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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
62/82

level.61 “みんな の よめ” → やっぱ “わたし の よめ”

「――皆のモノ、古き契約は更新された。もはやこの地に用はない。戦略的撤退を開始する!」



 偉大な指揮官の帰還によって、

 戦意を失いかけていた『狐一族』の若衆の瞳に力強い意志が宿ります。

 すべてのパラメータが一時的に急上昇↑↑↑

 さらに『❤』表示が漏れなく追記!

 


 なるほど。

 愛の力で皆をアゲアゲにするワケですな。


 これが世界を救うラブパワーです。



「おりん様が戻られたのだ! ここで倒れることは俺が許さん! 誰ひとり〈ニンゲン〉どもに正体を見せるんじゃない! これは『狐一族』の誇りの問題である! 最後まで化かしきるのが『狐の花嫁』という一大イベント。今こそ心に深く刻めッ、〈ニンゲン〉の前で死んでも転ぶな、倒れるな!」

「おおーーーッ!」



 そこに居るすべての〈マのモノ〉が咆哮!

 そして、さらにステータス急上昇ッ↑↑↑ 



 なんと私の親友が、あんなにビックになって……

 あれが本当の姿(キグルミの中身)なのか。

 ……親友のステータスをコッソリ私だけ確認中……。



 ――しばらくお待ちください――



 ななッ!!!!




 こ……これは……?


 ピーピーピー(秘密)で、

 ピー(秘密)じゃないですか! 

 あ、あんたナニモノッ。



「《猫男(どらのすけ)》、私に付いてまいれ。今が最大の好機。お前の“力技”で一気に戦況をひっくり返す」

「がってん承知。おう相棒、道が開けるぞ。走れるように準備運動しておけ」

「分ッかりました! あそーれ、オイッチニィ、サンシィ、ハイどーぞ!」




「括目せよ〈ニンゲン〉ども、これが俺の必殺技――『おりゃあああ』だ!」

 え?



「『おりゃあああ』だ!」



 ええーっ!

 なんじゃそりゃ。

 気合がそのまま必殺技名になってしまったのですか……なんと豪快。




 オトナの〈ニンゲン〉の身の丈ほどもありそうな、

 規格外の巨剣を叩きつけるように力任せに振り下ろす、この《猫男(どらのすけ)》の

 『おりゃあああ』が、

 気を抜いていた〈ニンゲン〉たちを五、六人まとめてなぎ倒します。

 衝突時のソニックウェーブがすさまじく、広範囲に影響が。




「今だ! 動けるモノは前進、《猫男》がそっちの指揮を取れ。会敵した後、退路を確保。負傷者は私の傍へ、すぐに続くぞ――ポチ殿」

「は、はい!」

「第一陣は危険が大きい。私の傍で今少し、その時を待ってくれ」

「あああ、おりんちゃん危ない!」

「ん」



 おりんちゃんに迫る刃を、役に立たない私が身代わりになって――

 しかしスカッ(MISS!)。


 あれ?

 おりんちゃんが居ませんぞ? 

 あ、あ、あァーーーッ。



 勢い余ってその所為でズッ。

「(こけ、そうだった私)うぐっ! クビがキュウウウと締まって」

「まったく。危ないのはポチ殿です。いきなり動かないでください」



 迫る刃と私を同時に避け、おりんちゃんは華麗に身を踊らせます。

 魅力をさらに引き立てる花嫁衣装が陽の光を浴びて金色の煌めきを増し、

 まるで稲妻のように駆け抜けた閃光は、

 相手のみぞおちに強烈なイチゲキを。

 続いて、“ズッ”する私のクビ根っこをすかさず引き寄せる

 見事な離れ業を、こともなげに彼女はやってのけます。



「……うう。変化が解けるところでした。また危ないところを、ありがとうございます」

「これから何度、あなたは私に助けられるのだろうな。フフフ。しかし、そのたびに礼を言われるのも面倒だ。気分は良いが、それは削減されるべき大いなるムダ。――ならば、こうしようポチ殿。“すべてが終わった時”、まとめて伝えてくれ。もちろん、それは私も同じ。互いに今は、この窮地を切り抜けることに専念しようではないか。ムッ!」



 おりんちゃん……。

 そう言って、すぐにも彼女は襲い掛かる〈ニンゲン〉を撃退します。

 なんだかフラグっぽく聞こえたのは気のせいでしょうか?


 急にイヤな予感が。




「おおーッ。居た居た。ガハハハ! あれが『狐の花嫁』かあ」




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