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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
68/82

level.67 “かこーしゅう” が あらわれた!!

「《猫男(どらのすけ)》、指揮権をお前に預ける。頃合いを見計らって、一気に片を付けろ」

「分かり申した。ご無理は決してなさらぬよう」

「無理を押し通すが、私の生き様である」


「……さすがでございます。遂にご自分の道を、おりん様は見つけられたのですな。それだけで、この無茶苦茶なイベントも振り回される価値があったというモノ。ならばそのお背中、我らが全力で後押しいたします。存分に我が道をお進みください」



 《猫男(どらのすけ)》が、託します。



「あなたは我らの希望なのですぞ」



 見事な刺繍の施された金色の衣装を身に纏い、戦闘とは無縁に思える

 無垢な美少女が、

 たったひとりきりで、

 敵意をむき出す大集団に向かって猛進します。


「私の前に、もう誰も」


 あなたを止めるモノは、もう誰も。





「――立つなァァァ!」




 だから、そのまま真っ直ぐにお進みなさい。




「たったひとりきりで、我らのすべてを潰すおつもりか。――面白い。おりん様に攻撃を集中、この地で確実に打ち取る! 全軍突撃だ!」



 戦場を駆ける閃光は、誰をも寄せ付けないほど峻烈であり、

 それゆえに恐ろしく、しかし、とても美しく思えました。



 遥か上空より放出される、五体の《鳥人(ウィメン)》による逃げ場のない猛火を、

 おりんちゃんは造作もなく掻い潜り、

 その後ろで前進を始めた妖怪大軍団に迫ります。



「お、お……おりん……おりん様だ……こ、コッチに来たぞーーーー!」

「どうする! 本当に、これでいいのか?」

「今さらなにを! 『狐一族』の支配を脱却しなくては未来がないッ」

「そうだ。そして陽幻(ひげん)様が先頭に立ち、【迷いのマの森】支店をより良い方向へ導いていく。その第一歩として同族の我らが先陣を切る。これほど名誉なことはない」


「しかし、おりん様を敵に回すということは、まったく別の問題に」

「ハラを括れッ、来るぞ!」



 鬼気迫る彼女の圧倒的な姿が近づくにつれ、

 現場はまるでハチの巣を突いたような大変な騒ぎ――

 収拾のつかない緊急事態となっておりました。



 集団に『恐慌』が伝染します。

 圧倒的な火力を誇る彼らとて、このような状態では通常の半分の力量さえ

 発揮することができません。




「なんてザマだ。兄者からお預かりした貴重な戦力を、このように一方的に消費するとは思いもしなかった……《鳥人》部隊、フォーメーションを変える。もっと地上に近づき、我らだけで、おりん様を掃討するつもりで掛かる。他の戦力は当てにするな」









 おりんちゃんの鬼神のような奮闘ぶりを遠くで見守る“こちら”では、

 あの妖怪大軍団を一網打尽にする機会を静かにうかがっております。


「構えい」


 本隊の指揮を執る《猫男(どらのすけ)》が威風堂々と命じます。

 〈ニンゲン〉の姿をした『狐一族』の若衆、そしてお福たちが、

 号令を合図に一斉に弓を取り、洗練された動作で矢をつがえました。



「チャンスは、たったの一度きりぞ。我らが足を引っ張るワケにはいかん」



 嵐の前の静けさが、感覚をざわつかせます。

 《猫男》も専用の大弓を手に、これもまた先端に巨大な矢じりが付いた

 専用の大矢をつがえ、グイグイグイと後ろに力強く引きます。




 否が応にも高まってくる、息詰まるような緊迫感……。



「放てい!」


 大気の裂ける鋭い音が、あちこちでこだまします。

 各々の限界いっぱいまで引かれ、

 蓄えられていたエネルギーがそれぞれの思いを乗せ、何倍にも相乗して、

 はねっ返ります。



 その瞬間――戦場が呼吸を止めました。

 異変に気付いた彼らは、一様に空を眺めます。



 時が静止しておりました。

 まるで示し合わせたように双方にとって奇妙な“間”が生まれます。


「散れッ」



 いち早く察知した五体の《鳥人》がサッと翼を翻すも、

 罠に掛ける網のように放たれた大粒の矢の雨は彼らを決して逃しません。



「お前ら……うっ!」



 夜幻(やげん)殿が気付かれた時には、なんとあの巨大な矢じりが、

 深々とその胸を貫いておりました。





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