level.64 “びくとりー ろーど” が あらわれた!!
「おりん様、ご無事でしたか!」
脇目も振らずスタコラ逃げる我々を、
抜き身の巨剣を担ぐキンニク大男が迎えます。
「戦況はどうだ?」
「このままお進みください。退路は確保しております」
「――よし。皆のモノ、ここより先は〈ニンゲン〉どもの居住区。しゃんと背筋を伸ばして、堂々とまいろうではないか。これがイベントのグランドフィナーレだ、ビシッと決めるぞ」
さすが、おりんちゃん。
この“戦略的撤退”は我らの敗北を示すのか――
否ッ! であります!
終わりよければすべて良し。ちょっとくらいのハプニングは
大目に見てもらえますぞ。
「よくやってくれたな《猫男》。さすがの手並み。腕は落ちておらんようだ」
「それが……私ではなく、お稚児部隊とお福部隊がやってくれました」
「なに? お稚児とお福が?」
おお。
あちこちから黄色い歓声と野太い掛け声が、
うるさいくらいに我らを讃えます。いつの間にか沿道は村人・Aや、
村人・BやらCの、危険度は限りなく低そうな〈ニンゲン〉どもで
溢れかえっておりました。
「おお。ようやくお出でになられた」
「あれが『狐の花嫁』様……なんという美しさ……やっぱり、俺にもお守りをおくれッ!」
「もちろんでございます。どちらの毛にいたしましょうか? アッチもソッチもございます」
「本当に“あの美少女”の……その……抜け毛なのか? はあはあ。ソッチの毛は、間違いなく本物だろうなあ!」
「そ、それはもちろんでございます。でもDNA鑑定はしないでください。そんなことをしたら、ありがたい幸福が逃げていきますよ。ああッ、もったいない!」
「キャアアア『狐の花嫁』様よォォォ! こっち向いてェ! ああクラリ。あの美は犯罪だわ……」
なんですか、このカオスは。
すると、どこからか集まってくる子供たち。ようやく“お稚児部隊”が
合流。おりんちゃんの周囲で、楽しそうに駆け回る子供たち。
なんという、ここは天国。
「ひゃは」
「よしよし。あとで、たっぷり遊んでやる。今は、メッだぞメッ」
『ダ』抜きですな。ダメッ、でございます。
なぜならここは、まだアウェーの地。
ホームに帰るまでが『狐の花嫁』イベントでござい。
「待て待てェ! そこの妖しい集団、止まれェ!」




