level.55 よめ が さらに “ばか” します。
ある一定の戦果は得られたものの
我々の想定の範囲を軽く突破する〈ニンゲン〉どもの進んだ文明によって
行列の先頭(お稚児部隊)が血の一滴も流すことなく平和的に自然崩壊し、
こちらが勝手に仕掛ける化かし合戦は、やがて“第二陣”と相成ります。
さあさあ次なるは、経験豊富な女型で編成される
一般生活スキル『キメ細やかな気配り』が標準装備――
どの部署にも必ず誰かは居て欲しい“お福部隊”の面々。
オトナの階段を登り中の『狐の花嫁』より頂戴した“福”を、
今こそ集まった〈ニンゲン〉どもにまき散らすのです!!!!
「このお守りをどうぞ」
そう言って、沿道にズラリ集結する〈ニンゲン〉の女型ばかりを選んで、
手提げ袋に入れた古めかしいお守りを“お福たちは”次々に配ります。
お守りですか。
それはイイですね。
「あのう……このお守りは、どんなご利益があるのでしょうか?」
「あなたが望むこと、すべて叶います。中に入っている柔らかな黄金色の抜け毛は『狐の花嫁』様の尻尾の毛です」
ええーッ!
おりんちゃんの“抜け毛”……あのフサフサ尻尾の……?
ゴ、ゴクリ……。
それは……ほ、欲ちいかも……そッ、そういう意味ではないのですぞッ!
とってもご利益がありそうですなあ!
本社で帰りを待つ、ツマとムスメにどうかなと。
決して私のスケベエな欲望(必死に弁明ッ)ではないッ!!!!
おりんちゃんの“毛”を配り歩く“お福たち”。
しかし、そんなに抜けて大丈夫でしょうか?
ちょっと多過ぎやしませんか?
もしかして、おりんちゃん、
今日のために毛抜きでイッショケンメイ徹夜でブチブチッ。
ああなんと健気な。
あなたの尻尾の状態が心配でなりません。
「お買い上げ、まことにありがとうございます」
え……“お買い上げ”?
どどど、どういうことッ!
「こちらは特別な、とっても貴重な『狐の花嫁』様の頭の毛でございます。現在の相場は尻尾の毛の“二倍”となっております。しかしおっと今、“三倍”となりました! “三倍”です“三倍”ッ。 しかしこちらのお客様は“三.五倍”を付けられました! 現在の価格は“三.五”。ですがおおっと! そちらのお客様からダブルアップのコールをたった今頂きまして、そして現在は“七”――“七倍”でござい! さあさあ他にございませんか! なければそちらのお客様に」
カネ取るのッ?
そんな殺生な!
すると行列の奥の方で、“お福たち”のヒソヒソ声が……。
「イタタタッ、イターッチ!」
「アタタタッ、イターッチ!」
ヒソヒソではありません。
胸が張り裂けてしまいそうな、この“悲痛な叫び”はなんでしょう。
「ああ……私の大切な毛が。元の姿に戻ったら大変なことに」
「我慢するの。これもすべて『狐一族』の未来のためッ。外貨を一度に大量に稼ぐ、またとないチャンスなのだから。とにかく、ありったけの毛を抜くのです! 私の次はお前、その次はお前、そしてその次は」
「イタッチ、イタッチ!」
そうだったのですか。
おりんちゃんの毛ではないのですね。
ふう、危ない危ない。ローンを組んで、意地でも購入するところでした。
あれ……
そういえば《リトル・ウィッチ》の姿が……?
「ポチサマー! 見て見て。へへーん。どう、このお守り? すっごいご利益があるんだよ」
ウチのお気楽ねこ娘は、本物とニセモノの区別もつかない様子。
「あげないよー」
ふっ。バカです。
「これをギュッと握っていると、誰よりお美しく、お強いオネエサマのパワーが、アタイの身体にグングン流れ込んでくる……これでアタイの人生は、バラ色に染まること間違いナシッ」
短い人生を謳歌するのですな。
そしてその毛は、ただの抜け毛だ。
しゃん。しゃん。




