level.79 “きーぱーそん” が あらわれた!!
「わ、我は。一体どうしたというのだ」
「大丈夫でしたか《???(巨大粘液)》、意識はありますか? もう終わりましたぞ」
「終わった? なにが終わったのだ?」
「……ポチ殿、部下の失態は私の失態。《???》殿、本当に……ホントにホントに申しワケないッ!」
深々と頭を下げる、おりんちゃん。そしてグリグリグリと、
まったく容赦のない謝罪を強制される陽幻殿。
さっそく扱いが過酷ですな。イケメンが台無し。
「我が、どうかしたのか?」
「いやいや。《???》は記憶にないようなので、そのくらいで許してあげましょうか。このたびの『怒涛の連続☆バトル・イベント』で倒れたモノたちも、『ふっかーーーつ!』させておきました。すべて水に流してこれでリセット――いえ、リ・スタートです」
「ありがとう。ポチ殿」
と、最強エスケープ機能をオフにして、
いきなり出現する地味なウチのねこ娘。
「ハイ終わりー、終わりー! これにて、ハッピーエンドでコンプリート! さあポチサマ、皆で打ち上げしよう。もちろんオネエサマもねッ! どこかイイお店知ってますか?」
「そういえば《犬女》たちが話していた。最近できた【植物バー】とやらが、とってもシャレているそうな。じゃあ皆で(チラリ)、楽しくおしゃべりして(チラチラ)、大いに盛り上がろう(ジロリッ)ではないか」
「きっと《猫男》も喜びますぞ。コンパニオンとして《山姥》をたくさん呼びましょう。今回は《猫男》が大活躍でしたからね。えっへん。さすが、気の利く私。親友思いですなあ」
「ええっ(まさかポチ殿)!!!! そ、そうか《山姥》を《山姥》ねえ……それも(ソッチ系?)変わった趣向(年上好み?)で面白いかもしれん。ハハハ(えーっ、だったらどうしよう…)」
「さっそく予約取ってきまーす、もちろん第二秘書の《リトル・ウィッチ》がね! ホホホ。今回は出番少なかったからな、うん。こういうところで点数をコッソリ稼いでおこう」
「こ、ここが【支店長の間】か……? ドキドキ。いきなりビック・ボスが出てきたら、どうするんだっけ? まず右手に持つのは《黒鋼の剣》だろ、そして左手にはお揃いの《黒鋼の盾》、そしてそして、鎧はやっぱり黒鋼の……でも人生は、行き当たりバッタリだ! なるようになる、突撃あるのみッ! 頼もォーう、頼もう。あのぉー、誰か居ませんかあ!」
ズッ(こける私)。
このボケも久しぶり。ああスッキリ。ようやく気兼ねなくコケれます。
「ででで、出たァァァ! いきなりビック・ボスゥ!」
「そりゃ居ますよ。そもそも急に出たのはソッチでしょうが」
「そ、そうだな! じゃあ、とりあえず――こ、こんばんは」
ズッ(こける私と地味なウチのねこ娘)。
「ねえポチサマ。アイツって……」
ハイそうです。エース候補生(?)の〈ニンゲン〉ですな。
忘れたころにチョクチョク参上する、
この物語の“キーパーソン”にございます。
「ほう。今度の〈ニンゲン〉は礼儀正しいヤツだな。うん、気に入ったぞ。ボスバトルの前に、お前の名を聞こうか」
「あのォ、おりんちゃん。その若者は、おりんちゃんの“お相手”ですぞ」
「ん? なんだそれは? そんなの私は知らないぞ。“お相手”とは、ポチ殿なんのことだ?」
まさか私のニュースキル『リセット・S』は、
記憶も完全リセットするのでしょうか……?
「おりん様ァァァ、この大イベントを完全コンプリートしたのですか! さすが我らのプリンセスゥ! おう相棒、やっぱりお前は俺の相棒だ。心の底から、ありがとうを言わせてくれい」
おお親友。復活した《猫男》が合流しました。
容姿もすっかりデフォルトに戻っています。
「くそう敵の増援か。なんだこの、ねこのキグルミっぽい変なヤツ」
「まだ〈ニンゲン〉の生き残りが? おお、お前は……あの『花婿』殿ではないか。だが、おりん様はやらんぞ。一億万五千年後の『俺の嫁』だからな」
「な、なにが嫁(チラリ)だ! お前の嫁には(チラチラ)死んでもならん!」
「しまった、つい口走ってしまった……ウソですウソ。ジョークです。でも、おりん様の記憶力なら心配ナシ。胸元に常に忍ばせてある『絶対に見るな×私の極秘帳』は、おりん様の記憶力の弱さに端を発している、生活補助アイテムなのだ」
なるほど。しかし親友、おりんちゃんが顔を真っ赤にさせながら、
胸元から『絶対に見るな×私の極秘帳』を取り出してメモしておりますぞ。
これであなたもムダリスト。おお恐い。
「そんなことより、そこの〈ニンゲン〉を放置してよろしいのか? もっとも重要なことを見落としておる、気がする」
「き、君は……まさか……!」
あの若者、ナマイキな口を利く《???》を目撃した途端にフリーズ!
しかし、しかァし! 『静』から『動』へと移る反応速度は
尋常ではありません。
《猫男》を追い越して、私と《リトル・ウィッチ》の間をすり抜けて、
おりんちゃんを恐れ多くもガンムシすると、
あの若者はイチバン奥の《???》めがけ、イッ、チョク、セェーーン!
「また会えるなんて夢にも思わなかった。これは現実なのか? もしかすると、オイラが瞳を閉じた途端に幻のように君は、かき消えてしまうんじゃないか? そんなのは、もうイヤだ。君に会うためにオイラは、ここまで来たのかもしれない。いやそうだ、きっとそうなんだ!」
よく動く口ですな。相変わらず達者です。
「お取込み中のところ水を差すようですが、レベルの低いあなたが【支店長の間】まで辿り着けたのは、偶然に『超』偶然が重なった結果なのですぞ。決してお忘れにならないように」
「うるさい、ちょっと黙ってて。今は二人きりにしてほしい」
な。
な……ななな。
なあんてナマイキな小僧なんだ! 装備だけ立派にしおってからに。
ソレやれッ、誰でもイイからやっておしまい!
身ぐるみ剥がして【宿屋】に放りこんでやるのです!
「そこの〈ニンゲン〉、まだ名前を聞いてないぞ。今は気分がイイから特別にメモしてやろう。ほら、この私が記憶してやる(ノートに)と言っているのだ。光栄に思え」
「ん? なんだ、お姉さん。お姉さんは綺麗だけど、僕の好みじゃないな。連絡先はまた今度」
「えっ」
おりんちゃん、フリーズ! まさかまさかの思考停止中であります!
たぶん一度も経験したことがない、“計り知れない甚大なショック”を
受けているのではないでしょうか?
ムムムッ。ますます許すまじ、あのナマイキな小僧。
――ええい、デアエデアエ!
「……な、なんだお前たち、邪魔すると許さないぞ。大勢で寄ってたかって、このオイラをハメようとしているのか? でも愛する君のために、オイラは自分の命を投げ打って」
恋は盲目と言います。
周囲が見えない若者は、やはり行き当たりバッタリしました。
ちゃんちゃん。お後がよろしいようで(なんて終わり方だ)。




