level.77 “びっくぼす☆ばとる” の はじまり と おわり。
「おりんちゃーーん!」
「その声は、ポチ殿か? そうかよかった……無事だったのだな」
私が到着した時には、このエピソードの最終戦が
既に始まっておりました。使命から解放されて、
後ろで楽しく遊ぶカワイイ子豚ちゃんの相方(は、サクッと向こうで倒れております)ではなくて、許されざるモノ――
陽幻殿との、『超』ビックボス☆バトルでございます。
「これほど力の差があるのか、おりん様。設定されたステータスの上限値を取り去った、ルールの外に身を置く私と互角とは……つくづく、あなたの強さには呆れる。さらにクラスチェーーーンジすれば、もう一段階能力が増すのでしょうな。なんとも羨ましい。あなたと私の間には“決して越えられない遥かなる巨壁”が存在する――この覆せない事実が、私はとても憎らしい」
「くだらぬ。越えられない壁など存在しない。それにお前には、立派な翼があるだろう。どんな障害もひとっ飛びだ」
「綺麗事です、その理屈ッ」
ぶつけております。陽幻殿が、ぶつけておりますな。
「あなたは、いつもそうだ! 耳触りのイイ言葉を好んで使う! しかしそれでは……それではダメなのです……私たちは、あなたのように強くない。だから欲しくなる! あなたのように強く、誰より美しくありたいのに! あなたが居なければ、こんな感情など生まれるはずもなかった!」
「ならば、なれ。ステータスの上限を決めるのは、お前自身だ」
「だから私は、あなたの前に居るのです! ――覚悟しろ、モーリングッ!」
まるでその様子は、あの時の若者のように。
「あなたに結局は誰も付いてこない。付いていけない、理解ができない、だから心の底から従えないッ! 今だって、あなたは“独り”で私の元へ来た、あなたのとなりを歩けるモノは、もはや誰も居ないんだ!」
「私の後を追わずともよい。持って生まれた崇高なる信念に、痛いくらいに突き動かされて、我らは世界に在るべきだ。この無茶苦茶なイベントで、そんな簡単なことに気付かされた」
「誰かを動かすのではなく、自ら動くのだ。だから陽幻、我らは決して、操り人形などではないぞ」
「そんな言葉、もう聞き飽きた!」
決着の時が訪れます。
陽幻殿が、おりんちゃんの前で崩れ落ちました。
「なぜ……そんなにお強いのか……最後にそれだけ、お聞かせ願えませんか……?」
「ポチ殿。あなたに預けた『幻の聖なる油アゲ』を、そこの青色の炎にくべてくれないか」
え。
「な、なんと……! 今、なんと申されたのか……?」
「だからギトギトしたソレは、私に必要ないと言っている」
必要、ない?
「あ、あなたは、さらに強くなれるというのに、そのチャンスを簡単に捨て去ってしまうのですか!」
「いらぬ」
コレが……必要ない?
ということは、ムダ?
会社にとって、ムダは削減されるべき絶対悪。
――ええーっ!
「いやいやいや、ダメダメッ! メッです、メッ! 考え直していただけませんか? だってコレ、おりんちゃん! あなたがもう一段階強くなるために必要な、コレは『超』貴重なクラスチェーーンジ・アイテムでしょうが」
「何度も言わせないでほしい。その油っぽい『物体X』は、サッサと燃やしてくれ」
焼いてほしいと無茶な注文を受けるとは思いませんでした。
「焼きオアゲが私は好き」とか、
そういう楽しいジョークではありませんよね? マジすか。
じゃあ……。
その……ご指示通りアッサリと、ポイッとな。
おお! 炎上しております、やはり大炎上しておりますぞッ!
後悔しても過ぎし時は戻りません。
さらばオアゲ。幻と消えるがよい。
「見せてやろう陽幻。そのままでも強くなれることを。だから、まだイクことは許さん」
「この私を……お許しになるのですか……? 私は数えきれない過ちを犯しました……おめおめと生き恥を晒すなど、出来そうにありません」
「お前はルールの外に身を置いたのではないのか? 何度も私の前で宣言しただろう。都合よく使い分けるな。――いいか、“お前”は“私のモノ”。徹底的に、ボロボロに擦り切れるまでコキ使ってやる。お前の権利など完全ムシだ。まるでゴミのように見てやるぞ」
「あなたには、やはり敵いませんな」
まさか、これほどとは。
モーリング支店長――ポチ、あなたに感服いたしました!
「勘違いするな陽幻。私は、ムダをなにより嫌うだけだ。それでは“次のモノ”、入れッ」
まだあった……『次へ』ボタンを叩け叩け!




