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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
75/82

level.74 【してんちょうの ま】 に あの“ひと”が…?



 バババーン!

 いよぉー!


 ぽん。


「この古風なドラムロール……あ、あなたサマは、まさか“本物”……?」


 座り心地のよさそうな、

 肉厚の支店長専用チェアに偉そうに腰かけていたのは、

 やはり〈マのモノ〉イチ偉い“このお方”。




「〈新悪代官サマ〉」




 ……出ました得意の『超』展開。

 ざっくり見積もったところ、サクッと終わりそうもありません。

 この後のスケジュールはビッチビチ。

 頭の中は真っ白でございます。


「控えろ。頭が高い」


 どこからか、男型の声が流れてまいります。


「この声は……? おりんちゃん、立ってください。アレは《???(巨大粘液)》ですぞ」

「し、しかし、本社でお見かけしたままの、忘れもしない“あのお姿”は〈新悪代官サマ〉だ!」

「声がゼンゼン違うでしょ。あのモノは本物ではありません。――出てきなさい! 誰ですか、こんな悪ふざけをするのは! はやく姿を見せなさいッ」



 【支店長の間】に高らかに響く笑い声。

 どうやら支店長専用チェアの後ろから、それは発せられている模様。


「ククッ、よく出来ているでしょう? 先ほど流した、間に合わせの効果音と、そして物言わぬ、この本物ソックリな見た目の操り人形も。どちらも拙いニセモノです」


「なんと恐れ多いことを」


 蛍光灯に照らされて、巨大な両翼が虹色に輝きます。


陽幻(ひげん)


 その許されざるモノは、

 大空の征服者――《鳥人(ウィメン)》でございます。


「さすが、おりん様。すべてのモノらを蹴散らして、よくぞ帰還されました。その圧倒的な実力に改めて驚かされます。これは本心です。あなたはどうして、傷ひとつ負っていない」

「条件はお前と同じだ。だが、私の方が有利かもしれん。お前の弟は、ちょうどいい準備運動になったぞ。あっさり片が付いて拍子抜けしたが」

「そうですか。やはり弟は、その器ではなかった」


「……動じないのか。その性根、吐き気がする」

「“そういう存在”でしょう、我らは? 心を動かす必要がない。それは明らかな“ムダ”。おりん様、どうして我らは、これほど感傷的になってしまったのでしょうか? どうしてこれほど〈ニンゲン〉に近づいてしまったのでしょうか? ただただ、“倒されるだけの存在”なのに」


「なにを言ってる。我々が“倒されるだけの存在”……? 意味が不明だ」


「あなたも、本当は気付いているのでしょう? 我らに与えられた『役割』という、決して覆せない“設定”を。その中に居る限り、いつまで経っても私たちは操り人形だ。このニセモノの、出来損ないの〈新悪代官サマ〉のようにねッ!」



 陽幻殿は、支店長専用チェアに深く腰かける

 《???》の肩に手を掛け、どん、と乱暴に突き上げます。

 まるで糸の切れた……人形のように崩れ落ちた《???》は、

 抵抗することもなく、だらんと床に寝そべりました。



「私は、あなたとは違う。ルールの外に身を置く――そう決めた。出でよ、ヴェロン支店長より遣わされた〈魔物〉よ! 今こそ、その掟破りの実力を示すのだ!」



 かつてない『マガマガしい絶望のオーラ』を感じます。

 これほど心が高揚するのは、本当に久しぶり。

 本社の心臓部である【サルトン博士の実験室】並みのマガマガしさですな。




 『ダークなホール』が、だらんと崩れ落ちる《???》の真ん前に

 ふたつ出現いたします。





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