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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
58/82

level.57 “よめ” → “わたし の よめ” 




      しゃんしゃん。



 数多の〈マのモノ〉によって大切に運ばれる“大篭”が揺れるたび、

 不思議な心地よさを奏でる鈴の音が〈ニンゲン〉の祈りの空間にこだまします。



      しゃん。しゃん。しゃん。



 足元に広がる真っ白い砂利の海。

 正面に色鮮やかに伸びるのは、鮮血の赤を想起させるヴァージンロード。

 果てしなく続くそれは【奥の社】までつながっております。

 お供のモノは、ここまで。

 これよりは安易に踏み入れてはいけない“聖域”にございますゆえに。


 

 しゃん。



 “大篭”を覆うスダレが、ゆっくりと上げられていきます。

 そこにはもちろん――



「おおーッ(皆の声が揃います)」


 しゃん。


「これはーッ(皆の声)」


 しゃん。


「ははーーーーッ(やはり同じく。そして、その場にひれ伏す我ら一同)」


 しゃん。






    「(おもて)を上げよ。皆のモノ、大儀であった」






 なんと……この世のモノとは思えない、

 その非の打ちどころのないパーフェクトな美しさ……。

 身に纏う花嫁衣装は『狐一族』の“シンボルカラー”とも言うべき

 決して褪せない不滅の金色。




 お付きのモノによって、すかさず設置されたオトナの階段におみ足を伸ばし、

 そして今、“彼女”は聖地に降り立ちます。




  「ギャアアア! 目が、目がァァァ!」

 (あまりの眩しさに、深く頭を地面に着ける我ら一同)




 ん? 前方に気配……? 

 間もなく、むせ返るように濃密な強烈フェロモンが漂ってきて、

 遥かなる約束の地へと、強制スクロール的に私を連れ去ります。



「ポチ殿」

「へ、へいッ!」



 思わず裏返った返事から、いつかのあの“ザコ(しゅう)”が。

 私の敏感な鼻センサーは逃しません。


「なんでございやしょ? なんなりと、この下賤なアッシにお申し付けくだせえ!」

「一緒に来てくれないか。私には、その……父親がおらんのだ。ぶしつけな頼みとは承知しているが、今は、あなたに来てほしいと思う。どうか“選んだ道”を共に、私と見てほしい」



 まさか……この自分が……?



「お、おりん様、なりません、ソレ絶対にダメッ! 『狐の花嫁』をエスコートする最高の栄誉は『狐一族』から選ぶように、“昔ッから”決まっております! それが“しきたり”にございます!!!!」

「くだらん。真に守るべき“お約束”は、そこではない。ポチ殿」

「おりん様」

「下がれッ、もう決めたのだ!」




 こんな……こんな“ザコ臭”たっぷりな私が……?

 と、となりを歩いてもよろしいのですか……?



「どうなのだ、ポチ殿。“ダンディなオトナの男”ならば、サッサと返事をいたせ」

「へ、へいッ」




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