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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
56/82

level.55 よめ が さらに “ばか” します。



 ある一定の戦果は得られたものの

 我々の想定の範囲を軽く突破する〈ニンゲン〉どもの進んだ文明によって

 行列の先頭(お稚児部隊)が血の一滴も流すことなく平和的に自然崩壊し、

 こちらが勝手に仕掛ける化かし合戦は、やがて“第二陣”と相成ります。



 

 さあさあ次なるは、経験豊富な女型で編成される

 一般生活スキル『キメ細やかな気配り』が標準装備――

 どの部署にも必ず誰かは居て欲しい“お福部隊”の面々。



 

 オトナの階段を登り中の『狐の花嫁』より頂戴した“福”を、

  今こそ集まった〈ニンゲン〉どもにまき散らすのです!!!!



「このお守りをどうぞ」



 そう言って、沿道にズラリ集結する〈ニンゲン〉の女型ばかりを選んで、

 手提げ袋に入れた古めかしいお守りを“お福たちは”次々に配ります。

 お守りですか。

 それはイイですね。



「あのう……このお守りは、どんなご利益があるのでしょうか?」

「あなたが望むこと、すべて叶います。中に入っている柔らかな黄金色の抜け毛は『狐の花嫁』様の尻尾の毛です」



 ええーッ! 

 おりんちゃんの“抜け毛”……あのフサフサ尻尾の……? 

 ゴ、ゴクリ……。

 それは……ほ、欲ちいかも……そッ、そういう意味ではないのですぞッ!

 とってもご利益がありそうですなあ!

 本社で帰りを待つ、ツマとムスメにどうかなと。

 決して私のスケベエな欲望(必死に弁明ッ)ではないッ!!!!




 おりんちゃんの“毛”を配り歩く“お福たち”。

 しかし、そんなに抜けて大丈夫でしょうか? 

 ちょっと多過ぎやしませんか? 

 もしかして、おりんちゃん、

 今日のために毛抜きでイッショケンメイ徹夜でブチブチッ。



 ああなんと健気な。

 あなたの尻尾の状態が心配でなりません。



「お買い上げ、まことにありがとうございます」



 え……“お買い上げ”?

 どどど、どういうことッ!



「こちらは特別な、とっても貴重な『狐の花嫁』様の頭の毛でございます。現在の相場は尻尾の毛の“二倍”となっております。しかしおっと今、“三倍”となりました! “三倍”です“三倍”ッ。 しかしこちらのお客様は“三.五倍”を付けられました! 現在の価格は“三.五”。ですがおおっと! そちらのお客様からダブルアップのコールをたった今頂きまして、そして現在は“七”――“七倍”でござい! さあさあ他にございませんか! なければそちらのお客様に」



 カネ取るのッ? 

 そんな殺生な! 

 すると行列の奥の方で、“お福たち”のヒソヒソ声が……。



「イタタタッ、イターッチ!」

「アタタタッ、イターッチ!」



 ヒソヒソではありません。

 胸が張り裂けてしまいそうな、この“悲痛な叫び”はなんでしょう。



「ああ……私の大切な毛が。元の姿に戻ったら大変なことに」

「我慢するの。これもすべて『狐一族』の未来のためッ。外貨を一度に大量に稼ぐ、またとないチャンスなのだから。とにかく、ありったけの毛を抜くのです! 私の次はお前、その次はお前、そしてその次は」

「イタッチ、イタッチ!」



 そうだったのですか。

 おりんちゃんの毛ではないのですね。

 


 ふう、危ない危ない。ローンを組んで、意地でも購入するところでした。

 あれ……

 そういえば《リトル・ウィッチ》の姿が……?



「ポチサマー! 見て見て。へへーん。どう、このお守り? すっごいご利益があるんだよ」


 ウチのお気楽ねこ娘は、本物とニセモノの区別もつかない様子。


「あげないよー」


 ふっ。バカです。


「これをギュッと握っていると、誰よりお美しく、お強いオネエサマのパワーが、アタイの身体にグングン流れ込んでくる……これでアタイの人生は、バラ色に染まること間違いナシッ」



 短い人生を謳歌するのですな。

 そしてその毛は、ただの抜け毛だ。




           しゃん。しゃん。

 



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