level.60 “わたし の よめ” → “みんな の よめ”
〈ニンゲン〉どもが入り乱れ、
あちこちで互いに切り結んでおります。
もちろん対峙する〈ニンゲン〉の片方は『狐一族』の若衆が変化した姿です。
「これは……どういうことだ……《猫男》ッ!」
相手が振り下ろす剣を力任せに弾き返し、
毛むくじゃらのキンニク大男が、はっと気付いたように顔を向けます。
「……おりん様? 誓いの儀式は済んだのですか!」
「ああ。それより、この状況はなんだ。なぜ〈ニンゲン〉と争っておる」
「どうもこうも、ありません。いきなり、あらぬインネンを付けられて――」
取って返して切りつけてきた〈ニンゲン〉を規格外の巨剣で受け止め、
またも《猫男》が力任せに相手を向こうへ弾き上げます。
なんつうグレートソード……私には無理ぃ。
「ひとつも話を聞きやしない。傍若無人の〈ニンゲン〉どもめ。我らが露払いをいたします。おりん様はその間に撤退してください」
「余計な心配をするな、自分の身は自分で守る。――ポチ殿、この『契約の証の品』をあなたに預ける」
そう言って、スッと差し出されたのは、あのギトギトに輝く『物体X』。
コレ……なんでしょう?
〈ニンゲン〉のイヤガラセでしょうか?
そして握りしめていた、おりんちゃんの綺麗な色白の手が
動物性の油でギトギトに。ゆ、許せん〈ニンゲン〉ども……。
とりあえずエチケットペーパーを、おりんちゃんに渡しておきますね。
『皮脂汚れ』の状態異常はコレ一枚でオッケー!
「退路は私が確保する。その時が来たら、あなたは決して振り返らず、入り口まで走れ」
ヤバイ、おりんちゃん男前過ぎ……。
これは誰だって惚れるッ!
私のステータス備考欄は『❤』が少なくとも三、四個並んでいるはず!
シチュエーションが真逆なのが、もどかしい。
「――皆のモノ、古き契約は更新された。もはやこの地に用はない。戦略的撤退を開始する!」




