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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
54/82

level.53 よめ が とおります。



 しゃんしゃん。しゃん。



 【迷いのマの森】から果てしなく伸びる

 見たこともない、聞いたことすらない、かつてないほどの大行列。

 出遅れた私と《リトル・ウィッチ》は当然のように最後方におりますな。

 

 

 ここから見えます、正装した男衆に担がれる“豪奢な大篭”には

 もちろん今回の主役――『狐の花嫁』がお乗りになって、

 心静かにその時を、今か今かと待っております。


 

 と、思います。なぜなら確認できません。



 そのありがたい、初の彼女のお目見えは、

 きっとこのエピソードの“クライマックス”になることでしょう。



 しゃん。しゃんしゃん。



 大事な大事な『狐の花嫁』を守護するのは、もちろん“一族の若衆”ですな。

 煌びやかな晴着を纏い、金飾りの付いた大太刀を腰に提げ、

 姫君を奪いにくる悪漢に、彼らは油断なく瞳を光らせます。



 しゃんしゃん。しゃん。



 身動きの取れない大波をかき分けて、ようやく《リトル・ウィッチ》と

 列の先端部分へ進み出ますッてえと、猛々しい腕利きの“若衆”に続いて、

 やがて姿が目立ってくるのは“お福たち”にございます。



 お世話の一切を任される彼女ら――“お福”は、

 『狐の花嫁』から幸福を授かると同時に、それを届ける使者でもあり、

 この大行列を目にしたモノたちへ分け隔てなく、頂戴した福を

 そのまま授けるのが、彼女らのお役目。




 もう少し、がんばってみました。

 《リトル・ウィッチ》、汗だく。

 ひいひい泣きが入ります。




  しゃん。しゃんしゃん。しゃん。しゃん。しゃんしゃん。




 そこに居るのは〈マのモノ〉であって、しかし見た通りは〈ニンゲン〉。

 整備された街道を

 ぴょんぴょん元気に跳ね回る小柄な影は“お稚児たち”にございます。

 幼い彼ら・彼女らの務めは列の先頭で、めでたいこの晴れの日を

 できるだけたくさんのモノに知らせること。



 おお、実に楽しげ。

 “やらされている感”がまったくありません。

 それを見た《リトル・ウィッチ》、思わず笑顔で、ぴょんぴょん。

 つられて私もソレぴょんぴょん! 

 しかし体が付いていかず。

 歳は取りたくないものです。



「な、なんだ……」


 しゃん。


「お父ちゃん、ありゃなんだ? たくさん人が向こうから来るよ?」

「ああ、なんだべ? お大名さんの行列かあ」



 しゃん。



「おやまあ。こりゃあ『狐の花嫁』さんの行列だべな。死んだ婆ちゃんの話っこは本当だったんか。ありがたや、ありがたや……」

「母ちゃん、なんで手を合わせるんだ?」

「お前もやれッ」

「アダァ! なにすんだ、いきなり殴んな! ビックリしたべ!」

「なあ母ちゃん、『狐の花嫁』さんって、なんだ?」

「ありがたや。ありがたや。こりゃあ、しばらく豊作だっぺな」



 しゃん。しゃん。



「お祭りなんて、年間スケジュールにあったか?」

「急いで確認したが、今日はなにもない。どこからも申請は届いていないぞ」

「ああん! じゃあ無許可でやってるってのか、俺たち行政をなめやがって。ちょっと行って、あっちの責任者を小一時間くらい問い詰めて……なんだか空が曇ってないか? おかしいぞ。さっきまで“雲ひとつない晴天”だったのに……やっぱり急いで確認したが降水確率はゼロ%だ」

「あ。雨だ」

「降ってきちゃった」



 しゃん。しゃん。しゃんしゃん。



「ケッ。やけに騒がしいな。誰だァ、この俺様の大事なお昼寝の時間をジャマしたヤツは! ケケッ」


 しゃん。


「アイツら……“タダの人間”じゃねえな。兄貴に知らせた方がよさそうだ! ケッケッケー」





 その場に居合わせた〈ニンゲン〉の多くは狐につままれたように

 ぞろぞろと【迷いのマの森】から果てしなく伸びる大行列を

 ポカンと眺めて見送ります。



 制止するモノもおらず、声を上げるモノも今のところございません。



 もうご承知かと思いますが、

 これは一族総出で〈ニンゲン〉どもを化かしに掛かる

 “痛快な伝統行事”にございます。




    見破られたら“狐の負け”。

    滞りなく終了したら“狐の勝ち”。




 万が一にも正体を看破された場合

 〈ニンゲン〉の手痛い逆襲が待っていることは間違いナシ。

 冗談では済まされません。




 そして遂に我々は【〈ニンゲン〉の村】へと

 正面から堂々とやってまいりました。





「ご執心の、“あの女狐”かもしれんからな! もしも俺が無傷で“ヤツ”を捕えたら……ケケッ、ケケッケッ、クェーーッ」





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