level.54 よめ が “ばか”します。
ざわついておりました。
“お稚児たち”が楽しげに、あっちへこっちへ駆け回るので、
集団の最前線は次第に混迷の度合いを深めております。
まだ幼い彼らにとって
見るモノ・触れるモノすべてが珍しく映るのでしょう。
それは私とて――いえ、〈マのモノ〉すべて同じ。
「静まれ、静まれェい! コラ、ガキんちょどもが!」
「ひゃは」
「ええい、まったく! 引率するワシの話を少しは聞け! ダメだこりゃ。手が付けられん」
お髭をフサフサさせた先生風の男性が
遂にフリーダムに遊び始めた“お稚児たち”を前に
必死で声を張り上げますな。
しかし彼ら・彼女らは、どこ吹く風。
これぞ千載一遇のチャンスとばかりに“お稚児たち”は
〈ニンゲン〉が商売する店の前でたむろ。
ジロジロと興味津々に眺めます。
店主が唖然。周囲の客もまた唖然。
村の外から突然現れた大勢の子供たちを見て、
どちらも開いた口が塞がらない様子。
「めでたーし、めでたし。めでたぁーき、この良き日に」
“でっかい大入り袋を担いだ小太りの男”、「めでたしめでたし」と
大声で触れ回りながら袋の中に手を突っ込んで、鷲掴みにした紙屑を
ジャンジャンわんさとバラ撒きます。
なんの“ゴミ”でしょうか……?
そんなに散らかしたら怒られるに決まってるでしょ!
すぐに止めなくてはッ。
「おお。おお」
「“カネ”だ……なんと、カネカネカネッ」
「ええいドケドケドケッ、お前になんか拾わせるものかッ。コレ、ぜーんぶ俺のモノーーーー」
「あれまあ……あ……ああああッ! あんた、おどきなさい! その汚い手をサッサとおどきッ」
あれれ? 率先して片づける〈ニンゲン〉がちらほら……。
それほどにキレイ好きなのですね。
しかしその形相の、恐ろしいこと恐ろしいこと。
目を血走らせて、彼らは“ゴミ”を奪い合いますな。
“お稚児たち”のフリーダムな行動にポカンとしていた〈ニンゲン〉どもは
“大入り袋を担ぐ小太りの男”が行列のあちこちに出現したと知るや否や
わっと競ってそこに大集結!
しかし、その奪い合う様子を観察する〈ニンゲン〉も、ちらほら。
決まってそのモノたちは、歳を食ったモノばかり。
指を差して膝を叩いて、楽しげに笑う“老人ども”にございます。
「はっは。化かされとる化かされとる。ありゃ、みーんな“葉っぱ”じゃ。一生懸命に集めたところで明日になれば、落ち葉の山と気付くじゃろ。それが現実じゃ。わっはっは」
はあ。
集めた葉っぱを、彼らは片っ端からポケットに入れとりますな。
目を血走らせて
ぎょーさん、これでもかとギュウギュウ詰め込みますな。
まさか……持って帰るつもりでしょうか?
記念の品というなら分からなくもないですが……。
しかし、ただの“葉っぱ”ですぞ?
「ドケドケド……え?」
ぽたり。ぽたり。
天から落ちてくる大粒の雫。
「雨……だ。でも空は、あんなに晴れて、雲ひとつない晴天なのに」
やがて激しさを増していき、ざあざあと、今や絶えず打ち付ける天水が
地上の我々めがけて容赦なく襲い掛かります。
「洗濯物……お洗濯物はやく入れなくちゃ」
「ああ、地面に散らばった大量の“カネ”が、雨でグチャグチャに」
「それでもカネはカネだッ。ドケドケドケッ。掴めるだけ掴んでやるッ」
ありゃりゃ。
こんもりと積もった“葉っぱ”のお山が、しとどに濡れてグチャグチャに。
汚れることも厭わず
それでもポケットの中へ残らず片づける〈ニンゲン〉ども。
本当に、お掃除ありがとうございます。
彼らも捨てたモノではありませんね。
実に素晴らしい。
と、見計らったように天水の勢いが急激に弱まります。
しゃん。しゃんしゃんしゃん。




