level.57 “よめ” → “わたし の よめ”
しゃんしゃん。
数多の〈マのモノ〉によって大切に運ばれる“大篭”が揺れるたび、
不思議な心地よさを奏でる鈴の音が〈ニンゲン〉の祈りの空間にこだまします。
しゃん。しゃん。しゃん。
足元に広がる真っ白い砂利の海。
正面に色鮮やかに伸びるのは、鮮血の赤を想起させるヴァージンロード。
果てしなく続くそれは【奥の社】までつながっております。
お供のモノは、ここまで。
これよりは安易に踏み入れてはいけない“聖域”にございますゆえに。
しゃん。
“大篭”を覆うスダレが、ゆっくりと上げられていきます。
そこにはもちろん――
「おおーッ(皆の声が揃います)」
しゃん。
「これはーッ(皆の声)」
しゃん。
「ははーーーーッ(やはり同じく。そして、その場にひれ伏す我ら一同)」
しゃん。
「面を上げよ。皆のモノ、大儀であった」
なんと……この世のモノとは思えない、
その非の打ちどころのないパーフェクトな美しさ……。
身に纏う花嫁衣装は『狐一族』の“シンボルカラー”とも言うべき
決して褪せない不滅の金色。
お付きのモノによって、すかさず設置されたオトナの階段におみ足を伸ばし、
そして今、“彼女”は聖地に降り立ちます。
「ギャアアア! 目が、目がァァァ!」
(あまりの眩しさに、深く頭を地面に着ける我ら一同)
ん? 前方に気配……?
間もなく、むせ返るように濃密な強烈フェロモンが漂ってきて、
遥かなる約束の地へと、強制スクロール的に私を連れ去ります。
「ポチ殿」
「へ、へいッ!」
思わず裏返った返事から、いつかのあの“ザコ臭”が。
私の敏感な鼻センサーは逃しません。
「なんでございやしょ? なんなりと、この下賤なアッシにお申し付けくだせえ!」
「一緒に来てくれないか。私には、その……父親がおらんのだ。ぶしつけな頼みとは承知しているが、今は、あなたに来てほしいと思う。どうか“選んだ道”を共に、私と見てほしい」
まさか……この自分が……?
「お、おりん様、なりません、ソレ絶対にダメッ! 『狐の花嫁』をエスコートする最高の栄誉は『狐一族』から選ぶように、“昔ッから”決まっております! それが“しきたり”にございます!!!!」
「くだらん。真に守るべき“お約束”は、そこではない。ポチ殿」
「おりん様」
「下がれッ、もう決めたのだ!」
こんな……こんな“ザコ臭”たっぷりな私が……?
と、となりを歩いてもよろしいのですか……?
「どうなのだ、ポチ殿。“ダンディなオトナの男”ならば、サッサと返事をいたせ」
「へ、へいッ」




