくて【迷いのマの森】支店を任せることは、今はできません。どうか他のモノをお当てください」


「ならば、このモノは?」

「いえ、このモノは」

「ならば、このモノはどうだ?」

「いえ、このモノも」

「ならば、コイツ」

「コイツは論外」

「じゃアイツは」

「よくありませんな。他のモノに任せた方がよろしいでしょう」


「……なるほど。よく分かった、誰がイチバンの適任かをな」




「沙汰を申し伝える」




 バババーン・いよぉー!



「お前の問題は、精神面にあるようだ。その改善のため、お前の心の中で起きた葛藤を包み隠さず抜粋し、赤裸々に綴った文書の更新を義務付ける」

「なんですかソレは……心の葛藤を、文書で……?」

「つまり『日記』ということだ。きちんと付けているか私がチェックする」

「心の葛藤を赤裸々に綴った『日記』……? そ、そそそそんなモノを、どどど、どうやって毎日お届けすればイイのですか! まさか《鳥人》に運ばせる――なんてことは“絶ッ対”にイヤです! だってだってぇ……誰かに見られでもしたら……イヤイヤイヤーッ! そんなの恥ずかし過ぎて、おりん耐えられなーい!」



 きゅん。やっぱり、カワイイ。



「ならば電子メールで送信しろ。作成の方法は、そこの犬にでも聞け。良いなポチ、手取り足取り丁寧に教えてやるのだ。キーボード入力は覚えておいてソンはない。ついでに表計算ソフトの使用方法も覚えれば、業務効率が飛躍的にアップする」

「そこの(チラリ)犬に(チラリ)手取り(チラチラ)足取り……そんなの(ジロリッ!)イヤイヤイヤ~~ン!」

「よいな、モーリング」

「へ? は、ははーーーーーーっ」



 ポン。





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